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人的資本開示の実態調査 大手企業でも7割が専任担当者なし、人事部が対応【Works Human Intelligence調べ】

マスメディアン編集部 2023.12.15

  • 人的資本
Works Human Intelligenceは、大手企業を対象に人的資本開示への対応とそれに関連する人事戦略に関する調査結果を公表する。約7割が専任担当者はおらず、人事部のみで対応していた。
Works Human Intelligenceは、大手企業を対象に人的資本開示への対応とそれに関連する人事戦略に関して、85法人から回答を得たので結果を公表する。開示した企業の約7割が専任担当者はおらず、人事部のみで対応。また「男女間賃金差異」の施策実施率は半分以下と、他施策に比べて大幅に少ない結果になった。

調査の背景

2023年3月期決算より有価証券報告書を発行する約4000の大手企業を対象に、「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金格差」の3つの人的資本情報の開示が義務付けられた。今後、企業は人的資本価値の向上に関する取り組みや考え方について、社内外のステークホルダーから共通の指標を用いて評価されることになる。企業価値の構成要素が有形資産から無形資産に移行しつつある中、人的資本価値の向上において各企業がどのような取り組みを実施しているのか、人的資本開示への対応とそれに関連する人事戦略の実施状況や課題を明らかにすべく、調査を実施した。

調査結果

1.人的資本情報を「開示した」企業は、非上場企業を含め76.5%という結果に。
設問:人的資本情報の社外開示対応状況について、当てはまるものを選択してください。(n=85、単一選択)
2.人的資本開示対応において、専任担当者が「いなかった」企業は70.8%。開示対応を行なう部署について、「単独で行っている」企業が73.8%を占め、そのうち95.7%が「人事部」で対応していると回答。
設問:人的資本情報開示の対応(情報収集・抽出~開示まで)における専任担当者はいましたか?(n=64、単一選択)
設問:人的資本情報開示の対応(情報収集・抽出~開示まで)はどのような体制で実施していましたか? 単一部門か複数部門のいずれかを選択してください。(n=64、単一選択)
設問:単一部門を選択された方は、どちらの部門を中心に対応しましたか。(n=47、単一選択)
3.有価証券報告書で開示が義務付けられた3項目の具体的な施策実施状況を問う設問で、施策を「実施している」もしくは「策定中」と回答した企業は、「女性管理職比率」が84.4%、「男性育児休業取得率」が87.5%と共に8割を超えていたことに対し、「男女間賃金差異」は40.6%と施策実施状況の差が明らかに。
設問:「女性管理職比率」について、具体的な比率向上への施策を実施していますか。(n=64、単一選択)
設問:「男性育児休業取得率」について、具体的な比率向上への施策を実施していますか。(n=64、単一選択)
設問:「男女間賃金格差」について、具体的な是正への施策を実施していますか。(n=64、単一選択)
3項目に関する具体的な取り組みとして、主な回答は以下の通り。(各設問いずれも、自由回答)
設問:「女性管理職比率」向上のための人事施策を実施している場合、具体的な施策内容を可能な範囲で回答してください。
設問:「男性育児休業取得率」向上のための人事施策を実施している場合、具体的な施策内容を可能な範囲で回答してください。
設問:「男女間賃金格差」縮小のための人事施策を実施している場合、具体的な施策内容を可能な範囲で回答してください。
「男女間賃金差異」の一因である、女性管理職の低比率を解消すべく、まずは「女性管理職比率」の向上に注力するといった回答が複数見受けられ、段階を踏んで自社に合った施策を推進している状況が明らかになった。

4.人的資本開示対応で一番苦労したことについて、「経営方針・戦略との関連性」「KPI設定・具体的な開示範囲の設定」「グループ全体の統制」といった回答が寄せられた。
設問:貴社の人的資本情報開示対応において、一番苦労したことは何ですか。(自由回答)

総括

有価証券報告書で、多様性を示す「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金差異」3項目の開示義務化や、「人材育成方針」「社内環境整備の方針」といった人的資本に関する戦略の記載が求められるようになってから、多くの企業は初めての人的資本開示対応を終えた。

Works Human Intelligenceが日経225採用企業183社の2023年3月期決算の有価証券報告書の内容について分析(※)したところ、記載の自由度が高い「人材育成方針」において、独自指標を開示していた企業は約31%だった。開示する内容について、企業側に大きな裁量が与えられる形で人的資本開示の義務化がスタートしたため、対応に苦労した企業も多かったと同社は推測している。

同調査においても、人的資本開示対応で一番苦労したことについて問う設問で、「経営理念や経営戦略、中期経営計画と連動したストーリー性のあるKPIの設定」「開示前は求める人材に具体性がなく、その育成方法も含め、詳細に定義されることがなかった」といった回答が寄せられていた。また、人的資本開示対応において、回答企業の約7割が「単独の部署」で対応、うち9割が「人事部」での対応と、主管部署の偏りも明らかになった。

人的資本開示の重要性が増していく中、毎年の開示に円滑に対応できる体制作りや、開示内容のレベルアップが必要だと同社は示している。

※日経225採用企業中3月末決算の183社を、2023年7月~8月の期間でWorks Human Intelligenceが調査。有価証券報告書「サステナビリティに関する考え方及び取組」のみを参照し、人材育成施策にカテゴライズされていても下記については除外した。
・中途採用比率の上昇など、採用に関するもの
・ダイバーシティに関するもの(女性管理職比率、外国人の幹部登用など)
・定着率
・公募の利用数、率
・エンゲージメントサーベイの数値

調査概要
調査名:2023年度人的資本開示および人事施策実施状況に関するアンケート調査
調査期間:2023年6月8日~8月31日
調査機関:Works Human Intelligence
調査対象:大手企業85法人、人事戦略策定者
調査方法:Webアンケート形式、対面ヒアリング