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地域の人事部

岩本 隆 2025.01.15

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地域の人事部
2025年は、中堅企業に向けた人的資本経営の政策が本格始動を迎えます。特に取り組みの1つである「地域の人事部」は、地域の企業群が自治体などと連携して経営人材の確保やキャリアステップの構築を行うことで、中堅企業の人材確保から育成や定着まで大きな役割を果たすことが期待されています。今後の政策の動きや、地域の人事部の取り組みなどを、慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授に解説いただきました。(マスメディアン編集部)
2024年9月2日に施行された産業競争力強化法などの改正法により、中小企業者を除く従業員数2000人以下の企業は「中堅企業者」と定義された。さらに、積極的に賃上げやリスクを取った投資などを行う成長意欲の高い中堅企業を「特定中堅企業者」として定義し、設備投資やM&Aを促進する税制措置などを講じ、国内経済の成長と新陳代謝を促進することなった。

2021年頃の調査結果による日本の企業規模別の企業数、常用雇用者数、売上金額などを図表に示す(※1)。中堅企業数は9030者で、その内の19.3%の1745者が上場企業である。また、上場企業総数3999者の43.6%を中堅企業が占めており、東証プライム上場企業1643社の内の49.9%の820者を中堅企業が占めている。
日本の企業規模別の企業数、常用雇用者数、売上金額等を示す図表
図表「日本の企業規模別の企業数、常用雇用者数、売上金額等」
2024年10月に、「中堅企業経営ビジョン」策定に向けた作業部会が、経済産業省が庶務を処理する体制で開始された。これは中堅企業への期待と、中堅企業が自律的に成長する環境、それを実現する上での課題と官民で取り組むべき事項などをまとめたもので、作業部会では、中堅企業が今後成長していくにあたっての最大の経営課題は「人材確保」であるというアンケート結果を基に、人材確保のあり方についても議論が進められている。

経済産業省経済産業政策局では、地域の企業群が一体となって、地域の自治体・金融機関・教育機関などの関係機関と連携し、将来の経営戦略実現を担う人材の確保や域内でのキャリアステップの構築などを行う総合的な取り組み「地域の人事部」を推進している。中堅企業に対しても、地域の人事部が人材確保に大きな役割を果たすことが期待されている(※2)。地域の人事部の特徴を以下に記す。

【特徴1】企業群と地域の関係機関が一体となった取り組み
【特徴2】企業群の経営戦略と人材戦略の実行を地域の関係機関が伴走支援
【特徴3】人材の確保から育成、定着までサポート

地域の人事部事業者は2020年度から選定・採択されており、2025年度も「地域の人事部支援事業」に予算がつく予定である。2025年度の事業では、2025年度から2027年年度までの3年間の事業で、短期的には各年度30件の地域の人事部の取り組みの支援を目指す。中期的には、地域における人材の確保・育成・定着を行う取り組みでは、補助事業開始年度の翌年度の継続率80%以上を目指す。

※1:中堅企業成長ビジョン策定に向けた作業部会事務局「中堅企業の自律的成長の実現に向けて」地方創生推進事務局Webサイト(2024年/https://www.chisou.go.jp/sousei/meeting/chukenvision/pdf/r06-10-24-siryou3.pdf)
※2:経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策課「地域の人事部」経済産業省Webサイト(2024年/https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/jinjibu/)
【執筆者プロフィール】
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岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。