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キャリアマップ

岩本 隆 2024.05.15

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キャリアマップ
ギャラップ社が定義した「ウェルビーイングの5つの構成要素」のうち、もっとも大きく寄与するのが「キャリアウェルビーイング」であるという研究結果が多く発表されています。キャリアウェルビーイングを高めるためには「キャリアマップ」の活用が求められます。こうした状況について、慶應義塾大学の岩本隆特任教授に解説いただきました。(マスメディアン編集部)
この数年、特にコロナ禍に入ってから、キャリアウェルビーイングに力を入れる企業が増えてきた。ウェルビーイングは幸福度のような意味であるため、従業員のキャリアの幸福度を高める取り組みを強化しているともいえる。

ギャラップ社が150カ国以上で実施した研究によって、人生を形づくる普遍的で相互に連動し合う5つの要素が明らかになり、ギャラップ社は、2011年に出版した書籍『Wellbeing: The Five Essential Elements』(Tom Rath、Jim Harter著)において、ウェルビーイングは以下の5つの要素で構成されることを発表した。

(1) Career Well-being(キャリアウェルビーイング)
(2) Social Well-being(ソーシャルウェルビーイング)
(3) Financial Well-being(フィナンシャルウェルビーイング)
(4) Physical Well-being(フィジカルウェルビーイング)
(5) Community Well-being(コミュニティウェルビーイング)


ウェルビーイングの定義はさまざまな企業・団体から提唱されてはいるが、日本では、ギャラップ社のこの定義に則って取り組む企業が多く、筆者もさまざまな日本企業とこれら5つの要素について議論をしている。

これら5つの構成要素の中でも、最も幸福度に寄与するのがキャリアウェルビーイングであるという研究結果も多く発表されており、企業経営における従業員のキャリアウェルビーイングの優先順位が高まっている。従業員のキャリアの幸福度を高める言葉としては、キャリアウェルビーイングの他に、「働きがい改革」、「キャリア自律」、「自律的なキャリア形成」などの言葉が日本企業でよく使われている。

キャリアウェルビーイングを高めるためには、従業員がどのようなキャリアを歩める可能性があるのかを示すためにキャリアマップをつくることが求められる。厚生労働省では、図表1に示すように、キャリアマップを用いて、自社の業務内容に応じた実践的な人材育成を行うことをキャリア形成の指針としており、事務系職種と16の業種(1. エステティック業、2. 警備業、3. 葬祭業、4. ディスプレイ業、5. 外食産業、6. フィットネス産業、7. 卸売業、8. 在宅介護業、9. スーパーマーケット業、10. 電気通信工事業、11. ホテル業、12. ビルメンテナンス業、13. アパレル業、14. ねじ製造業、15. 旅館業、16. ウェブ・コンテンツ制作業) について、「職業能力評価シート」、「キャリアマップ」および「導入・活用マニュアル」を整備している。
厚生労働省による「職業能力評価基準(キャリアマップ)」を核とした人材育成システムのイメージ図
図表1. キャリアマップを活用した人材育成システム(出所:厚生労働省)
 昨今は、人工知能や生成AIなどビッグデータを扱う技術の進化により、キャリアマップにおいて大量で多様なデータを活用することが可能になってきた。そのため、より個別化、より高精細化されたキャリア設計ができるようになってきている。

今後、企業を超えた業界内のキャリアマップや、業界の垣根を超えたキャリアマップが作成できれば、就職・転職も含めた個々人のキャリア設計が可能になる。高度化されたキャリアマップ等AI・生成AI等の活用によって、社会全体での人材の最適配置を体系的に進めることができるようになることが期待される。
【執筆者プロフィール】
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岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。