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人的資本の開示事項「従業員エンゲージメント」が前年比19.2ポイント増加【HRGL調べ】

マスメディアン編集部 2023.09.29

  • 人的資本
HRガバナンス・リーダーズは、9月26日、「2023年指名・報酬ガバナンスサーベイ」を実施し、その結果概要を公表した。2023年6月~8月の間に実施され、大企業やプライム市場上場企業を中心に、報酬領域では337社、指名領域では241社が参加した同サーベイ。この調査から、人的資本経営に求められる5つの要素の開示は進んでおり、最も増加幅が大きい事項「従業員エンゲージメント」は2022年から2023年にかけて、19.2ポイント増加していることがわかった。
HRガバナンス・リーダーズは、9月26日、「2023年指名・報酬ガバナンスサーベイ」を実施し、その結果概要を公表した。

同サーベイは、企業のコーポレート・ガバナンスの要諦となる指名・報酬双方の領域を本格的にカバーしたサーベイだ。経営者を含む役員の報酬調査に加え、指名・報酬委員会の運営からスキルマトリックス、後継者計画、社外取締役の選任など、日本企業のプラクティスについての最新情報を提供し、企業のガバナンス向上をサポートする。また、人的資本経営に関する設問も随時充実させている。

今回は、2023年6月~8月の間、大企業やプライム市場上場企業を中心に報酬領域では337社、指名領域では241社が参加した。調査結果概要は以下の通り。
1.報酬水準
■社長報酬額

2021~2023年の3年間連続で同サーベイに参加している企業群において、2023年の社長の総報酬額(中央値)は8000万円だった。時価総額別(「1000億円未満」、「1000億円以上5000億円未満」、「5000億円以上1兆円未満」、「1兆円以上」の4つの企業群)の推移を見ると、おおむね総報酬額は増加傾向を示していた(図表1)。「1兆円以上」の企業群では2億1328万円となっており、昨年比6.2%と最も増加していた。
【図表1】社長総報酬額(時価総額別)(n=225)
総報酬額が増加した要因の1つに変動報酬額の上昇があげられる。総報酬額における変動報酬額(賞与等の年次インセンティブと株式報酬等の中長期インセンティブの和)の比率を見ると、「1兆円以上」の企業群においては2021~2023年までの3年間で14.4ポイントと最も大きく増加しており、64.4%だった。基本報酬が約30%、年次インセンティブ・中長期インセンティブがそれぞれ30~40%程度を占める欧州企業の報酬プラクティスの水準に近づいている。それ以外の時価総額の企業群においても同比率は上昇傾向にあった(図表2)。
【図表2】社長 変動報酬比率(時価総額別)(n=225)
■社外取締役 報酬額
2021~2023年の3年間連続して同サーベイに参加している企業群において、2023年の社外取締役の総報酬(中央値)は1020万円だった。「1兆円以上」の企業群では1800万円と、3年間で12.8%増加した(図表3)。また、社外取締役に対して株式報酬制度を導入する企業は17社であり、2021年の9社、2022年の14社から若干数だが増加している。なお、経営経験を有する社外取締役が在任している企業の割合は85.7%と2021年の70.8%、2022年の81.0%から増加傾向にあった。
【図表3】社外取締役 総報酬額(時価総額別)(n=206)
2.インセンティブ報酬制度の評価指標(KPI)
■KPIの採用状況

2022~203年の2年間連続で同サーベイに参加している298社を対象に、社長の年次インセンティブもしくは中長期インセンティブ制度の報酬額の決定にあたってのKPIを集計した結果、営業利益や当期純利益、売上高といった財務指標が上位を占めていた(図表4)。
【図表4】インセンティブ報酬制度における評価指標(KPI)採用状況(n=298)
また、年次インセンティブ、中長期インセンティブの双方でE(環境)指標「温室効果ガス関連」、S(社会)指標「従業員満足度関連」といった、比較的定量評価しやすい非財務指標の採用が増加していた。中長期インセンティブにおいては、欧米企業において比較的多く採用されている、株主価値を表す指標であるTSR(株主総利回り)の採用も前年比で増加している。

3.報酬委員会の運営状況
2022~2023年の2年間連続して同サーベイに参加している267社(報酬委員会設置済)を対象に報酬委員会の審議事項を確認すると、最も多くあげられたのは「報酬水準・構成(MIX)」(87.3%)だった(図表5)。
【図表5】報酬委員会の審議事項(複数選択、n=267)
前年比で最も増加していたのは「クローバック・マルス条項の設定」(前年比6.4ポイント増)であり、次いで「会議体の運営方法」(同5.2ポイント増)だった。また、3年間連続して参加している229社(報酬委員会設置済)を対象に報酬委員会の開催回数を見ると、2023年の平均値は4.7回であり、2021年の4.1回、2022年の4.4回から増加傾向にあった。
1.指名委員会
■指名委員会の活動状況

