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C-Suite 3.0

岩本 隆 2024.08.07

  • CXO
  • 業界動向
C-Suite 3.0
C-Suite(Cスイート)とは、CXOと呼ばれるコーポレート・エグゼクティブを指します。CXOというポジションは1920年代に導入が始まり、1世紀を経た現在、CXO間の連携が重視される「C-Suite 3.0時代」に突入しました。慶應義塾大学大学院特任教授の岩本隆先生に、次世代の経営人材である「π型人材」の重要性と、CXOの役割について解説いただきました。(マスメディアン編集部)
筆者は、一般社団法人日本CHRO協会が2018年10月に設立されて以降、この協会の理事を務めている。一般社団法人日本CHRO協会は、2000年10月に設立された一般社団法人日本CFO協会、2020年4月に設立された一般社団法人日本CLO協会の姉妹団体である。

2023年10月に、これら3つの団体が連携をして『最高の経営を目指して!』というムックを出版した。このムックではC-Suite(Cスイート)とも呼ばれるコーポレート・エグゼクティブによる経営のあり方についてさまざまな観点から論じられており、筆者は「第5章世界標準経営へ!必要不可欠となる次世代経営人材(コーポレート・エグゼクティブ)の育み策」の執筆を担当した。C-Suiteやコーポレート・エグゼクティブはCXOという役職で呼ばれており、Xにはさまざまな言葉が入る。

図表に、経済産業省が、2024年1月に公表した「価値創造経営の推進に向けて」(※1)という討議資料の中で記載しているC-Suiteの進化を示す。
3C-Suiteの進化
図表.C-Suiteの進化
(出所:Kelly, E. (2014)“The C-Suite: Time for version 3.0”等から経済産業省作成)
C-Suiteは組織研究が始まった1920年頃に企業での導入が始まった(C-Suite 1.0)。1980年代に入ると、地域や事業の多角化に伴う経営の複雑性に対応するためCXO制の導入が始まった(C-Suite 2.0)。2010年代に入ると、CXO間の連携が重視されるようになり、さまざまなCXOが連携した経営チーム力が重要になってきた(C-Suite 3.0)。

C-Suite 3.0で重要なことは、CXOのXには人事(HR)、財務(F)、法務(L)、マーケティング(M)、テクノロジー(T)など各部門の言葉が入るが、CXOは「部門を統括する部門長」ではなく「経営者(経営チームの一員)」であるということである。そして、CXO同士が連携するということは、例えば、CMOがCTOと連携するには、CMOはマーケティング部門に関する活動を深く理解すると同時に、テクノロジー部門のことについてもよく理解した上で、経営者として横串を通した最適な判断をするということである。

C-Suite3.0時代の経営人材(CXO)になるには、例えば、CMOなら、マーケティングについての深い経験を積むことに加え、他の部門についても深く理解できるよう、何らかの横串を通すことができる経験を積むことが重要である。筆者はこれを「π型人材」と呼んでおり、複数の分野を深く理解すると同時に、横串を通せる人材がこれからの経営人材に求められる。

【CXOの役職の例】
略称 英語名称 日本語名称
CEO Chief Executive Officer 最高経営責任者
COO Chief Operating Officer 最高執行責任者
CHRO Chief Human Resources Officer 最高人事責任者
CLO Chief Legal Officer 最高法務責任者
CIO Chief Information Officer 最高情報責任者
CDO Chief Digital Officer 最高デジタル責任者
CDO Chief Data Officer 最高データ責任者
CMO Chief Marketing Officer 最高マーケティング責任者
CTO Chief Technology Officer 最高技術責任者
CMfgO Chief Manufacturing Officer 最高製造責任者
CSCO Chief Supply Chain Officer 最高サプライチェーン責任者

※1:経済産業省「価値創造経営の推進に向けて」(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/019_04_00.pdf)
【執筆者プロフィール】
岩本 隆先生お顔写真

岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。