人的資本報告・開示の国際規格「ISO 30414」 2025年アップデートのポイント
岩本 隆 2025.11.17
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2018年12月に出版された人的資本報告・開示の国際規格である「ISO 30414:2018」の第2版である「ISO 30414:2025」が2025年8月に出版された。ISO 30414はISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)の人材マネジメントのTC(Technical Committee:テクニカルコミッティ)であるISO/TC 260で開発が進められた。日本は2023年3月にISO/TC 260のPメンバー(Participating member)となり、ISO 30414:2025の開発には積極的に参加して日本の国内審議委員会よりさまざまな意見を届けた。ISO 30414の第2版でアップデートされた主なポイントは以下である。
1. タイトル
・人的資本メトリック(Metric:測定基準の意味)の一部を要求(Requirements)にしたことにより、タイトルは、第1版ではガイドライン(Guidelines for internal and external human capital reporting:内部・外部への人的資本報告のガイドライン)だったのが、第2版では要求・推奨(Requirements and recommendations for human capital reporting and disclosure:人的資本報告・開示の要求・推奨)に変更された。
2. 人的資本領域
・ISO 30414では人的資本領域を11に分けているが、領域の統合や分離が行われた。
・人的資本領域の並び順を、アルファベット順から意味のある順に変更された。
3. 人的資本メトリック
・人的資本メトリックの合計が58から69に増加した。
・69のメトリックの内、14のメトリックが要求メトリックになり、55のメトリックが推奨メトリックになった。
図表1にISO 30414:2025に示された人的資本領域ごとの人的資本メトリック数を示す。人的資本領域の統合・分離については、リーダーシップ、文化、エンゲージメントが統合され、リクルートメント、ワークフォースの異動・離職が分離され、ワークフォースの異動は後継者計画と統合された。
人的資本領域1、2の「ワークフォースの組成」、「ダイバーシティ」は人的資本の基本情報、3、4の「コスト」、「生産性」は、人的資本データと財務データとを突き合わせた情報、5~7の「健康、安全、ウェルビーイング」、「リーダーシップ、文化、エンゲージメント」、「コンプライアンス、倫理、ワークフォースとの関係」は企業全体のマネジメントに関する情報、8~11の「リクルートメント」、「ワークフォースの異動、後継者計画」、「ワークフォースの離職」、「スキル、ケイパビリティ、開発」は従業員のライフサイクルに関する情報である。12に「自社独自のメトリック」とあるが、ISO 30414:2025で示される合計69のメトリック以外のメトリックを活用したい場合は、自社独自でメトリックを定義すればよい。
| 項目 | 2018 | 2025 |
|---|---|---|
| タイトル | 内部・外部への人的資本報告のガイドライン Guidelines for internal and external human capital reporting |
人的資本報告・開示の要求・推奨 Requirements and recommendations for human capital reporting and disclosure |
| 人的資本領域 | ・11の領域の統合・分離 ・並び順がアルファベット順から意味のある順に変更 |
|
| 人的資本メトリック | 58 | 69(内訳:14が要求、55が推奨) |
1. タイトル
・人的資本メトリック(Metric:測定基準の意味)の一部を要求(Requirements)にしたことにより、タイトルは、第1版ではガイドライン(Guidelines for internal and external human capital reporting:内部・外部への人的資本報告のガイドライン)だったのが、第2版では要求・推奨(Requirements and recommendations for human capital reporting and disclosure:人的資本報告・開示の要求・推奨)に変更された。
2. 人的資本領域
・ISO 30414では人的資本領域を11に分けているが、領域の統合や分離が行われた。
・人的資本領域の並び順を、アルファベット順から意味のある順に変更された。
3. 人的資本メトリック
・人的資本メトリックの合計が58から69に増加した。
・69のメトリックの内、14のメトリックが要求メトリックになり、55のメトリックが推奨メトリックになった。
図表1にISO 30414:2025に示された人的資本領域ごとの人的資本メトリック数を示す。人的資本領域の統合・分離については、リーダーシップ、文化、エンゲージメントが統合され、リクルートメント、ワークフォースの異動・離職が分離され、ワークフォースの異動は後継者計画と統合された。
人的資本領域1、2の「ワークフォースの組成」、「ダイバーシティ」は人的資本の基本情報、3、4の「コスト」、「生産性」は、人的資本データと財務データとを突き合わせた情報、5~7の「健康、安全、ウェルビーイング」、「リーダーシップ、文化、エンゲージメント」、「コンプライアンス、倫理、ワークフォースとの関係」は企業全体のマネジメントに関する情報、8~11の「リクルートメント」、「ワークフォースの異動、後継者計画」、「ワークフォースの離職」、「スキル、ケイパビリティ、開発」は従業員のライフサイクルに関する情報である。12に「自社独自のメトリック」とあるが、ISO 30414:2025で示される合計69のメトリック以外のメトリックを活用したい場合は、自社独自でメトリックを定義すればよい。
図表2にISO 30414のアップデートによる人的資本領域ごとの合計の人的資本メトリック数の増減を示す。追加されたメトリックで特記すべきは「コンプライアンス、倫理、ワークフォースとの関係」の領域で賃金差異に関するメトリックが以下の4つ追加されたことである。同一労働同一賃金の重要性が世界的に高まっており、説明できない賃金格差をなくしていくためにも賃金格差の報告が重要になってきているためである。
追加された賃金差異に関するメトリック
・性別の賃金比率(Gender pay ratio)
・ダイバーシティの賃金比率(Diversity pay ratio)
・CEOと中央値の従業員との賃金比率(CEO to median employee pay ratio)
・シニアマネジメントチームと中央値の従業員との賃金比率(Senior management team to median employee pay ratio)
追加された賃金差異に関するメトリック
・性別の賃金比率(Gender pay ratio)
・ダイバーシティの賃金比率(Diversity pay ratio)
・CEOと中央値の従業員との賃金比率(CEO to median employee pay ratio)
・シニアマネジメントチームと中央値の従業員との賃金比率(Senior management team to median employee pay ratio)

