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人的資本開示義務化1年後の取り組み状況 上場企業の3割は「どの情報を管理・開示すべきか」を課題視【オデッセイ調べ】

マスメディアン編集部 2024.06.28

  • 人的資本
オデッセイは、全国の従業員1000名以上、もしくは年商500億円以上の企業の人事関係者、経営企画関係者500名に対し「人的資本情報の可視化・開示の取り組み状況に関する調査」を実施。調査結果から、上場企業の約8割が開示を行っているが、今後の課題として最も上がったのは「どの人的資本情報を管理して開示すべきか」であった。
オデッセイは、全国の従業員1000名以上、もしくは年商500億円以上の企業の人事関係者、経営企画関係者500名に対し「人的資本情報の可視化・開示の取り組み状況に関する調査」を実施し調査結果を発表した。

有価証券報告書への人的資本情報の開示が義務化されて1年、企業の人的資本情報の可視化や開示の状況はどこまで進み、またどのような課題を抱えているのかを、同社は注目。今回、人的資本情報について開示、可視化、管理、活用などさまざまな面での調査を実施した。その結果、投資家をはじめとしたステークホルダーからの注目度が高まっている人的資本情報の管理や開示に関する日本企業の苦労や、今後の課題が見えてきた。

調査結果の要旨

1.開示の状況
有価証券報告書への人的資本情報の開示が義務化されて1年、企業の人的資本情報の可視化や開示の状況はどこまで進み、またどのような課題を抱えているのかへ、同社は注目。今回、人的資本情報について開示、可視化、管理、活用などさまざまな面での調査を実施した。その結果、投資家をはじめとしたステークホルダーからの注目度が高まっている人的資本情報の管理や開示に関する日本企業の苦労や、今後の課題が見えてきた。

2023年3月の決算から有価証券報告書への人的資本情報の記載が義務化されて1年が経過したため、各社の開示の状況について確認した。上場企業では78%、非上場企業も30%の企業が社外に開示している(全体で58%)。しかし上場企業においても、有価証券報告書への記載が義務化されている項目以外も開示している企業は52%に留まっており、自社の方針に基づいた情報開示はこれから進むものとみられる。一方非上場企業でも開示している企業が30%あり、人的資本情報の管理もしている企業は60%である。非上場企業においても人的資本への取り組みが進んでいることが分かる。

また、有価証券報告書への人的資本情報の記載については、義務化されていることもあり、上場企業の約8割(79%)が記載している。ただ、複数のシステムから取得して手作業で集計するなど、エクセルなどで個別に管理している情報をとりまとめて作成しているため手間がかかっているとの回答も約半数(49%)あった。記載義務化情報を効率的に作成し掲載する仕組みづくりが必要であると同社は考える。

2.管理レベル
独自に重要指標を設定し指標化・管理している企業は30%に留まる。ISOなどのガイドラインを参考に指標化・管理している企業が約2割(21%)あり、国際規格をベースに人的資本に関する自社の状態を把握しようとしている企業が一定数ある。

当然ながら人的資本情報は開示することが目的ではなく、管理・活用していく必要がある。ここでは、各社が独自の重要指標を設定し指標化したうえで管理できているか、人的資本情報の管理レベルを確認した。

その結果、独自の重要指標を設定し、指標化・管理している企業は、全体で30%、上場企業に限定しても37%とそれほど高くなかった。後述の質問において人的資本情報を開示・活用していく上での課題として「どの人的資本情報を管理・開示すべきか分からないこと」が最も多く挙げられていることもあり、全体的にまだ模索中である。一方で、ISOなど標準的なガイドラインを参考に指標化・管理している企業が全体で21%、上場企業で24%あり、まず、標準的なガイドラインに沿って自社の状態を把握し、その後独自の重要指標を設定して指標化・管理しようとしている企業が続いている。独自の重要指標を設定し指標化・管理していく企業は、これから増えていくことになりそうである。

3.参考指標
ISO30414を参考にしている、もしくは参考にしたいと思っている企業は60%以上に上る。

国際規格であるISO30414を参考指標としているか確認した。企業全体では6割以上(62%)が参考にしている、もしくは参考にしたいとの回答、上場企業に限定すれば、それが7割以上(71%)となり、ISO30414を信頼する企業は多い。独自の重要指標の設定が進まない企業は、信頼性の高いISO30414の項目を参考にまず自社の状況を把握するところからスタートする選択肢も考えられる。