2021~2023年の3年連続で同サーベイに参加している145社(指名委員会設置済)について、指名委員会の開催回数の平均値は2023年では5.1回であり、2021年の4.8回、2022年の4.0回から増加傾向にあった。また、2022~2023年の2年間連続して参加している189社(指名委員会設置済)を対象に指名委員会の審議事項を経年比較したところ、昨年に続き「人材要件定義・スキルマトリックス」(74.1%)をあげる企業の割合が最多だった(図表6)。昨年から比較すると、最も増加幅が大きかったのは「次期社長・CEOの決定」(前年比10.0ポイント増)であり、次いで「指名ポリシーの策定・開示」(同8.4ポイント増)、「現社長・CEOの退任後の処遇」(同8.0ポイント増)だった。
【図表6】指名委員会の審議事項(複数選択、n=189)
■後継者計画の実施状況
指名委員会の審議事項として「後継者計画」をあげた企業128社を対象に、その具体的な実施事項を「社長・CEO」、「社内取締役」の対象別に集計した(図表7)。社長・CEOを対象とした実施事項では、最も多かったのは「候補者・人材プール対象者の選抜」で67.2%と7割弱を占めていた。一方で、人材プールを設定していない企業も11.7%と1割程度見られた。また、社内取締役を対象とした実施事項では、後継者計画について議論していない企業の割合は24.2%だった。また、3年間連続して参加している178社について後継者計画のモニタリング状況を見ると、52.2%の企業が「取締役会または指名委員会で実施している」と回答し、後継者計画の策定の浸透に伴い、2021年の38.4%、2022年の46.1%から増加傾向にあった。
【図表7】後継者計画の実施事項(複数選択、n=128)
2.人的資本経営の取り組みと開示
■経営戦略と人財戦略の連動

人的資本経営の取り組み状況を、人材版伊藤レポートにおいて提唱されている「3P・5Fモデル」の3つの視点別に見たところ、昨年からいずれの視点でも進捗していた。その中の1視点である「経営戦略を人材戦略の連動」について、人材戦略を経営戦略に反映済および反映に向けて取り組み中と回答した企業を対象に、その具体的な取り組みについて集計したところ、6割以上(64.7%)の企業が「経営戦略上の重要課題として、マテリアリティや主要リスクに人的資本関連テーマを設定」していた(図表8)。一方で、取締役会等の会議体で人財戦略等の議論、モニタリングしている企業の割合は、それぞれ49.0%、37.7%だった。
【図表8】「経営戦略と人材戦略の連動」に関する具体的な取り組み状況(複数選択、n=204)
■人的資本の開示
2022~2023年の2年間連続で同サーベイに参加している企業を対象に、人的資本の開示状況を、先ほどと同様に「3P・5Fモデル」の人材戦略で求められる5つの要素(5F)に合わせて確認すると、すべての項目で昨年から開示が進んでいた(図表9)。
【図表9】人材戦略で求められる5つの要素(5F)のうち、実施済かつ開示済の企業の割合(n=208)
最も開示が進んでいたのは「従業員エンゲージメント」であり、19.2ポイント増加。一方で、「動的な人材ポートフォリオ」「リスキル・学び直し」といった項目の開示はそれぞれ13.0%、16.3%だった。

■人的資本の開示に向けた障害
人的資本可視化指針で開示事項として示された19項目の開示状況について「検討中」または「開示予定なし」と回答した企業数は図表10の通り。
【図表10】人的資本可視化指針の19項目の開示事項と、各開示事項の開示状況において「検討中」または「開示予定なし」と回答した企業数(n=240)
これら企業を対象に開示していない理由を尋ねたところ、最も多かった理由は「開示できる取り組みが現時点でない」であり、19項目平均で42.5%を占めていた(図表11)。「技術的にデータ収集困難」な指標には「スキル・経験」(31.5%)、「リーダーシップ」(31.3%)が上位となった。また、「外部に公表したくない」指標は「採用」(13.4%)が最も多く、次いで「サクセッション」(9.0%)だった。
【図表11】11人的資本可視化指針の19項目別に見た開示していない理由
(各理由の19項目平均値と上位3指標を掲載)
(複数選択、各事項の開示状況において「検討中」または「開示予定なし」と回答した企業数のみ)