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全国1万人を調査 従業員エンゲージメントは昨年から低下も、人材投資とDXによりポジティブな影響が【アジャイルHR・インテージ・東京大学調べ】

マスメディアン編集部 2025.05.02

  • 人的資本
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アジャイルHR、インテージ、東京大学は共同で「A&Iエンゲージメント標準調査」の全国調査を実施し、日本における従業員エンゲージメントの実態を発表した。世界的にも低いと言われる日本の従業員エンゲージメントについて、全体値は昨年より低下が見られたが、「人材投資」や「DX」などエンゲージメント向上に寄与する要因も明らかになった。
アジャイルHRとインテージが共同開発し、東京大学と共同研究を行った「A&Iエンゲージメント標準調査」の全国調査を実施し、日本における従業員エンゲージメントの実態を発表した。本調査は2023年、2024年に続き、今年が第3回となる。

本調査の目的と、結果の詳細は以下の通り。

調査の目的

2025年の全国調査は以下の3つの目的で実施した。

(1)世界的にも低いと言われる日本の従業員エンゲージメントに関して、過去2年と同様にその要因を分析すること
(2)昨年と今年を比較した従業員エンゲージメントの変化について分析すること
(3)人材投資、DX、リモートワーク、リスキリングなどの取り組みと従業員エンゲージメントの関係について分析すること

調査結果の詳細

1.日本の従業員エンゲージメントが低い理由
■会社に対する思い入れや愛着心が低い
従業員エンゲージメントは、以下の2つの概念を含んだ個人の心理状態を指す。
(1)ワークエンゲージメント:仕事を通じて得られるポジティブな心理状態
(2)組織コミットメント:所属する会社や組織に対する思い入れや愛着心

本調査では4件法を採用しているため(4:そうだ、3:ややそうだ、2:ややちがう、1:ちがう)、肯定的回答と否定的回答の中間スコアは2.5となる。今回の全国調査における平均値は以下のようになった。

従業員エンゲージメント…2.54(※)
ワークエンゲージメント…2.64
組織コミットメント…2.45
※:従業員エンゲージメントの値は、ワークエンゲージメントと組織コミットメントの平均値

ワークエンゲージメントは中間スコア2.5を上回った一方で、組織コミットメントは中間スコアを0.05下回っており、組織コミットメントの低さが従業員エンゲージメントを引き下げる要因となっている。

■仕事から活力を得られていない
ワークエンゲージメントは「活力」「熱意」「没頭」の3要素で構成されるが、それぞれのスコアは以下のようになった。

・ワークエンゲージメント…2.64
・活力…2.47
・熱意…2.78
・没頭…2.66

活力とは、仕事中のエネルギーレベルや心理的な回復力が高い状態を表すが、その活力の低さがワークエンゲージメントを引き下げる要因となっている。

■職場運営(マネジメント)の問題が大きい
「A&Iエンゲージメント標準調査」では、従業員エンゲージメントとその構成要素だけでなく、従業員エンゲージメントに影響を及ぼす要因(「仕事の資源」「価値観・ビジョンの共有」)、およびエンゲージメントが影響を与える結果(アウトカム)までを含めた全体の因果関係を測定している。

本年の調査結果の全体像は以下のようになった。
「A&Iエンゲージメント標準調査」の全体傾向を示す図表
図1:全体傾向
従業員エンゲージメントに影響を及ぼす要因のスコアは以下の通りとなった。

・仕事の資源…2.61
・仕事レベル…2.89
・職場レベル…2.58
・会社レベル…2.35

・価値観・ビジョンの共有…2.53

「仕事の資源」はエンゲージメントに対するエネルギー源を意味し、「仕事レベル」は業務内容そのもの、「職場レベル」は職場の雰囲気や人間関係がどの程度、従業員エンゲージメントに対してプラスに働いているかを表す。

「会社レベル」は制度や施策(例:人事評価制度など)に関する評価であるが、実際にはそれらが職場でどのように運用されているかに依存するため、スコアの低さは職場運営、特にマネジャーのマネジメント力の問題に起因していると考えられる。

■フィードバックと学習機会が不足
図2は仕事の資源の16の小項目における全国平均値を、スコアの高い順に並べたものである。
仕事の資源の小項目スコアを示す図表(降順)
図2:仕事の資源の小項目スコア(降順)
スコアが最も高い上位2つの資源は以下の通り。

