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インハウスマーケティングの進展

岩本 隆 2026.03.16

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インハウスマーケティングの進展
マーケティングテクノロジーの進化により、広告運用などを企業が自社で行う「インハウスマーケティング」が広がっています。ある調査では、企業の8割以上がインハウス化に着手しているという結果も出ています。マーケティング人材の確保・育成は人事にとって重要なテーマとなりつつあります。その背景と動向について、慶應義塾大学大学院 講師の岩本隆先生に解説いただきました。(マスメディアン編集部)
テクノロジーの進化により、さまざまなマーケティング関連ツールが自動化機能を実装するようになり、主に運用面にかかる業務負担を減らす方向にマーケティング業界が進展している。それに伴い、マーケティングのインハウス化(内製化)が進んできている。特にインターネット広告関連でのインハウス化が顕著であり、インハウス化のためのツールも進化をしている。

例えば、グーグルが2021年11月に提供開始した「P-MAXキャンペーン」は、広告の自動化を促進し、効率的な管理と優れた費用対効果を実現する。メタが展開する「Meta Advantage+」は、AIを活用してキャンペーンをリアルタイムで最適化し、アクションを実行する可能性の高い人に広告を配信することで、パフォーマンスを最大化できる。アマゾンは、2025年12月より、アマゾンストア内の情報から製品が使われているシーンをリアルに描いた動画広告を生成できるAIツール「Video Generator」を日本で展開している。これらのようなツールの活用により、キャッチコピーや画像の生成、広告運用の自動化が可能になり、広告会社に任せていた工程をインハウス化できる。

オプトが2025年8月に実施した企業の経営者416名に対する調査(※1)では、86.1%の企業がマーケティングのインハウス化に着手しているという結果になった。広告運用体制の内訳は以下となった。

●ほぼ完全にインハウス化:9.1%
●大部分をインハウス化:25.7%
●一部をインハウス化:51.2%

インハウス化を進める目的についての内訳(複数回答あり)は以下であった。

●マーケティングのスピード向上や柔軟性の改善:38.6%
●ナレッジ・データを社内に蓄積するため:27.1%
●コストや予算の削減:20.1%
●広告の品質や精度の向上:13.1%
●その他:1.1%

社内の広告運用の組織は「インハウスエージェンシー」と呼ばれ、海外では、全米広告主協会(ANA:Association of National Advertisers)が2023年に発表したレポートによると、調査対象企業の82%が社内にインハウスエージェンシーを保有していると回答している(※2)。そして、先進的なインハウスエージェンシーをもつ企業やリーダーを表彰するイベントなども行われており、日本企業では、2020年に設立されたオーストラリアのIHAC(In-House Agency Council)という団体が主催する「IHAC Award 2025」でアサヒ飲料が「IHAC Award for Best Creation Work」と「IHAC Award for Rising Star」を受賞している(※3)。

インハウスエージェンシーへの投資によって大きな経済効果を発揮した例も増えている。例えば、P&Gのファブリックケア部門では、メディアプランニングとメディアバイイングの機能をインハウス化することにより、1年間で約6500万米ドルの広告費を削減できた。また、ユニリーバは「U-Studio」というインハウスエージェンシーを20カ国以上で展開しており、外部の広告会社より低コストでコンテンツを制作し、1年間で2.5億ユーロを節約することができた。

インハウスエージェンシーを社内につくるということは広告会社のもつ組織能力を自社にもつということでもあり、そのための人材の確保・育成が今後重要な経営課題となってくるであろう。


※1:オプト「インハウス化着手企業は86%!課題は「スキル不足」「人材確保」~オプトの調査で、6割以上がサポート会社を利用している実態が判明~」オプトWebサイト(https://www.opt.ne.jp/news/11626/2025年)
※2:Association of National Advertisers「The Continued Rise of the In-House Agency: 2023 Edition」Association of National Advertisers会員Webサイト(2023年)
※3:In-House Agency Council「IHAC Awards 2025: Meet the WINNERS!」In-House Agency CouncilWebサイト(https://www.ihac.com.au/blog/ihacawards/meetthewinners/2025年)

執筆・編集

岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授|東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。