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ISO 30414:2025における採用に関連する人的資本メトリック

岩本 隆 2025.12.15

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ISO 30414:2025における採用に関連する人的資本メトリック
2025年に出版された「ISO 30414:2025」は、人的資本報告・開示に関する国際規格です。本記事では、採用に関連する人的資本メトリックに焦点を当て、その具体的な内容について、慶應義塾大学大学院 講師の岩本隆先生に解説いただきました。(マスメディアン編集部)
2025年8月に出版された人的資本報告・開示の国際規格である「ISO 30414:2025」(ISO 30414の第2版)では、合計11の人的資本領域で69の人的資本メトリック(Metric:測定基準)が示されており、本稿では69の人的資本メトリックの内、採用に関連する人的資本メトリックについて記す。

ISO 30414:2025では、採用に関連する人的資本メトリックは7つ示されている。図表1に採用に関連する7つの人的資本メトリックを示す。TBDはTo Be Determined(未確定)の略である。
 
図表1.ISO 30414:2025における採用に関連する人的資本メトリック(出所:ISO 30414:2025をもとに筆者翻訳)
人的資本領域 人的資本メトリック 参照する国際規格
1 コスト 1 総リクルートメントコスト ISO/TS 30421
2 一人当たり採用コスト ISO/TS 30421
2 リクルートメント 3 応募者コンバージョン率(選考通過した応募者に対する候補者の比率) ISO/TS 30430
4 空きポジションを埋めるまでの時間 ISO/TS 30430
5 クリティカルな空きポジションを埋めるまでの時間 ISO/TS 30410
6 正式なオファーの受諾率 TBD
7 採用の質 ISO/TS 30411

採用に関連する7つの人的資本メトリックのISO 30414:2025の参照元となる国際規格のタイトルを以下に記す。規格番号のTSはTechnical Specifications(技術仕様書)の略である。
1. ISO/TS 30410:2018-Impact of hire metric(採用のインパクトのメトリック)
2. ISO/TS 30411:2018-Quality of hire metric(採用の質のメトリック)
3. ISO/TS 30421:2021-Turnover and retention metrics(離職・維持のメトリクス)
4. ISO/TS 30430:2021-Recruitment metrics cluster(リクルートメントメトリクスクラスター)

採用に関してはこれら4つの国際規格以外にも以下の国際規格が出版されている。

・ISO 30405:2023-Guidelines on recruitment(リクルートメントのガイドライン)

採用に関連する7つの人的資本メトリックは「人数」、「金額」、「時間」、「効果」に関するメトリックで構成される。

人数:応募者数→候補者数→オファー受諾者数→採用者数に関して、応募者→候補者とオファー受諾者→採用者のコンバージョン率のメトリックがISO 30414:2025に示されている。

金額:総リクルートメントコストと一人当たり採用コストのメトリックが示されている。これらのコストには外部コストに加え内部コストも含まれるので、管理会計システム等を活用して内部のコストも計算できるようにしておくことが必要である。

時間:空きポジションを埋めるまでの時間と、クリティカルな空きポジションを埋めるまでの時間のメトリックが示されている。採用までの時間がかかればかかるほど機会ロスが生まれるので、時間に関するマネジメントも重要である。

効果:採用の質のメトリックが示されている。採用の質については各企業で評価指標を設定して定量化することが必要となる。

ISO 30414:2025では採用に関連するメトリックは7つに絞られているが、採用に関してはこれら7つ以外にも数多くのメトリックが存在する。採用のメトリックを活用する目的は採用のROI(Retune On Investment:投資利益率)を高めていくことであり、ISO 30414:2025に示されている7つのメトリック以外でも自社にとって重要と考えられるメトリックがあれば、より幅広くメトリックを活用すると良いであろう。

執筆・編集

岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授|東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。