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男性の育休取得率が急伸も、女性管理職比率や男女間賃金格差は変化なし 2024年3月末決算企業の有価証券報告書における人的資本開示状況【日本生産性本部調べ】

マスメディアン編集部 2024.08.16

  • 人的資本
日本生産性本部は、2024年3月末決算の東証プライム上場企業の「有価証券報告書における人的資本開示状況」速報版を公表した。男性育休取得率は50%以上が6割を超えた。一方で、女性管理職比率、男女間賃金格差は、昨年から大きな変化はなく、長期的取り組みが必要と見られる。
8月1日、日本生産性本部は、人的資本経営の測定・開示ワーキンググループ(以下WG)にて取りまとめた2024年3月末決算の東証プライム上場企業の「有価証券報告書における人的資本開示状況」速報版を公表した。本調査は昨年に続き2回目となる。

人材を「資本」と捉え、その価値を最大限に引き出す経営「人的資本経営」が注目されるなか、内閣府令により、2023年3月末以後の事業年度にかかる有価証券報告書から、サステナビリティ関連項目として人的資本に当たる「人材育成方針」「社内環境整備方針」および、多様性に当たる「男女間賃金格差」「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」の情報開示が義務づけられた。

WGではこれを受けて、昨年より有価証券報告書への記載状況を独自に調査・集計している。今回は、2024年3月末決算の東証プライム企業(集計社数1130社:6月30日時点で開示があった企業)について、提出された有価証券報告書から人的資本・多様性に関する記載内容を集計し、速報版として公表した。主な特徴は以下の通り。

1.男性育休取得率は50%以上が6割を超え、取り組みの成果が表れる

男性育休取得率は、50%以上が64.8%となり、昨年の44.9%から大きく伸びた。業種別に見ても全業種で伸びており、女性管理職比率や男女間賃金格差と比べて成果が表れやすい取り組みと見られる。
男性の育児休業取得率でみた企業割合(単体)を示す図表
グラフ11:男性の育児休業取得率でみた企業割合(単体)

2.女性管理職比率、男女間賃金格差:昨年から大きな変化はなく、長期的取り組みが必要

女性管理職比率が5%未満の企業は46.0%(昨年は48.2%)、15%未満が83.2%(昨年は84.1%)を占め、いずれも昨年より微減した(グラフ8)。また、業種別では、サービス業、金融・保険・不動産業、情報通信業の順で高く、鉱業・建設業、電気・ガス業が低い結果となった。
女性管理職比率でみた企業割合を示す図表
グラフ8:女性管理職比率でみた企業割合
男女間賃金格差は、男性を100とすると女性は全体平均で71.4と昨年の70.8より縮小した。70~75未満の企業が232社(24.0%)、75~80未満が224社(23.2%)と、70~80未満が47.2%を占める。
男女間賃金格差でみた企業割合(単体)を示す図表
グラフ14:男女間賃金格差でみた企業割合(単体)
業種別の賃金格差は、情報通信業が76.4でもっとも小さく、製造業、サービス業と続く。一方、金融・保険・不動産業が64.0ともっとも大きい。女性管理職比率、男女間賃金格差ともに、改善傾向は見られたものの、昨年から大きな変化は見られなかった。成果が表れるには長期的な取り組みが必要と考えられる。

3.人的資本・多様性に関する記載の傾向:人材・多様性を「経営」とつなげる意識の高まりが見られる

有価証券報告書における人的資本に関する記述の文字数は、昨年同様1000~1499字が最多で20.9%、次いで1500~1999字が15.8%、500~999字が14.1%と2000字未満が全体の57.3%を占める。

記述における頻出語(出現回数)を見ると、「人材」が9458回と最多で、「育成」(6952回)、「経営」(6301回)、「環境」(6292回)と続く。「経営」が昨年と比べ1000回近く増え、全体の傾向は変わらないものの人材や多様性を「経営」とつなげる意識の高まりが見られた。

人的資本に関する記述の文字数を「多い群(4500字以上)」「中程度の群(1500字以上4500字未満)」「少ない群(1500字未満)」に分類し各開示指標の平均値を算出すると、文字数の多い方が従業員規模(連結含む)は大きく、男性育児休業取得率が高い(図表5)。
図表5:文字数の違いによる開示指標の比較
図表5:文字数の違いによる開示指標の比較
記載文字数の「多群」「中群」「少群」で頻出語の特徴を分析したところ、「少群」では人材「確保」や「管理職」、「多様性」など開示が求められている内容に関連する語の記載が多い。「中群」では「人的資本」が他群と比べて多く、「多群」では「キャリア」や「人事」「評価」など従業員のキャリアや人事部門、評価と連携する意識が窺える。また、「経営」「戦略」など人事施策を経営戦略と併せて考えている様子も見て取れた。