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企業のLGBTQ取り組み調査、推進する要因1位は「従業員の声」【Works Human Intelligence調べ】

マスメディアン編集部 2024.01.12

  • 働き方改革
Works Human Intelligenceは、36法人を対象にLGBTQに関する意識・取り組み調査を実施した。86.1%の企業がLGBTQに関する取り組みを実施または検討中で、企業数も約2年で15ポイント以上増加している。推進する要因1位は「従業員の声」、一方で進まない理由としては依然「優先順位の低さ」が半数以上に上がった。
Works Human Intelligence(以下、WHI)は、統合人事システム「COMPANY」のユーザー36法人を対象にLGBTQに関する意識・取り組み調査を実施した。2021年に実施した同様の調査と比較しながら、大手法人における取り組み状況や人事担当者の問題意識について、調査結果を公表する。

本調査の背景
近年、組織のダイバーシティ&インクルージョン推進の1要素として、「LGBTQ」などと総称される性的少数者への配慮の必要性が可視化されつつある。2020年6月には改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行され、性的指向・性自認に関するハラスメントおよび、性的指向・性自認の望まぬ暴露(アウティング)がパワーハラスメントの対象となり得ることが明記された。

2022年11月には、性的少数者の人たちのパートナーシップ関係を公的に認める「東京都パートナーシップ宣誓制度」が開始。2023年の6月には、性的少数者に対する理解を広めることを目的とした「LGBT理解増進法」が施行され、従業員への普及啓発・就業環境の整備・相談の機会の確保などが企業の努力義務として定められた。

そんな中で、当事者の働きやすさ向上、職場における障害の除去に向けた取り組みを行っている法人も多くある。WHIでは、顧客からの「他社の取り組み状況を知りたい」「課題意識を共有したい」といった声を受け、2021年に大手法人の人事部門を対象に「LGBTQに関する意識・取り組み調査アンケート」を実施した。約2年を経て、現在の取り組み状況や、最新の課題意識について改めて調査を実施した。

調査結果の概要
1.86.1%の企業がLGBTQに関する取り組みを実施または検討中(2021年から15.3ポイント増加)。
2.実施中の施策のうち最も多いのは「戸籍上の氏名と異なる通称名の使用」、最も進まないのは「ホルモン治療や性別適合手術の際の休暇制度等」。
3.取り組み推進の後押しになった特に大きい要因は、約半数が「従業員からの要望」と回答。次いで「経営層の支援宣言」と続いた。
4.取り組みが進まない理由は、「優先順位が高くない」が半数以上。次いで「何をすればよいかわからない」が25.0%だった。
5.取り組みにあたって困っていること(自由記述)では、アウティング防止やインフラ整備に関する課題が複数挙がった。

調査結果

1.86.1%の企業がLGBTQに関する取り組みを実施または検討中(2021年から15.3ポイント増加)。
「差別禁止の明文化」「同性パートナーを福利厚生の対象に」といったLGBTQに関する15施策のうち、少なくとも1つ以上の施策を実施中または検討中と回答した企業の割合は、2021年調査では70.8%であったのに対し、2023年調査では86.1%となった。約2年間で15.3ポイント増加した。施策ごとに取り組み度合いの差はあるものの、全体としてLGBTQに関する取り組みは広がりつつあると見受けられる。

一方で、15施策について「いずれも検討していない」と回答した企業からは「ダイバーシティ&インクルージョン施策として女性活躍推進を少しずつ進めているが、性の多様性・LGBTQに関してはまだ検討を進められていない段階」といった回答が寄せられた。
2.実施中の施策のうち最も多いのは「戸籍上の氏名と異なる通称名の使用」、最も進まないのは「ホルモン治療や性別適合手術の際の休暇制度等」。
2023年の調査において、全15施策のうち「全社的に施策を行っている」と「一部部署/エリアにて施策を行っている」の合計割合が最も高かったのは、「戸籍上の氏名と異なる通称名の使用」で50.0%、次いで「研修、eラーニング(従業員全体向け)」で41.7%でした。反対に、最も進んでいない施策は「ホルモン治療や性別適合手術を受ける際の休暇制度および運用上の支援」で、わずか2.8%の実施率となった。

それぞれの施策の取り組み状況は以下の通り。なお、15施策を「基本施策」「研修・文化形成」「相談窓口・ メンタルケア」「その他」で分類している。

【基本施策】
2021年調査と比較して、「全社的に施策を行っている」と回答した企業の割合は「同性パートナーやその親族を福利厚生(結婚祝金、結婚休暇等)の対象とする」では13.8%から22.2%へ8.4ポイント増加、「戸籍上の氏名と異なる通称名の使用」では29.2%から47.2%へ18.0ポイント増加した。通称名だけでなく、本人の自認する性を別途「社内性別」として、人事システム上で管理している例もあった。この2年間で、具体的な施策の検討・実行が進んだことが窺い知れる結果となった。

【研修・文化形成】
2023年から「研修、e-ラーニング」に関する項目を「従業員全体向け」と「管理職相当向け」の2つに分類して調査したところ、特に従業員全体向けについては、41.7%が「全社的に施策を行っている」と回答した。その他の施策は、2021年調査に比べて微増した。

【相談窓口・メンタルケア】
「相談窓口の設置」に関して、「全社的に施策を行っている」と回答したのは、2021年調査では24.6%であったのに対し、2023年調査では36.1%と11.5ポイント増加した。