・役割明確さ:自分の職務や責任が明確であること
・仕事の意義:自分の仕事には意味があると感じられること

これらの項目が高いことから、日本の従業員は自身の役割を明確に理解し、仕事に意義を見出していることがわかる。逆に、スコアが最も低い下位2つの資源は以下の通り。

・公正な人事評価:人事制度の結果に関して十分な説明がされていること
・キャリア形成:意欲向上やキャリア開発に役立つ教育機会が存在すること

この2項目のスコアが低いことから、職場におけるフィードバック機会と学習機会の不足がうかがえる。これらは個人の動機づけや成長にとって不可欠な資源であり、その欠如がエンゲージメント低下の一因となっていると考えられる。

■年代:組織コミットメントが希薄な30歳代~50歳代
図3は、年代別のワークエンゲージメントと組織コミットメントの全国平均値を表す。
年代別エンゲージメントを示す図表
図3:年代別エンゲージメント
30歳代で組織コミットメントは大きく低下し、その後、50歳代まで低空飛行を続けている。30歳代~50歳代の組織コミットメントの低さが従業員エンゲージメントの全国平均値を引き下げる要因となってる。

一方、60歳代以上はワークエンゲージメントがすべての年代の中で最も高く、「元気に働くシニア」の姿が統計的にも裏付けられる結果となった。

■役職・雇用形態:上層部と現場の体感温度に大きな差、派遣社員の低い組織コミットメント
図4は、役職別・雇用形態別のワークエンゲージメントと組織コミットメントの全国平均値を表す。
役職別・雇用形態別エンゲージメントを示す図表
図4:役職別・雇用形態別エンゲージメント
正規雇用では役職が高くなるほどエンゲージメントが高くなる傾向にあり、一般社員と役員の間には大きな差が見られた。これは、上層部と現場との間に認識や体感のギャップが存在している可能性を示している。

また、非正規雇用の中でも特に派遣社員は組織コミットメントが著しく低い結果となり、雇用形態による帰属意識の差が顕著に表れている。

■業種:業種によって差が大きい
図5は、業種別のワークエンゲージメントと組織コミットメントの全国平均値を表す。
業種別エンゲージメントを示す図表
図5:業種別エンゲージメント
業種によって従業員エンゲージメントに大きな差があった。ワークエンゲージメントが最も高い業種は「教育、学習支援業」、最も低いのは「製造業」であった。組織コミットメントが最も高い業種は「学術研究、専門・技術サービス業」、最も低いのは「情報通信業」である。

これらの差異は、業種ごとの「仕事の資源」の豊富さに起因していると考えられる。

■従業員規模:50人の壁が存在か
図6は、従業員規模別のワークエンゲージメントと組織コミットメントの全国平均値を表す。
従業員規模別エンゲージメントを示す図表
図6:従業員規模別エンゲージメント
50人未満の小規模企業は、ワークエンゲージメント・組織コミットメントともに最も高い水準を示した。一方で、従業員が50~99人になるとスコアが急激に下がり、特に組織コミットメントは大きく低下している。

これは、いわゆる「50人の壁」と呼ばれるもので、マネジメント体制の整備が追いつかず、マネジャーの量的・質的な不足が起こることが要因と推察される。

2. 従業員エンゲージメントの経年変化
■従業員エンゲージメントは昨年よりも低下
図7は過去3年間のエンゲージメント(全国平均値)の変化を表す。
過去3年間のエンゲージメントの変化を示す図表
図7:3年間の変化
・2023年の調査は2023年1月31日~2月6日(コロナ5類移行の3ヵ月前)に実施
・2024年の調査は2024年2月5日~2月9日(コロナ5類移行の9か月後)に実施
・2025年の調査は2025年3月10日~3月12日に実施

コロナ禍を終えた昨年はスコアの改善が見られましたが、今年はスコアが低下した。

■会社レベルの資源が最も低下
昨年と比較した仕事の資源の変化は以下の通り。なお、前回比には四捨五入の影響あり。

・仕事の資源…前回2.65 今回2.61(前回比-0.05)
・仕事レベル…前回2.91 今回2.89(前回比-0.02)
・職場レベル…前回2.64 今回2.58(前回比-0.05)
・会社レベル…前回2.41 今回2.35(前回比-0.07)

