スキル標準の広がり
岩本 隆 2025.02.19
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日本国内では労働人口不足が今後ますます深刻化する中で、日本社会全体での人材の最適配置のニーズが高まっている。そのため、人材の流動化を向上させることが求められており、「人材流動化時代」という言葉も使われるようになった。人材流動化の向上に向けては、企業の中でしか通用しないスキルではなく、企業を超えて通用するスキルを身に付ける必要があり、そのためにはスキル標準を活用することが求められる。
海外では、国全体でスキル標準が活用されている事例が増えており、2024年11月26日に経済産業省が海外のスキル情報収集と活用の事例を公表している(※1)。この資料では、以下の国のスキル標準の事例が紹介されている。
●シンガポール:「SkillsFuture Singapore」
●フランス:「Prometheus-X」
●アメリカ:「CompTIA」
●カナダ:「Skills Passport」
筆者は、「DSMパートナーズ」という任意団体のアドバイザーを務めている。DSMは「Digital Skill Map(デジタルスキルマップ)」の略である。DSMパートナーズは、企業や自治体の会員で構成されており、2023年度より経済産業省が策定した「デジタルスキル標準」の社会実装の活動を行っている。具体的には、デジタルスキルマップを活用するにあたって現場での課題や解決策などの議論を重ね、デジタルスキル標準の実効的な活用のあり方の体系化を行っている。
デジタルスキル標準は、すべてのビジネスパーソンが身に付けるべき能力・スキルの標準としての「DXリテラシー標準(DSS-L)」と、企業や組織のDXの推進に必要な人材に対する「DX推進スキル標準(DSS-P)」で構成される。このフレームワークを参考に、2024年5月14日に、GXリーグの「GX人材市場創造WG」が「GXスキル標準」を公表した(※2)。
GXは「Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)」の略称で、温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電や風力発電などのグリーンエネルギー中心へと転換し、経済社会システム全体を変革しようとする取り組みを指す。2023年2月10日に「GX基本方針」と「GX推進法案」が閣議決定されたことを受け、2023年4月にGXリーグの本格的な活動が開始された。GXリーグでは、日本の温室効果ガス排出量削減に取り組む多くの参画企業が、カーボンニュートラルに向けた社会構造変革のためのさまざまな活動を行っている。
GXスキル標準も、デジタルスキル標準にならい、GXに関するリテラシーとして身に付けるべき「GXリテラシー標準(GXSS-L)」と、GX推進人材に必要な「GX推進スキル標準(GXSS-P)」で構成される。
さらに、2025年1月に内閣府宇宙開発戦略推進事務局が、宇宙開発分野の人材基盤の強化を目的として「宇宙スキル標準(施策版)」について、2月25日に全国説明会を行うことを発表した。図表に内閣府で作成中の「宇宙スキル標準」のイメージを示す。
海外では、国全体でスキル標準が活用されている事例が増えており、2024年11月26日に経済産業省が海外のスキル情報収集と活用の事例を公表している(※1)。この資料では、以下の国のスキル標準の事例が紹介されている。
●シンガポール:「SkillsFuture Singapore」
●フランス:「Prometheus-X」
●アメリカ:「CompTIA」
●カナダ:「Skills Passport」
筆者は、「DSMパートナーズ」という任意団体のアドバイザーを務めている。DSMは「Digital Skill Map(デジタルスキルマップ)」の略である。DSMパートナーズは、企業や自治体の会員で構成されており、2023年度より経済産業省が策定した「デジタルスキル標準」の社会実装の活動を行っている。具体的には、デジタルスキルマップを活用するにあたって現場での課題や解決策などの議論を重ね、デジタルスキル標準の実効的な活用のあり方の体系化を行っている。
デジタルスキル標準は、すべてのビジネスパーソンが身に付けるべき能力・スキルの標準としての「DXリテラシー標準(DSS-L)」と、企業や組織のDXの推進に必要な人材に対する「DX推進スキル標準(DSS-P)」で構成される。このフレームワークを参考に、2024年5月14日に、GXリーグの「GX人材市場創造WG」が「GXスキル標準」を公表した(※2)。
GXは「Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)」の略称で、温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電や風力発電などのグリーンエネルギー中心へと転換し、経済社会システム全体を変革しようとする取り組みを指す。2023年2月10日に「GX基本方針」と「GX推進法案」が閣議決定されたことを受け、2023年4月にGXリーグの本格的な活動が開始された。GXリーグでは、日本の温室効果ガス排出量削減に取り組む多くの参画企業が、カーボンニュートラルに向けた社会構造変革のためのさまざまな活動を行っている。
GXスキル標準も、デジタルスキル標準にならい、GXに関するリテラシーとして身に付けるべき「GXリテラシー標準(GXSS-L)」と、GX推進人材に必要な「GX推進スキル標準(GXSS-P)」で構成される。
さらに、2025年1月に内閣府宇宙開発戦略推進事務局が、宇宙開発分野の人材基盤の強化を目的として「宇宙スキル標準(施策版)」について、2月25日に全国説明会を行うことを発表した。図表に内閣府で作成中の「宇宙スキル標準」のイメージを示す。

他にも、日本でもニーズが急速に高まっている半導体人材について、世界最大の電気・電子系の学会組織であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)が2025年1月11日に、半導体人材育成のために、スキル単位で認定するマイクロクレデンシャル制度を開始すると発表した(※3)。
デジタルスキル標準の活用の活性化をきっかけにして、さまざまな領域でのスキル標準の策定・活用が進展している。スキル標準が活用される領域が増えていくことで、最終的にはすべての領域でスキル標準が策定され、活用されるようになることを期待している。
※1:経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課「海外のスキル情報収集と活用の事例」経済産業省Webサイト(2024年/https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/society_digital/pdf/002_02_00.pdf)
※2:GXリーグ「『GX人材市場創造WG』がGXスキル標準を公表いたしました」(2024年/https://gx-league.go.jp/news/20240514/)
※3:IEEE「IEEE Offers New Credential to Address Tech Skills Gap」IEEE Spectrum、IEEE(2025年/https://spectrum.ieee.org/ieee-microcredential-program)
デジタルスキル標準の活用の活性化をきっかけにして、さまざまな領域でのスキル標準の策定・活用が進展している。スキル標準が活用される領域が増えていくことで、最終的にはすべての領域でスキル標準が策定され、活用されるようになることを期待している。
※1:経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課「海外のスキル情報収集と活用の事例」経済産業省Webサイト(2024年/https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/society_digital/pdf/002_02_00.pdf)
※2:GXリーグ「『GX人材市場創造WG』がGXスキル標準を公表いたしました」(2024年/https://gx-league.go.jp/news/20240514/)
※3:IEEE「IEEE Offers New Credential to Address Tech Skills Gap」IEEE Spectrum、IEEE(2025年/https://spectrum.ieee.org/ieee-microcredential-program)
- 【執筆者プロフィール】
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岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。