【その他】
「履歴書から性別記載欄をなくす」という項目に関して、2021年調査に比べ2023年調査では「全社的に施策を行っている」「一部部署/エリアにて施策を行っている」の合計割合が9.3%から22.2%と、12.9ポイント増加した。

■「その他」の自由記述(回答抜粋)
・BME(Business for Marriage Equality)への賛同表明。
・取引企業との協業・社内SNSを使用したコミュニティ。
・会社として多様性に取り組む宣言をしており、ボトムアップ型のワーキンググループ(LGBTQ、女性活躍、障がい者、人種など各テーマに沿ったグループ)を設置し活動をしている。
3.取り組み推進の後押しになった特に大きい要因は、約半数が「従業員からの要望」と回答。次いで「経営層の支援宣言」と続いた。
■「その他」の自由記述(回答抜粋)
・人権尊重の機運、人的資本経営に関する諸要請を受けての社内議論の進展。
・立案担当者の考え。

取り組み推進の後押しになった要因として特に大きいものについて、2023年調査より「従業員からの要望」という項目を新設したところ、45.2%と最も回答割合が高い結果となった。次いで「経営層の支援宣言」が35.5%という結果となり、ボトムアップとトップダウンの両方からの働きかけが大きな後押しになっていると見受けられる。
4.取り組みが進まない理由は、「優先順位が高くない」が半数以上。次いで「何をすればよいかわからない」が25.0%だった。
■「その他」の自由記述(回答抜粋)
・当事者からの要望がないため。
・社会的に重要であり優先すべきテーマであるものの、他の課題が優先されている。

取り組みが進まない理由については、「優先順位が高くない」が最も多く52.8%、次いで「何をすればよいかわからない」が25.0%となった。「従業員からの要望」が出ることによって、優先順位が高まったり、具体的な対応方針の検討が進んだりするなど、施策が進まない要因の払拭につながっているようにも見受けられる。要望が顕在化しないからといって、当事者がいない・要望がないとはいえないが、日頃から従業員の声を広く集める機会や仕組み、そして声を上げやすい社内文化の形成により、施策推進の後押しにもなると期待できる。

実際に取り組みを進めている企業に「自社へのメリット」を伺ったところ、以下の回答が得られた。

■「取り組みによる自社へのメリット」についての自由記述(回答抜粋)
・エンゲージメント向上
・当事者の安心感
・職場の雰囲気改善(話題にしやすくなった)
・当事者の応募・採用時カミングアウトの増加
・従業員の正しい知識・理解度の向上、ALLY(※)の増加
・アルバイトから経営層までの意識の向上、顧客対応への拡大など
・採用の定着
・会社のブランディング
(※)LGBTQについて理解・支援する人を指す言葉
5.取り組みにあたって困っていること(自由記述)では、アウティング防止やインフラ整備に関する課題が複数挙がった。

■LGBTQに関する取り組み・運用にあたって、困っていることや課題に感じていること
【制度整備・運用】
・同性婚の場合の福利厚生の取り扱い、東京都以外でのパートナー証跡(結婚祝金、家族社宅入居など)。
・公表してきた人への対応。慶弔関係の整備。
・多岐におよぶ当事者の対応。
・過去1名からカミングアウトがあったが、特に要望がなかったため対応はしていない。当事者がオープンにしてまで会社に何らかの運用を求める事例がなく、また逆に会社の積極的な取り組みが場合によっては当事者にとっては余計な対応になりかねないとの懸念があり、制度化するところまで検討していないというのが実情。

【情報管理】
・アウティング、情報管理の難しさ。
・アウティングの防止。
・男女の性別データは、国としての女性活躍の方針の基、管理必須になっていて廃止にはできないこと。

【インフラ整備】
・インフラ関係の整備。
・施設改善の費用と場所。
・小規模事業所でのトイレ、更衣室の対応。
・トイレや更衣室について特に女性社員から懸念の声がある。
・当事者から性自認のトイレ使用希望があった場合はショッピングセンターに確認の上で対応している(小売業の企業)。

【理解・文化形成】
・制度の創設・改廃、支援組織づくりなどに向けた「理解」のとりつけ、「意識改革」。
・効果的な啓発研修のあり方(特に管理職層)。
・アルバイト含め従業員の入社が常時発生する中での、アンコンシャス・バイアスやアウティングを無くすための継続した研修などの実施。
・マイノリティとマジョリティ双方の精神的負担の軽減対応。

【対応リソース・優先順位】
・必要性は感じていて取り組みに向けて動いてはいるが、社内からの声が小さいことや、それに伴って優先順位が低くなっているせいか、対応する人員が少ない。
・対象者が出た場合に、何から順番に取り組めばよいのか。

特にインフラの整備や制度刷新にあたっては、金銭的・人的な対応コストが大きいこともあり、経営や従業員の理解なしに進めることは難しいと思われる。カミングアウトするか否かは本人の自由意思によるものであるため、要望を上げてもらうことの難しさもあるが、何か声があがったときに対応を進められるよう、日頃の情報収集や、自社における対応方針の検討に取り組むことが重要だと考えられる。

調査概要
調査名:LGBTQに関する意識・取り組み調査アンケート2023
期間:2023年8月10日~10月6日
調査機関:自社調べ
対象:WHI製品ユーザーである国内大手法人で、人事制度の設計などの担当者
調査方法:Webアンケート形式
有効回答数:36(回答法人規模:従業員数平均約2500名)