多様な働き方・キャリアが可能な制度へ、厚労省・新時代の働き方研究会が報告書を公開

厚生労働省が、8月31日に実施した第13回「新しい時代の働き方に関する研究会」の資料として、報告書（骨子案）を公開した。

同研究会は、企業を取り巻く環境、働く人の意識・希望の個別・多様化、組織と人の関係性などの変化を受けて、実施されている。こうした変化を踏まえ、企業は雇用管理や労務管理の課題に対し、さまざまな対応に追われている。そこで、複数企業から取り組みを聴取し、事例を報告書（骨子案）にも記載した。

●企業による取り組み事例
・企業における労務管理の多様化はすでに大きく進展。一方で多様化の程度は会社によって大きく異なるほか、先進的な企業でも方向性は企業ごとに異なる
【情報通信業】全員リモートワーク・バーチャルオフィスという会社もあれば、オフィスワークのメリットを再評価しているところ、人材育成と人材定着のため、長期雇用を再評価し、社内労働市場で流動化を図るところなどさまざま。物理的な事業場の概念になじまない働き方や、過半数労組・過半数代表者に捉われない形でのコミュニケーションも見受けられた
【情報通信業】ナレッジワーク中心となり、労働時間と成果がリンクしない中で、労働時間管理をしつつ人材育成・生産性向上を行わなければならず、労働時間制度をより使いやすくしてほしいと希望

・集団的・個別的双方の労使コミュニケーションを行いながら、労務管理・人材育成を実施
【保険業】ポストごとの職務・必要能力等を明確化し、社員とのコミュニケーションを行いつつキャリア形成を支援
【広告業】ビジネスミッション・必要な人材像を共有し、人事部局と社員とのコミュニケーションで人材配置を実施

・どのような業種・働き方でも健康管理・職場環境改善は重視。社員とのコミュニケーションを踏まえて改善している
【製造業】法定の健康管理に加え、職場環境改善のための投資を積極的に実施していた
【情報通信業】全員リモートワークの企業においても、勤怠管理・健康診断等の健康管理は重視。健康マネジメントが必要であれば実施
【広告業】職場改善の課題発見のため、定性的な職場環境を、社員アンケートをもとに統計化・データ化し、環境改善を行う企業もあった

なお、同報告書では、新しい時代に即した労働基準法制の方向性が示された。働く人の選択・希望の反映が可能な制度への現行制度のアップデートについても言及している。

●個が希望する働き方・キャリア形成に対応した労働基準法制に向けて
（1）働き方・キャリア形成に関する働く人の希望が個別・多様化し、企業が多様性を重視する人材マネジメントを取る傾向を強めている
・画一的な制度の適用ではなく、より柔軟な働き方を求める働く人も出る
・賃金・待遇等の格差拡大も想定され、労働者間の公平性・納得性の確保も課題
（2）企業が多様な働く人の声を吸い上げ、その希望を労働条件の決定に反映させる集団的な労使コミュニケーションの在り方を検討
・そうした労使の選択を尊重し、その希望を反映できるような労働基準法制の在り方を検討
（3）働き方の個別・多様化や、非正規雇用労働者の増加、労働組合組織率の低下等を踏まえると、労使コミュニケーションの在り方も多様・複線的であり得る