パブリックアフェアーズ
岩本 隆 2024.07.17
- 中途採用
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マーケティングの重要な役割の1つに「市場創造」があるが、市場を創造するために政策と連携をする重要性がますます高まっている。市場が見えている中では企業はその市場に向けて競合他社との差を広げていく、つまり、競争優位性を高めていくことが重要であるが、市場が見えていない中では競合他社と競争をする以前に市場自体を創造する必要がある。特に現在は、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブなどの2050年目標が政策としても立てられており、これらの社会課題を解決するための市場を創造するには、政策との連携が必須となる。
パブリック(世の中)との関係はPR(Public Relations)と呼ばれるが、政治家や官僚等の政策関係者との関係はGR(Government Relations)と呼ばれており、マーケターが市場創造の取り組みをするにおいては、PRに加えてGRの活動も必要になる場合がある。GRは別の言葉では「ロビイング」とも言われるが、「パブリックアフェアーズ(Public Affairs)」とも言われており、パブリックアフェアーズという言葉は、1954年に米国で「Public Affairs Council」という団体が設立されたことがきっかけで広く使われるようになった。
GR活動では、企業が市場創造をするに当たって、政策提言を行い、その政策を通すことによって市場環境をつくる。日本において、その重要性は経済産業省も認識し、2014年に「ルール形成戦略室」という組織を立ち上げ、現在は、経済産業省イノベーション・環境局基準認証政策課がその活動を引き継いで、企業がGR活動で市場創造をするための政策的なサポートを行っている。図表に経済産業省が示す3つの能力を活用した市場創造のアプローチを示す。3つの能力とは、市場形成をデザインする「アジェンダ構想力」、アジェンダを達成する「社会課題解決力」、社会課題解決の価値を定義する「ルール形成力」としている。
パブリック(世の中)との関係はPR(Public Relations)と呼ばれるが、政治家や官僚等の政策関係者との関係はGR(Government Relations)と呼ばれており、マーケターが市場創造の取り組みをするにおいては、PRに加えてGRの活動も必要になる場合がある。GRは別の言葉では「ロビイング」とも言われるが、「パブリックアフェアーズ(Public Affairs)」とも言われており、パブリックアフェアーズという言葉は、1954年に米国で「Public Affairs Council」という団体が設立されたことがきっかけで広く使われるようになった。
GR活動では、企業が市場創造をするに当たって、政策提言を行い、その政策を通すことによって市場環境をつくる。日本において、その重要性は経済産業省も認識し、2014年に「ルール形成戦略室」という組織を立ち上げ、現在は、経済産業省イノベーション・環境局基準認証政策課がその活動を引き継いで、企業がGR活動で市場創造をするための政策的なサポートを行っている。図表に経済産業省が示す3つの能力を活用した市場創造のアプローチを示す。3つの能力とは、市場形成をデザインする「アジェンダ構想力」、アジェンダを達成する「社会課題解決力」、社会課題解決の価値を定義する「ルール形成力」としている。
パブリックアフェアーズという言葉は、日本では、筆者が理事を務める一般社団法人日本パブリックアフェアーズ協会が2019年2月に設立されたのを機に広がり始めた。パブリックアフェアーズは、GRやロビイングよりも広い意味で使われており、筆者は
と定義している。インターネットの発達もあってさまざまな情報が流通する時代となっており、GR活動では、企業の利益を前面に出して政策提言をすることは利益誘導と批判・批難されるリスクが伴う。そのため、GR活動をする際には、PR活動を並行して行うことも重要になっている。提言したい政策をPR活動で世の中に問いかける。そして、その政策に対するポジティブな世論が形成されると、その政策は世の中のための政策として認知されるため、GR活動はスムーズに進む。そしてパブリックアフェアーズのニーズの高まりにより、PRファームがGRのビジネスに参入するケースが世界的に増えている。
マーケティングとしてのパブリックアフェアーズの重要性は今後益々高まることが予想されるため、パブリックアフェアーズを実行する体制やケイパビリティを社内に整える検討をすることをお勧めする。
※1:経済産業省「市場形成力指標」(https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/katsuyo/shijyokeisei/index.html)
パブリックアフェアーズ=PR+GR
マーケティングとしてのパブリックアフェアーズの重要性は今後益々高まることが予想されるため、パブリックアフェアーズを実行する体制やケイパビリティを社内に整える検討をすることをお勧めする。
※1:経済産業省「市場形成力指標」(https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/katsuyo/shijyokeisei/index.html)
- 【執筆者プロフィール】
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岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。