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2025年度に賃上げする企業は61.9%、ベースアップ予定は56.1%と過去最高更新【帝国データバンク調べ】

マスメディアン編集部 2025.02.28

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帝国データバンクは2月20日、2025年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。2025年度に賃上げを見込む企業は61.9%、特にベースアップにより賃上げを進めようとする企業が2年連続で半数を超えた。恒常的な所得の底上げによる個人消費の拡大に向けた流れに進みつつある。
帝国データバンクは2月20日、2025年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2025年1月調査とともに行った。

いよいよ2025年度の春闘が本格化する。物価高や人手不足の影響を受けて2024年度は33年ぶりに賃上げ率が5%を超え、その勢いが続くのか注目される。政府は、一定割合の賃上げを行う企業に対して設備投資のための補助金を交付するなど、企業の賃上げを後押しする施策を講じている。さらに、石破首相は昨年11月の政労使会議において、2024年に続き春闘での大幅な賃上げ実現に向けた協力を要請するなど、賃金改善(※1)の動向に関心が高まる。

61.9%の企業が賃金改善を見込む、ベースアップは過去最高を記録

2025年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある」と見込む企業は61.9%となった。4年連続で前の年を上回り、調査を開始して以降で初めて6割を超えた。一方で、「ない」とする企業は13.3%と調査を開始して以降で最も低く、前回調査(13.9%)から0.6ポイント低下して過去最低を更新した。

賃金改善の状況について企業規模別に見ると、「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模すべてにおいて、前回調査の2024年度見込みから賃金改善の割合が上昇した。また、従業員数別に見ると、「6~20人」「21~50人」「51~100人」「101~300人」で6割を超えた。「5人以下」(43.2%)では4割台ながら2024年度見込みから増加したが、「1000人超」(52.3%)は1.8ポイント減少した。

また、100人以下の企業では賃金改善を実施しない企業の割合がいずれも昨年より減少しており、従業員数が21人以上の企業では、賃金改善がない企業はいずれも1割未満に留まった。他方、賃金改善を実施しない割合は従業員数が「5人以下」(30.2%)の企業で突出して高く、従業員数が5人以下では賃金改善を行う環境がいっそう厳しくなっている様子が窺える。

業界別に見ると、「製造」(67.3%)が最も高く、「建設」(66.0%)、「農・林・水産」(65.3%)、「運輸・倉庫」(65.0%)が続いた。最低賃金の引き上げに対応するほか、2024年問題に直面したトラック運送業界や建設業界などでは、賃金改善を実施する企業の割合が昨年より高まった。

賃金改善の具体的な内容について見ると、「ベースアップ」が56.1%(前年比2.5ポイント増)、「賞与(一時金)」が27.4%(同0.3ポイント減)となった。「ベースアップ」は過去最高となった前年の53.6%を上回り、4年連続でこの質問を開始した2007年以来最高を更新した。

賃金改善の理由は「労働力の定着・確保」が74.9%でトップ

2025年度に賃金改善が「ある」企業にその理由を尋ねたところ、人手不足などによる「労働力の定着・確保」が74.9%(複数回答、以下同)と最も高かった。次いで、「従業員の生活を支えるため」は62.5%だった。2年連続で低下したものの、依然として6割を超える水準となっている。

さらに、飲食料品などの生活必需品の値上げが響いている「物価動向」(54.4%)は前回より2.8ポイント増加し、3年連続で半数を超える企業が理由として上げた。また、「採用力の強化」(37.5%)が4番目に上げられたほか、「同業他社の賃金動向」(30.3%)は前年より5.0ポイント増加し調査開始以降で初めて3割台となった。

賃金を改善しない理由、「自社の業績低迷」が58.2%でトップ

賃金改善が「ない」企業にその理由を尋ねたところ、「自社の業績低迷」が58.2%(複数回答、以下同)で最も高くなった。また、「物価動向」(22.7%)は2023年度(20.2%)を上回り過去最高を更新するなど、物価上昇が賃金改善を行えない状況をもたらした様子も窺える。以下、「同業他社の賃金動向」(12.7%)、新規採用増や定年延長に伴う人件費・労務費の増加などの「人的投資の増強」(11.5%)、「内部留保の増強」(11.1%)が続いた。

総人件費は平均4.50%増加見込み、中小企業の従業員給与は平均4.48%増と試算

2025年度の自社の総人件費が2024年度と比較してどの程度変動すると見込むかを尋ねたところ、「増加」(※2)を見込んでいる企業は73.6%(前年比1.5ポイント増)と、この質問を取り始めた2016年度以降で最高となった。

一方、「減少」すると見込む企業は4.8%(同0.5ポイント減)と3年連続で過去最低を更新した。その結果、総人件費は前年度から平均4.50%増加すると見込まれる(大企業が平均4.65%増、中小企業が平均4.47%増)。従業員の給与は、総人件費の伸び率と同程度の平均4.50%と試算(それぞれ平均4.65%、平均4.48%)、賞与は平均4.44%(それぞれ平均4.63%、平均4.43%)、さらに各種手当などを含む福利厚生費も平均4.46%増加(それぞれ平均4.65%、平均4.44%)と試算される。

また、大企業において、総人件費の増加率が5%以上とした企業は27.3%(前年比3.0ポイント増)、中小企業でも総人件費の増加幅が5%以上の企業は29.5%(同1.6ポイント増)となった。

【まとめ】
本調査の結果、2025年度に賃上げを見込む企業は61.9%となり、調査開始以降で初めて6割を超えた。特に、ベースアップにより賃上げを進めようとする企業が2年連続で半数を超えており、恒常的な所得の底上げによる個人消費の拡大に向けた流れに進みつつある。

2024年度の実績では企業の77.1%が賃上げを実施し、過去最高を更新している。2025年度は、最終的にこの実績をさらに上回ることが予想される。総人件費も企業の73.6%が増加を見込んでおり、2年連続で7割超の企業が増加を予測している。金額ベースでも約4.50%の上昇が見込まれており、調査開始以降で最も高い上昇率である。

賃上げを行う理由として7割を超える企業が「労働力の定着・確保」を上げており、高水準な人手不足の状態が引き続き経営リスクとなっている。企業は「同業他社の賃金動向」を注視しながら賃上げを行う機会が増えている。企業が生き残りを図るためには、継続的な利益の確保が従来以上に重要となる。

2025年の春闘は前年以上の賃上げを求める動きが強まり、政府は大幅な賃上げ実現に向けた後押しを進めている。さらに、2025年4月入社の新卒社員に支給する初任給を前年度から引き上げる企業は7割に達する(※3)。2025年は実質賃金の継続的な上昇と個人消費拡大による好循環が焦点となる。これまで賃金と物価上昇の好循環に向けた政策が実施されてきたが、いよいよ実態経済の上昇を伴う次のステージへステップアップする段階に来ている。

調査概要
調査期間:2025年1月20日~31日
調査対象:全国2万6765社
有効回答企業数:1万1014社(回答率41.2%)
なお、賃金に関する調査は2006年1月以降毎年実施し、今回で20回目。

※1:賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)すること。定期昇給は賃金改善に含めない
※2:「増加」(「減少」)は、「20%以上増加(減少)」「10%以上20%未満増加(減少)」「5%以上10%未満増加(減少)」「3%以上5%未満増加(減少)」「1%以上3%未満増加(減少)」の合計
3:帝国データバンク、「初任給に関する企業の動向アンケート(2025年度)」(2025年2月14日発表)