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中堅企業元年

岩本 隆 2024.08.21

  • 業界動向
中堅企業元年
2024年は「中堅企業」を重点的に支援するための改正法が成立した「中堅企業元年」。そのうち、賃上げや国内での設備投資に積極的な企業は「特定中堅企業」と位置付け、法人税などが優遇されます。そうした中堅企業が今後、人的資本を強化するに当たっては、マーケティングや研究開発の人材が重要だといいます。慶應義塾大学大学院特任教授の岩本隆先生に解説いただきました。
2024年1月26日に召集された第213回国会で、従業員2000人以下で中小企業に当てはまらない企業を「中堅企業」と新たに区分して重点支援するための改正産業競争力強化法が成立した。2024年5月31日に可決され、2024年6月7日に法律第45号として公布された。一部の規定を除き、公布の日から起算して3カ月を越えない範囲内において政令で定める日に施行される。中堅企業が定義されたことにより、日本国内に所在する大企業の数は約1300社、中堅企業の数は約9000社、中小企業・小規模企業者の数は約336万社となる。2024年6月13日には、経済産業省が中堅企業の自律的な成長を後押しする施策をまとめた「中堅企業政策」のWebサイト(※1)を公開し、内閣官房は2024年6月17日に『中堅企業等支援に関する今後の取組方針2024』(※2)を公表した。

今回の改正では、賃上げや国内での設備投資に積極的な企業を「特定中堅企業」と位置付け、法人税などを優遇する。そして、2024年を「中堅企業元年」とし、中堅企業の成長を促進するため、中堅企業が活用可能な各府省庁における施策を取りまとめた「中堅企業成長促進パッケージ」が策定された。中堅企業成長促進パッケージには全190施策が登録されており、雇用面では以下の施策などが登録されている。

1.中堅・中小企業の賃上げ
・キャリアアップ助成金【厚生労働省】
・賃上げ促進税制における中堅企業枠の創設【経済産業省・中小企業庁】

2.リ・スキリングによる能力向上支援
・人材開発支援助成金【厚生労働省】

3.地域における人材の育成獲得・インターンシップの促進
・プロフェッショナル人材事業、先導的人材マッチング事業【内閣官房・内閣府】
・地域企業経営人材マッチング促進事業【金融庁】

4.海外からの人材・資金を呼び込むためのアクションプラン等の推進
・マッチングイベント等の実施による特定技能制度の活用促進【出入国在留管理庁】

中堅企業が今後人的資本を強化するに当たって、特に重要なのは、マーケティングや研究開発の人材である。図表に企業がプロダクトを展開するに当たっての活動の流れを示す。ここでは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアやサービスなども含めて「プロダクト」と定義する。
中堅企業が成長のために強化すべき活動を示す図表
図表.中堅企業が成長のために強化すべき活動(出所:筆者作成)
中堅企業では、図表の右側に示されているように、販売するプロダクトがある程度定義されていて、定義されたプロダクトの開発・販売を重点的に行っている企業が多い。しかし、今後のさらなる成長を実現するためには、新たなビジネスを継続的に創造する必要が出てくるため、上流の活動、つまり、マーケティングや研究開発の活動を強化することが求められる。研究開発については、大学や研究所との連携によって補う手段もあるが、マーケティングについては、組織を社内につくって人材を揃える必要があり、中堅企業の人材面ではマーケティング人材がこれからの大きな経営課題になってくるであろう。

※1:経済産業省「中堅企業政策」(https://www.meti.go.jp/policy/economy/chuuken)
※2:内閣官房「中堅企業等支援に関する今後の取組方針2024」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/katsuryoku_kojyo/pdf/2024.pdf)
【執筆者プロフィール】
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岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。