いずれの要素も低下しているが、特に会社レベルの資源が最も大きく減少しており、全体のエンゲージメントスコアに影響を及ぼしていると考えられる。

■30歳代の組織コミットメントの低下が顕著
図8は、年代別エンゲージメントの前回比較を示している。
年代別エンゲージメントの前回比較を示す図表
図8:年代別前回比較
中でも30歳代と60歳以上のスコアが大きく落ち込んでおり、特に30歳代における組織コミットメントの低下が目立っている。30歳代の従業員エンゲージメントは個社における調査でも低く現れることが少なくない。その原因は1つに特定できないが、上と下の板挟みになることによる負担感や、ライフイベントが重なって不安を抱きやすい年代であることが要因ではないかといった意見も聞かれる。

■上がった業種と下がった業種が混在
図9は、業種別のエンゲージメント前回比較を示している。
業種別エンゲージメントの前回比較を示す図表
図9:業種別前回比較
「学術研究、専門・技術サービス業」などでスコア上昇が見られた一方、「医療、福祉」などでは大きなスコアの低下が見られた。人手不足など、業種特有の要因が影響していると推測されるが、上がった業種と下がった業種を合算するとトータルでは低下したと見られる。

3. 人材投資、DX、リモートワーク、リスキリングとの関係
■人材投資に積極的な会社ほど従業員エンゲージメントが高い
図10は、「私の働いている会社の経営陣は、人材投資(教育や福利厚生の充実、職場環境の整備など)に対して積極的に関与している」への回答別の従業員エンゲージメントを表す。
人材投資と従業員エンゲージメントの関係を示す図表
図10:人材投資と従業員エンゲージメントの関係
(質問:「私の働いている会社の経営陣は、人材投資(教育や福利厚生の充実、職場環境の整備など)に対して積極的に関与している」)
経営陣が人材投資に積極的に関与していると思われている会社ほど、従業員エンゲージメントは高い傾向が見られる。

■DXの効果が感じられている会社ほど従業員エンゲージメントが高い
図11は、「私の働いている会社では、ITやデジタル技術を使った取り組みを進めたことで、便利になったり、働きやすくなるなどの変化がある」への回答別の従業員エンゲージメントを表す。
DXと従業員エンゲージメントの関係を示す図表
図11:DXと従業員エンゲージメントの関係
質問:「私の働いている会社では、ITやデジタル技術を使った取り組みを進めたことで、便利になったり、働きやすくなるなどの変化がある」
DXによる効果が感じられている会社ほど、従業員エンゲージメントは高い傾向が見られる。

■フル出社の従業員エンゲージメントが最も低い
図12は、リモートワークの頻度別の従業員エンゲージメントを表す。
勤務形態別の従業員エンゲージメントを示す図表
図12:勤務形態別の従業員エンゲージメント
リモートワークとオフィス出社が同じくらいの勤務形態の従業員エンゲージメントが最も高く、フル出社が最も低くなっている。

■リモート勤務では職場レベルと会社レベルの資源が不足
図13は、勤務形態別の仕事の資源を表す。
勤務形態別の仕事の資源を示す図表
図13:勤務形態別の仕事の資源
テレワーク(フルリモート)の仕事レベルの資源は最も高い一方で、職場レベルは最も低く、会社レベルも低い傾向にある。リモート勤務では職場レベルと会社レベルの資源が不足する状況が顕著に見られる。

■リスキリングにはエンゲージメント向上が不可欠
図14は、「私は、技術やビジネスモデルの変化に対応するために新しい知識やスキルを学びたいと思う」という質問への回答分布を、ワークエンゲージメントのスコア別に表したものである。
リスキリングへの意欲のワークエンゲージメント別分布を示す図表
図14:リスキリングへの意欲のワークエンゲージメント別分布
質問:「私は、技術やビジネスモデルの変化に対応するために新しい知識やスキルを学びたいと思う」
ワークエンゲージメントが高い層ほど、リスキリングへの意欲も高い傾向が見られる。企業がリスキリングを推進する際には、エンゲージメント向上策が不可欠であると考えられる。