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採用ブランドを高めるための人的資本開示

岩本 隆 2024.06.19

  • 人的資本
  • 中途採用
採用ブランドを高めるための人的資本開示
人的資本開示が国内外で進んでいます。日本では資本市場のみならず、労働市場に向けた開示のニーズが高いそうです。人的資本開示を通じた採用ブランドの構築には、適切な開示をすること、そしてすべての従業員が自社の人的資本経営についての物語(ナラティブ)を語れることが重要だといいます。慶應義塾大学大学院 特任教授の岩本隆先生に解説いただきました。(マスメディアン編集部)
人的資本経営の状態を外部に開示する人的資本開示が世界的に進んでいる。日本では、2023年1月に「企業内容等の開示に関する内閣府令」等が改正され、2023年3月31日以降に終了する事業年度に係る有価証券報告書より「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、その中で人的資本、多様性に関する開示することが求められるようになった。
有価証券報告書は、株式を発行する上場企業などが開示する企業情報で法定開示すべき報告書であるが、日本では、法定開示以外に任意開示で人的資本開示する企業が増えている。統合報告書やサステナビリティレポートの中で人的資本開示をする企業が多いが、昨今では、人的資本開示に特化した人的資本レポートを発行する企業も増えてきた。人的資本報告のガイドラインの国際規格であるISO 30414に準拠した人的資本レポートの開示も進んでいる。図表に2024年5月末時点の日本のISO 30414認証取得企業、日本のISO 30414保証取得企業を示す。日本では、株式会社HCプロデュースがISO 30414認証機関に、BSIグループジャパン株式会社がISO 30414保証機関となっている。
日本のISO 30414認証取得企業、日本のISO 30414保証取得企業
図表. 日本のISO 30414認証取得企業、日本のISO 30414保証取得企業
資本市場に焦点を当てて人的資本開示を行う企業が多いが、実は、日本では、労働市場に向けた人的資本開示のニーズが高く、それに気づいている企業は労働市場に向けた人的資本開示、つまり、自社の採用ブランドを高めるための人的資本開示を強化している。労働市場に向けて自社の人的資本経営の内容を発信するのであるが、具体的には、個々の従業員が活躍や成長ができる環境が整っていることや、さまざまな魅力的なキャリアの可能性があることなどを定量的なデータも活用しながら開示をする。採用ブランドを高める人的資本開示をするには、前提として、労働市場の人材が魅力を感じる人的資本経営ができていることが必要であるが、逆に、人材を惹きつけられる人的資本経営に取り組むことが重要であるということである。
更に重要なことは、全ての従業員が、自社の人的資本経営の状態について、労働市場に対してナラティブ(Narrative)を語れることである。ナラティブは物語を意味するが、同じく物語を意味するストーリーは語り手の一方的な物語であるのに対し、ナラティブは、受け手が“腹落ち”する物語である。つまり、自社の人的資本経営の状態について、外部の人材が腹落ちする物語をいかに語れるかが採用ブランドを高めるためには重要である。