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AI導入の実態 生産性向上の裏で増える調整業務【Asana調べ】

マスメディアン編集部 2025.08.07

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アサナジャパンは、日本国内のナレッジワーカーを対象としたAI利用についての調査結果を発表した。レポートでは、AI導入が進んでいるにも関わらず、本質的な業務改革が伴っていないことが示唆されている。
アサナジャパンは、日本国内のナレッジワーカー2034名を対象に実施した調査レポート「AIと働き方の現在地:2025年の日本 -なぜAIだけでは、非効率な仕事がなくならないのか-」を発表した。同レポートは、日本のAI導入が重要な転換期を迎えていることを示唆しており、AIのスケール戦略を持つ企業が競争優位性を確立する一方、そうでない企業は停滞する現状を明らかにしている。

日本に迫る「AIパラドックス」──生産性向上のはずが、調整業務はむしろ増加
日本はG7で最も高齢化が進み、出生率も最も低い国の一つであり、労働人口の減少が深刻な課題となっている。こうした背景の中、日本企業がAIの可能性を最大限に活かせるかどうかは、今後の競争力を大きく左右する分岐点となる。しかし、AIの導入が進んでいるにもかかわらず、調整業務(コーディネーションワーク)に費やす時間がむしろ増加しているという「生産性のパラドックス」も明らかになった。

・情報検索に費やす時間は週15時間(前年比+9時間)
・同僚からの質問対応:週12時間(前年比+7時間)
・コラボレーションツールの使用:週10時間(前年比+4時間)
・生産性の低い会議:週9時間(前年比+1時間)

これは、AIが既存の非効率な業務プロセスの上にただ上乗せされている状態であり、本質的な業務改革が伴っていないことを示唆している。

「AIと働き方の現在地:2025年の日本」主な調査結果ハイライト

■AI利用は増加傾向も、組織全体へのスケールは途上
ナレッジワーカーの週次AI利用率は23%から35%へと増加したものの、組織全体にAIをスケールできている企業はわずか17%にとどまった。

■AI導入の阻害要因
従来のシステムの上にAIを上乗せすることで、業務プロセスに摩擦が生じ、AIの効果を阻害している。

■AI導入している組織のタイプ
・AIスケーラー: 複数のワークフローにAIを導入しており、測定、調整、継続的な改善を通じて効果的に運用している組織。
・非スケーラー: AIを試験的に導入し、一部の業務に採用しているものの、全従業員への拡大には踏み切れていない組織。

■AIスケーラーが取り組む4つの職場負担の軽減
・AIスケーラーは、組織全体の連携、情報伝達速度、変化への対応力、業務過多といった4つの職場負担を軽減するためにAIを活用している。

■労働力不足へのAIの貢献
日本の労働力不足は深刻化しており、AIは労働力不足を補うための必要不可欠な手段とされている。しかし、組織の多くは、AIを大規模に導入する準備ができていない。

■2030年に向けたAIスケーラーの準備
・AIスケーラーは、従業員のウェルビーイングのモニタリング(31%)、従業員のパフォーマンス評価(30%)、AIシステムの管理(30%)など、より戦略的なAIの役割を想定。
・AIリテラシーの必要性が高まり、継続的なスキル開発が求められると予想される。

■経営層と従業員の認識ギャップ
・AIによる生産性向上を実感している経営層は56%である一方、一般社員は29%にとどまる。
・経営層の58%がAIの実験的活用に意欲的であるのに対し、一般社員は38%にとどまる。

■AIスケーラーが取り組む「4つの職場負担」への対策
同レポートでは、AIスケーラーがAIを活用して以下の「4つの職場負担」を軽減していることを明らかにした。

(1) 連携(Connectivity)の負担
AIを活用した共通のツールの使用によって、組織横断型のコミュニケーションや業務遂行の促進。AIを活用することで、連携が改善されたと報告する可能性が171%増加。
・回答者の10%が「組織全体でチーム同士が効果的に連携している」と回答。
・38%の従業員が「毎週必要な情報を見つけるのに苦労している」と回答。

(2) ベロシティ(Velocity)の負担
AIを活用し、ルーチン業務の自動化や優先順位付けを最適化。AIを活用することで、ベロシティ(仕事の進行速度)が改善されたと報告する可能性が133%増加。
・日本の労働者のわずか9%が、「自分の組織ではチーム間で情報やアイデアが迅速に伝達されている」と回答。ナレッジワーカーは、一日3時間を必要な情報を探すために浪費。
・44%が、緊急でないタスクや依頼で日常的に仕事を中断されると回答。

(3) レジリエンス(Resilience)の負担
AIを活用し、リスクを早期に検出し、計画を柔軟に調整。AIを活用することで、レジリエンスが改善されたと報告する可能性が157%増加。
・64%が「同僚が重要な情報を隠している」と回答。
・46%が「チームメイトが新しいプロジェクトに巻き込まれないように、自分の仕事量を誇張しているのを見たことがある」と回答。
・56%が「同僚が自分の担当分野を過度に保護している」と報告。

(4) キャパシティ(Capacity)の負担
AIを活用し、ルーチンタスクを自動化し、従業員がより創造的な業務に集中できるよう支援。従業員は、AIによって情報を探す時間が短縮されたと答える可能性が161%増加。
・63%が過去1年間に「燃え尽き症候群」を経験。
・ナレッジワーカーの作業時間のうち58%が、過去6か月間に、対応できないほどの仕事量を経験。
・57%のナレッジワーカーが、「生産性を高めるよりも、忙しく見せることを優先している」と回答。

【調査概要】
調査名: AIと働き方の現在地:2025年の日本 -なぜAIだけでは、非効率な仕事がなくならないのか-
調査対象: 日本国内のナレッジワーカー2034名
調査時期: 2025年4月
調査方法: オンライン調査
調査主体: Asana Work Innovation Lab