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都内企業の賃金動向に関する意識調査 賃上げする企業の割合は過去最高の59.1%【帝国データバンク調べ】

マスメディアン編集部 2025.04.11

  • 業界動向
帝国データバンクは、2025年度の賃金動向に関する東京都の企業の意識について調査を実施した。59.1%の企業が賃金改善を見込んでおり、ベースアップは3年連続で過去最高を更新した。
帝国データバンクは、2025年度の賃金動向に関する東京都の企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2025年1月調査とともに行った。

2025年の春闘は3月14日に連合が第1回回答集計を発表し、賃上げ率は5.46%(ベースアップ率3.84%)で、91年の最終集計(5.66%)以来の高い水準となったことがわかった。物価高や人手不足の影響で33年ぶりに賃上げ率が5%を超えた昨年度の勢いを踏襲している。1月の衆院本会議での施政方針演説で、石破首相は賃上げを起点に国民の所得と経済全体の生産性向上を図っていくと述べた。大手企業のみならず、中小企業もこうした波に乗れるのか、賃上げの動きが景気回復の起爆剤となりえるのか、注目が集まっている。

調査結果の概要は以下の通り。

調査結果の概要

●2025年度、59.1%の企業が賃金改善(※)を見込む、ベースアップは過去最高を記録
東京都内に本店を置く企業に2025年度の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある」と見込む企業の割合は59.1%(全国61.9%)で、3年連続で過去最高を更新した。一方で、「ない」とする企業は15.3%と調査を開始して以降で最も低く、前回調査(16.4%)から0.9ポイント低下して過去最低を更新した。
※賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)すること。定期昇給は賃金改善に含めない。

賃金改善の状況について企業規模別に見ると、「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模すべてで、2024年度見込みから賃金改善の割合が上昇した。なかでも、「中小企業」の上昇幅(3.1ポイント)が最も大きかった。

従業員数別に見ると、「6~20人」「21~50人」「51~100人」「101~300人」で6割を超えた。「5人以下」(42.5%)「1000人超」(45.8%)では4割台ながら2024年度見込みから上昇し、「301~1000人」(49.0%)のみ1.6ポイント低下した。

大企業ほどではないものの、小規模企業の賃金改善が前向きな傾向を見せている。「5人以下」での「実施する」企業は42.5%で全国(43.2%)と全国を下回るが、前年からの伸び率は3.2ポイントで全国(1.9ポイント)を上回った。

業界別に見ると、「運輸・倉庫」(65.5%)が最も高く、「建設」「製造」(各63.6%)が続いた。「運輸・倉庫」は前年比4.8ポイント増と他業種に比べ増加幅が突出しており、2024年問題に直面したトラック運送業界の労働環境改善や、慢性的な運転手不足などが要因と見られる。

賃金改善の具体的な内容について見ると、「ベースアップ」が52.8%(前年比2.3ポイント増)、「賞与(一時金)」が27.4%(同0.2ポイント減)となった。「ベースアップ」は過去最高となった前年の50.5%をさらに上回り、4年連続で最高を更新した。

●賃金改善の理由、「労働力定着・確保」が71.7%でトップ
2025年度に賃金改善が「ある」企業にその理由を尋ねたところ、人手不足などによる「労働力の定着・確保」が71.7%(複数回答、以下同じ)と最も高かった。次いで、「従業員の生活を支えるため」が60.6%で続いた。2年ぶりの上昇で、依然として6割を超える水準となっている。

さらに、飲食料などの生活必需品の値上げが続く「物価動向」(54.6%)は前回より4.2ポイント増加し、3年連続で過半数の企業が理由として挙がった。「採用力の強化」(38.2%、全国37.5%)、「自社の業績拡大」(33.1%、同25.9%)、「同業他社の賃金動向」(32.0%、同30.3%)は、すべて全国を上回っている。

TDB景気動向調査において、東京都の景況感は全国上位ランクが続いている。自社の業績拡大を従業員へ還元する動きがある一方、他社との差別化に「賃上げ」が欠かせない要素となっているのがわかる。

●賃金を改善しない理由、「自社の業績低迷」が56.1%でトップ
賃金改善が「ない」企業にその理由を尋ねたところ、「自社の業績低迷」が56.1%(複数回答、以下同じ)で最も高かった。また、「物価動向」(16.1%)は2023年度(14.1%)を上回り過去最高を更新するなど、物価上昇で賃金改善を行えない様子もうかがえる。以下、「同業他社の賃金動向」(12.1%)、新規採用増や定年延長に伴う人件費・労務費の増加などの「人的投資の増強」(8.2%)、「内部留保の増強」(11.1%)が続いた。

●総人件費は平均4.66%増加見込み
2025年度の自社の総人件費が2024年度と比較してどの程度変動すると見込むかを尋ねたところ、「増加」を見込んでいる企業は71.1%(前年比1.7ポイント増)と、この質問を取り始めた2016年度以降で初めて7割を超え、最高となった。

一方、「減少」すると見込む企業は5.1%と前年と同じ水準にとどまり、2年連続で過去最低となった。その結果、総人件費は前年度から平均4.66%増加すると見込まれる(大企業が平均4.92%増、中小企業が平均4.59%増)。

まとめ

本調査の結果、2025年度に賃上げを見込む東京都に本店を置く企業は59.1%となり、調査開始以降で最多を更新した。特に、ベースアップにより賃上げを進めようとする企業が2年連続で半数を超えており、従業員にとっては賃上げが日常生活に直結することから、個人消費の拡大に向けた流れが期待される。全国で6割超の企業が賃上げを見込んでおり、その数値は下回るものの前年度からの増加幅は上回っており、東京都の企業では経済情勢を見ながらスピード感を持って対応しているのが見て取れる。

賃上げを行う企業について業種別に見ると、「運輸・倉庫」の比率が最高であった。日本商工会議所などが2024年6月に公表した「中小企業の賃金改定に関する調査」によると、運輸業者の賃上げ額・賃上げ率ともに全業種の中で最も低いとされていた。しかし、物流費の高騰や慢性的な運転手不足などに直面し、業界を挙げて環境改善に取り組もうとしている姿勢がうかがえる。

賃上げを行う理由としては、7割を超える企業が「労働力の定着・確保」を挙げた。ついで、4番目に多かった「採用力の強化」が前年度からの伸び率が高く、採用から入社、定着までに至る人材確保に「賃上げ」が最も重要なファクターとなりつつある。企業が生き残るために、賃金を継続的に上昇させ、安定して従業員に支給できるだけの利益を確保することがさらに重要となってくる。

2025年の春闘は、歴史的な値上げとなった2024年度をさらに上回り、34年ぶりの高い賃上げとなることが予想されている。超大手企業の初任給引き上げが相次いで報道されるなか、この波に中小企業がどこまで乗れるのか。企業の存続にも直結しかねない課題でもあり、さまざまな形での解決を見出す必要がある。

調査概要
調査期間:2025年1月20日~1月31日
調査対象:東京都4270社
有効回答企業数:1994社
回答率:46.7%