4.可視化
人的資本情報を可視化できている企業は6割ほど(58%)あるが、その半数以上(30%)は可視化に手間がかかっていると回答している。

活用の一環として人的資本情報の可視化の状況について確認した。適時可視化できている企業は全体で28%、上場企業に限定しても37%に留まっている。また、可視化はできているが手間と時間がかかると回答した企業の割合が多い(全体で30%、上場企業で34%)。人的資本情報は管理しているが、可視化できていない企業も一定数あり(全体16%、上場企業11%)、可視化にかかる手間が可視化を遅らせている可能性もある。簡単に可視化できる仕組みづくりが求められる。

5.課題
人的資本情報の開示や活用を進めていくうえで解決すべき課題は「どの人的資本情報を管理して開示すべきか決められないこと」。上場企業の30%が課題視しており最多である。

今後の人的資本情報の開示や活用を進めていくうえでの課題を確認した。まず、企業全体では、「特に課題はない」と回答した企業は34%、上場企業でもさらに少ない29%になっていることから、多くの企業が人的資本情報の開示や活用を進めていくうえで課題を抱えていることが分かる。上場企業が抱える具体的な課題については、「自社としてどの人的資本情報を管理して開示すべきか決められないこと」が一番多く上場企業の30%が挙げている。続いて「情報システムなど情報を収集・加工する仕組みがない、もしくは不十分なこと」が挙げられており、人的資本情報を管理する基準や、管理、活用するインフラといった基本的な部分を課題視していることが分かる。

6.必要な仕組み
人的資本経営を実現するうえで今後必要な仕組みは「タレントマネジメントシステムの改善・新規導入」。30%以上の企業が回答しており最も多い。

次に人的資本経営を実現するうえで必要な仕組み(現在実現できていないもの)を確認した。タレントマネジメントの改善・新規導入の回答が多く、特に上場企業では、40%以上となった。続いて、人事管理システムの強化が挙がっており、「人的資本情報を収集・加工する仕組みがない、もしくは不十分」という前述の課題に対応する結果となった。上場企業において、有価証券報告書への開示について記載しているが手間がかかるとの回答が多かったこともあり、「有価証券報告への記載事項が自動出力できる仕組み」を選ぶ上場企業も80社あり、27%となった。

7.経営効果の検証
人的資本情報を開示・活用したことによる経営上の効果については、開示企業の80%以上が財務情報を使って確認している、もしくは確認したいと思っている。

人的資本情報を開示・活用したことによる経営効果の確認状況を調べてみた。財務情報を使って確認している上場企業が既に43%あった。さらに財務情報で確認したいと思っているがまだできていない上場企業も40%あることから、人的資本経営の経営効果を財務情報で確認するニーズが非常に高いことが分かった。

本調査にて確認できた課題とニーズ

1.有価証券報告書へ人的資本情報を開示する作業の効率化
約8割の上場企業が人的資本情報を有価証券報告に掲載しているが、掲載に手間がかかっていると回答した企業が過半数あるため、開示作業を効率化するニーズは高い。

2.管理・開示すべき人的資本情報を決めかねている企業にはISO40414の活用がヒントになる
管理・開示すべき人的資本情報が決められずに停滞している企業は、ISO30414の管理項目をベースにスタートさせる方法も考えられる。ISO30414に対する信用は高く、ISO30414などの標準ガイドラインをベースに人的資本情報の管理を始めている企業も一定数ある。

3.人的資本情報の可視化プロセスの効率化
人的資本情報を活用するために何らかの形で可視化できている企業は6割近くあるが、手間をかけて実現している企業が多く、簡単に可視化する仕組みが必要である。

4.タレントマネジメントなど人的資本情報を収集・加工できる情報基盤の整備
情報システムなどで人的資本情報を収集・加工する仕組みがない、不十分であることを課題視する上場企業が多いこともあり、今後必要とされる仕組みとして、タレントマネジメントの導入や人事システムの強化が挙げられている。

5.経営効果を財務情報で確認するニーズが高い
人的資本情報を管理・開示することによる経営効果を財務情報で確認している、もしくは確認しようとしている上場企業が8割以上に上り、財務情報による経営効果の確認についてはニーズが高い。

調査結果
「人的資本情報の可視化・開示の取り組み状況に関する調査概要」
調査方法:Webアンケート形式
調査地域:全国
調査期間:2024年4月24日~25日
調査対象:全国の従業員数1000以上もしくは、年商500億円以上の企業で働く、人事関係者、経営企画関係者500人