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2021年版「環境先進企業」リスト発表、時価総額は12兆ドル

マスメディアン編集部 2021.12.14

  • SDGs
CDPは、気候変動対策、水資源保護、森林保全の分野での環境情報開示と環境行動を評価する「環境先進企業」リストを発表した。2021年は、272社が選出。うち14社が、気候変動対策、水資源保護、森林保全の3分野すべてでAスコアを獲得した。
環境分野の情報開示に取り組む国際NGOのCDPは、2021年版の「環境先進企業」リスト(Aリスト)を発表した。気候変動対策、水資源保護、森林保全の分野での環境情報開示と環境行動を評価するもので、今回は評価対象となった1万2000社のうち、272社が選ばれた。選出された企業は、ディアジオ、インフォシス、ペプシコ、テトラパック、アストラゼネカ、コルゲート・パルモリーブ、レノボ・グループなど。

■ポイント
・評価対象となった1万2000社近くの企業の中から272社をAリストに選出した。
・水資源保護と森林保全の分野で、これまで以上に企業の先進的な取り組みが見られた。
・14社が、気候変動対策、水資源保護、森林保全の3分野すべてでAスコアを獲得した。
・評価基準の引き上げに伴い、気候変動のAリスト企業数は減少した。
・2021年、過去最高の1万3000社強がCDPを通じて環境情報を開示した。しかしながら、時価総額で21兆ドル相当の1万7000社近くが依然として開示を怠っている。

CDPによると、今年のCOP26において、自然資本は主要議題となった。また、グラスゴー合意とIPCC第6次評価報告書では、環境課題の相互連関が指摘され、一体で解決されなければならないことが明確に示された。これを受けて、先進的な企業は、開示においてより包括的なアプローチを採用し始めているという。2021年、ロレアル、花王、ユニリーバ、HP、不二製油グループ本社、レンチングなどの先進的な14社が、気候変動対策、水資源保護、森林保全の3分野すべてでその取り組みが評価され、Aスコアを獲得した。このトリプルAを達成した企業は、昨年の10社から増加している。また、水セキュリティのAリスト企業数は106社から118社に増加し、森林保全のAリスト企業数は16社から24社に増加した。

2021年、気候変動のAリスト企業数は、昨年の280社から200社に減少した。これは、気候変動対策における先進性の定義が引き上がったことにともない、評価基準を引き上げたことに因るもの。

Aスコアを獲得するためには、他の基準を満たした上で、気候課題に対する堅牢なガバナンスと監視、厳格なリスク管理プロセス、第三者検証を経たスコープ1、2の排出量報告が求められ、また、バリューチェーンを通じた排出削減も求められる。また、ほとんどのAリスト企業が、現在、SBTイニシアティブの認証を受けたしっかりとした排出目標を持ち、スコープ3の排出をカバーする目標のエビデンスを提出している。

本年、Aリスト企業以外で、多くの開示の質の向上とそれに伴うランキングの上昇が見られた。2021年、前年にCスコア以下の評価だった509社がBスコアを獲得している。これは、当該企業がただ単に開示を行うだけの状態から環境影響を認識しそれを管理する状態へ移行したことを意味している。

先駆的な企業のリーダーシップやその他企業の改善の努力が見られる一方で、これら企業は全体のほんの一部に過ぎない。Aリスト入りを果たしたのは、評価対象企業のわずか2%である。58%はCスコアからDマイナススコアの間に位置し、環境影響を認識し始めたばかりである。また、時価総額の総計にして21兆ドルとなる1万6870社が、機関投資家や購買企業の開示要請に応じない、または十分な情報を開示していないことに懸念を示している。

現在、これらの非開示企業は変化の波に抗っている。COP26において、あるいは2021年を通じて、環境情報の開示要請は高まりを見せ、また、毎年、開示企業数は過去最高を更新し続けている。2021年、グローバル時価総額の64%に相当する過去最高の約1万3000社の企業がCDPを通じて開示を行った。また、企業の環境情報開示に対する市場の需要も高まっている。2021年、運用資産総額が110兆ドルとなる590社強の機関投資家と調達総額が5.5兆ドルとなる200社の大手購買企業が、CDPを通じた環境情報の開示を企業に要請した。

環境情報を毎年継続的に開示する企業は、評判を維持あるいは改善し、規制の先を行き、競争優位を獲得し、リスクと機会を見定め、業界の動向に乗り遅れることなく、資本コストを削減できている。また、環境分野で高評価を獲得する企業は、株価のパフォーマンスが良いことを示す例証もある。CDPの気候変動Aリスト企業に基づいて構成されたSTOXX Global Climate Change Leaders Indexは、過去8年間、参照インデックスよりも5.8%高い平均年間収益率を示している。

デクスター・ガルビン CDP グローバルディレクターは、以下のようにコメントしている。

「COP26では、気候と環境の危機に対処し温暖化を1.5℃に抑制するために実体経済のあり方を変える上で企業が果たすべき役割が、主要な議題となりました。毎年、環境情報を開示し環境課題の相互連関を理解する企業が増えていることは喜ばしいことです。いま求められているのは、より果敢な気候変動対策であり、また、他の自然資本の領域に対応を拡げることです。初歩的な環境情報の開示すら行っていない企業が17,000社もあることは、あまりに大きな問題です。これらの企業は、地球を危険にさらすだけでなく、自らも危険にさらしています。彼らがこれまで通り事業を継続したならば、世論の反感を買い、規制の対象となり、投資不適格と判断されることでしょう。また、検査・監督は厳しくなっています。実態をともなわない目標やグリーンウォッシュは許されません。」

■Aリスト企業の環境先進事例
・ユニリーバは、2020年12月、ネットゼロ目標を達成するための気候移行計画を発表した。同計画は、2021年5月の年次株主総会において採決にかけられ、99.6%の圧倒的多数の承認を得た。

・不動産開発投資会社のランドセックは、気候変動の最悪の影響の回避に資する事業活動と
するため、1トン当たり107.50ドル(80ポンド)のインターナルカーボンプライシングを
導入した。

・ブラジルの穀物企業アマッジは、すべての調達決定に地理空間解析ツールを導入しており、サプライヤーと環境の双方を確認している。この導入により、アマッジは、バリューチェーンを通じた森林減少リスクを管理することが可能となっている。

・花王は、2021年、インドネシアの約800の小規模パーム農園に対してRSPO認証を取得するための支援事業を開始した。この事業は、2030年までに対象を5,000農園に拡大することを目指している。

・富士通は、アジアのクライアントとバリューチェーンを通じて協働し、深刻化する同地域の水問題の解決に努めている。例えば、ジャカルタ特別州防災局は、富士通の防災管理システムを活用し、自然災害への適時適格な対応をとっている。

・世界最大のガラス繊維複合材メーカーであるオーウェンス コーニングは、CEOとCSOに対して、同社の2020年と2030年の目標との関連で水使用の削減を促すため、インセンティブを付与している。パフォーマンス指標は、取水量削減、消費量削減、直接操業の効率性改善に関連するもの。