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人材採用力向上に重要なウェルビーイング経営

岩本 隆 2025.03.05

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人材採用力向上に重要なウェルビーイング経営
「働き方改革」から「働きがい改革」へ。今、企業に求められるのは、単なる労働環境の整備ではなく、従業員のキャリアや働きがいを支える仕組みづくりです。ウェルビーイング経営の最新動向を、慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授に解説いただきました。(マスメディアン編集部)
ウェルビーイング経営に取り組む企業が日本でも増加してきた。ウェルビーイング(Well-being)はwell(良い)とbeing(状態)からなる言葉で、世界保健機関(WHO:World Health Organization)では、ウェルビーイングのことを「個人や社会の良い状態。健康と同じように日常生活の一要素であり、社会的、経済的、環境的な状況によって決定される。」としている。ウェルビーイング経営とは、従業員のウェルビーイングを中心のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)に据えた経営であり、一人ひとりの従業員のウェルビーイングが高まることによって企業の持続的成長が実現できるという考え方である。

日本政府もウェルビーイングを重要視しており、2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」において「政府の各種の基本計画等について、Well-beingに関するKPIを設定する」とされたことなどを踏まえ、関係府省庁が連携してウェルビーイングに関する取り組みを推進するため、2021年7月30日に「Well-beingに関する関係府省庁連絡会議」が設置された。Well-beingに関する関係府省庁連絡会議では、関係府省庁におけるウェルビーイングに関する取り組みについて情報共有を行い、関係府省庁間の連携を強化するとともに、優良事例の横展開が図られている。

ウェルビーイングは広い概念であるため、米国のギャラップ社がウェルビーイングを要素に分けるとどう分けられるかについて研究を実施し、2010年5月にウェルビーイングは以下に示す5つの要素に分けることができると発表した(※1)。

【ウェルビーイングの主要要素】
1.キャリアウェルビーイング(仕事でのキャリアから、私生活で継続していることまでを含めた総合的なキャリアの幸福度。仕事の経歴や実績、役職のほか家事、育児、ボランティア活動、趣味なども要素として含まれる)
2.ソーシャルウェルビーイング(人間関係に関する幸福度。家族、友人、職場の同僚、上司など自分を取り巻く人々と、信頼関係や愛情のある深い関係を結べているか、広い交友関係があるかなどが指標となる)
3.フィナンシャルウェルビーイング(経済的な幸福度。安定した収入を得ているか、資産を確保しているかなどの要素が含まれる)
4.フィジカルウェルビーイング(心身に関する幸福度。身体は健康か、仕事にやりがいはあるか、前向きな気持ちで日々を過ごしているかなどが指標となる)
5.コミュニティウェルビーイング(地域社会での幸福度。家族、友人、学校、会社、部署など自分が属しているコミュニティとの幸せが測られる)

企業がウェルビーイング経営を推進するに当たって、これら5つの要素の中で特に「キャリアウェルビーイング」を重視した取り組みが多い。取り組みとしては、それぞれの従業員が幸せで充実したキャリアを歩めるように経営をするということである。そして、キャリアウェルビーイングを高めるために「働きがい改革」に取り組む企業も増えてきた。2017年3月28日に「働き方改革実行計画」が働き方改革実現会議決定されてから多くの企業が「働き方改革」に取り組むようになったが、最近は「働き方改革から働きがい改革へ」ということで、働きやすさに加えて働きがいを高める施策に力を入れる企業が増えている。

また、働きがいのある企業のランキングを発表する企業・団体も複数出てきている。例えば、日本経済新聞社は図表に示すように、働きやすさと働きがいを両立する企業を「プラチナ企業」と名付け、プラチナ企業の上位100社を発表している。こういったランキングは、企業の人材採用力に大きな影響を与える。人材採用力を高めるためにウェルビーイング経営に取り組むことは今後ますます重要になる。
プラチナ企業を示す図表
図表.プラチナ企業とは(出所:日本経済新聞社)
※1:Gallup「The Five Essential Elements of Well-Being」Gallup Webサイト(2010年/https://www.gallup.com/workplace/237020/five-essential-elements.aspx)
【執筆者プロフィール】
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岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。