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企業9割が2022年に賃上げを実施、3割が賃上げの効果として「既存の社員のやる気向上」を認識【JILPT調べ】

マスメディアン編集部 2023.09.15

  • 政府
労働政策研究・研修機構は「企業の賃金決定に関わる調査」を実施し、全国の企業2530社からの回答を取りまとめ、9月15日に公表した。この調査から、9割の企業が2022年に賃上げを実施しており、3割の企業が賃上げの効果として「既存の社員のやる気向上」を認識していることがわかった。
労働政策研究・研修機構(JILPT)は、1月31日から2月20日の間、「企業の賃金決定に関わる調査」を実施し、全国の企業2530社からの回答を取りまとめた結果を、9月15日に公表した。

同調査は、政策統括官付政策統括室の要請により、「企業収益の見通し・先行き」と「賃金改定に当たって考慮する要素」と賃上げへの企業の態度との関係性を把握するために実施された。全国の従業員数30名以上の企業1万社を対象に、郵送で調査票を配布し、有効回収数は2530件となった。この回答をもとに、調査結果を取りまとめている。調査結果のポイントは以下の通り。

企業を取り巻く市場環境と企業の対応状況

2022年12月末時点の企業収益(3年前比)は、「減少・計」が5割前後で、「増加・計」は3割前後。一方、今後の企業収益の見通しでは、「増加・計」は6割台で、「減少・計」(3割台)を上回る
売上総額、営業利益、経常利益について、2022年12月末調査時点と3年前(コロナ感染拡大前の2019年12月以前に相当)を比較した変化では、売上総額、営業利益、経常利益の各項目の「減少・計」(「やや減少・低下」「大幅に減少・低下」の合計)の割合は5割前後となった。一方で、「増加・計」(「大幅に増加・上昇」「やや増加・上昇」の合計)の割合は3割前後であり、「減少・計」が「増加・計」を上回っている。
3年前と比べた企業収益(売上総額、営業利益、経常利益)の変化(SA、単位=%)
今後の企業収益の見通し(1年後の見通し)では、(1)売上総額、(2)営業利益、(3)経常利益いずれも、「増加・計」(「10%以上の増」「5~10%未満の増」「1~5%未満の増」「0~1%未満の増」の合計)の割合は6割台となった。その一方で、「減少・計」(「10%以上の減」「5~10%未満の減」「1~5%未満の減」「0~1%未満の減」の合計)の割合は3割台であり、「増加・計」が「減少・計」を上回っている。
今後の企業収益の見通し【(1)売上総額、(2)営業利益、(3)経常利益】
(a.1年後の見通し、b.5年後の見通し)(SA、単位=%)
過去1年間の価格転嫁の状況では、「まったく価格転嫁できていない」が3割、「2割未満」も15%
「過去1年間(2022年)における自社の主な商品・サービスにおいて、仕入れ等コスト(原材料費、エネルギーコストのすべてを含む)の上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているか」については、「仕入れコストが上昇したので将来的には価格転嫁したいが、まったく価格転嫁できていない」が30.6%と最も高い。次いで、「5割以上8割未満」が17.2%、「2割未満」が15.1%などとなっている。
過去1年間の自社の主な商品・サービスの仕入れ等コスト上昇分の価格転嫁状況(SA、単位=%)
価格転嫁しづらい理由は、「価格を引き上げると販売量が減少する可能性がある」が33.9%と最も高かった。次いで、「販売先・消費者との今後の関係を重視するため、販売先に価格転嫁を申し出ることができない」が26.3%、「販売先と契約を結んでおり、契約期間中は価格転嫁できない」が17.3%、「販売先に価格転嫁を申し出たが、受け入れられなかった」が13.3%などとなっている。
価格転嫁しづらい理由(MA、単位=%)

賃上げに関わる状況

2022年で9割の企業が賃上げを実施、「ベースアップ」は36.2%が実施
過去2年間の賃上げ状況としては、2021年では、「定期昇給」が77.0%と最も高く、次いで、「非正規雇用者・パート労働者の昇給」が40.9%、「賞与(一時金)の増額」が29.3%、「ベースアップ」が27.2%、「新卒者の初任給の増額」が14.7%などとなっている。「以上のいずれの賃上げも実施していない」は8.7%となった。

2022年においても、「定期昇給」が76.0%、「非正規雇用者・パート労働者の昇給」が49.0%、「賞与(一時金)の増額」が39.2%、「ベースアップ」が36.2%、「諸手当の改定」が23.3%、「新卒者の初任給の増額」が20.6%などとなっている。

2021年、2022年時点で比較すると、賃上げ実施企業(「定期昇給」や「ベースアップ」などの賃上げの選択肢を回答した企業(「以上のいずれの賃上げも実施していない」以外))の割合は、2021年で91.3%、2022年で92.9%となり、いずれも9割の企業が賃上げを実施している。賃上げの内容については、2021年に比べて2022年の方が、特に「賞与(一時金)の増額」(9.9ポイント)、「ベースアップ」(9.0ポイント)、「非正規雇用者・パート労働者の昇給」(8.1ポイント)、「諸手当の改定」(7.2ポイント)などで高くなっている。
賃上げの実施状況(2021年、2022年)(MA、単位=%)
賃上げ実施理由は、「社員のモチベーションの向上、待遇改善」が7割弱でトップ。「最低賃金の引上げに対応するため」「社員の定着・人員不足の解消のため」も4割
「賃上げを実施した理由」は、「社員のモチベーションの向上、待遇改善」が67.9%と最も高い。次いで、「最低賃金の引上げに対応するため」が46.7%、「社員の定着・人員不足の解消のため」が41.5%、「業績(収益)の向上」が19.9%、「新卒採用の人材確保のため募集時賃金を上げたいから」が16.9%、「物価上昇への対応」が16.7%、「中途採用の人材確保のため募集時賃金を上げたいから」が16.3%などとなっている。
賃上げ実施理由(2022年)(MA、単位=%)
賃上げの効果、「既存の社員のやる気向上」で3割、「社員の離職率の低下」も2割弱が認識
2022年に賃上げを実施した企業に、その効果を聞いたところ(各項目の該当割合(「そう思う」「ややそう思う」の合計)を集計)、「既存の社員のやる気が高まった」が32.3%と3割の企業があげており、「社員の離職率が低下した」が17.6%、「企業イメージが向上した」が12.0%、「中途採用の募集の応募が増えた」が10.0%、「新卒採用の募集の応募が増えた」が6.1%となっている。
賃上げを実施したことによる効果(2022年)(SA、単位=%)
賃上げを実施しない理由は、「業績(収益)の低迷」「雇用維持を優先」「物価高騰によるコスト上昇」が上位
賃上げを実施しない理由は、「業績(収益)の低迷」が70.0%と最も高い。次いで、「雇用維持を優先」「物価高騰によるコスト上昇(急激な円安傾向、エネルギー価格の上昇等含む)」がいずれも40.6%、「固定費(所定内給与)の増加を避けたい」が28.2%、「将来の不透明感」が26.5%、「価格転嫁できない」が22.4%などとなっている。
賃上げ実施しない理由(2022年)(MA、単位=%)
企業が自発的に賃上げできる環境整備のために必要な政策は、「景気対策を通じた企業業績向上」「賃上げした企業への税負担軽減」「IT化、設備投資による業務効率化への支援」が上位
企業が自発的に賃上げできる環境整備のために必要だと考えている政策は、「景気対策を通じた企業業績向上」(51.3%)と「賃上げした企業への税負担軽減」(49.2%)が5割前後と上位となっている。以下、「IT化、設備投資による業務効率化への支援」(39.8%)が4割弱、「社会保障制度の充実」(31.0%)、「取引価格の適正化・円滑な価格転嫁の支援」(30.9%)、「社員の能力開発への支援」(30.7%)が3割程度と続き、「為替レートの適正化」(13.4%)も1割程度あった。
賃上げできる環境整備に必要な政策(MA、単位=%)