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【第3回】テレワークで失敗しないために必要な3つのアクション─成功事例から考える働き方改革

越川慎司 2021.01.20

  • 働き方改革
【第3回】テレワークで失敗しないために必要な3つのアクション─成功事例から考える働き方改革
2021年1月、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、二度目の緊急事態宣言が発令されました。対策の一環として、政府はリモートワーク・在宅勤務を推奨していますが、導入を検討している、導入したがうまくいかない、など現場からはさまざまな声が上がっています。700社以上の働き方改革を支援してきたクロスリバー代表取締役 越川慎司さんによると、生産性高くテレワークを行うためには、中間管理職が取るべき3つのアクションがあるといいます。具体的に解説していただきました。(マスメディアン編集部)

変化に対応するために働き方の選択肢を増やす

新型コロナウイルスの影響で、仕方なくテレワークをしている企業が増えています。緊急事態宣言に合わせてテレワークを一時的に導入したり、職場内で密をつくらないように週に2~3回のテレワークを余儀なくされたりしている企業は多いでしょう。

しかし、テレワークは一時的なものではありません。場所に縛られず業務を進めることは、BCP(事業継続)の観点でも必要です。また、少子高齢化による労働人口の減少や、介護社員の増加を踏まえても、テレワークのような柔軟な働き方は必要になってきます。入社希望者を増やすために、今後はワーケーションや副業といった働き方を採用する企業も増えてくるでしょう。激しい変化に対応するには、さまざまな働き方の選択肢をもち、状況に応じて使い分けていくことが求められます。テレワークという働き方で仕事が回せるのか、テレワークで生産性が高められるのかといった行動実験を今まさにしている状態です。一時的ではなく、永続的な働き方の選択肢としてテレワークを活用できるかどうか検証をしてください。

管理職が求められる3つのアクション

テレワークをはじめとした働き方改革でキーマンとなるのが中間管理職です。もちろん経営陣の古い考えを変える必要はありますが、これまで700社以上の支援をしてきたなかで実行のキーとなるのはマネージャー、課長クラスでした。会社が人事制度を変えたり最新のITツールを導入したりしても、現場に浸透しなければ意味がありません。プレーヤーとして成功をした人が管理職に登用されるケースが多く、徹夜作業をして苦労した人が中間管理職になることもあります。成功体験があると行動を変えにくくなる傾向にありますから、中間管理職、特にマネージャーが抵抗勢力となってテレワークや働き方改革を阻止しようとすることがあります。

そこで、管理職の意識を変えるのではなく、行動を変えてください。意識が変わるのを待っていたらゆでガエルになります。先に半強制で行動を変えて、結果として意識が変わった自分に気付くのです。テレワークで、目の前にいない部下を管理するのは難しいですが、管理方法を変えればうまく対応できます。

これまで約700社のテレワークを支援し、そこで得た知見を427社に「管理者向けトレーニング」として提供しました。述べ2.9万人のトレーニング受講者の行動を変えました。参加者の満足度は91%、行動改革を継続する人は70%以上となりました。この管理者トレーニングで教えている「3つのアクション」について説明します。

アクション1:まず心理的安全性を確保せよ

腹を割って話しても安全であるという心理状態を「心理的安全性」と呼びます。結論から申し上げると、この「心理的安全性」があるチームは出勤してもテレワークしても成果を出し続けます。管理者として、何でも話せる雰囲気と関係性をつくってください。特にテレワークでは、「心理的安全性」がないと、無駄な作業をしてしまったり、精神疾患になる人が増えたりしますので、何でも言える関係性をつくることが最優先です。そこで、「冒頭2分の雑談」をお勧めします。仕事とは関係ないカジュアルな会話をすれば、空気が温まり活発に意見交換ができます。

クライアント企業25社で調査した結果、冒頭2分の雑談を入れた会議は、そうでない会議に比べて、発言数は1.7倍、発言社数は1.9倍、会議が早く終わる可能性は45%増加しました。雑談によって心理的安全性を確保すれば、会議時間や資料作成時間も減り、生産性が上がります。

「過剰な気遣い」や「忖度」が時間を費やしていることもわかりました。例えば「必要そう」に思われる資料は96%が使われていなかったのです。この「~そう」という考えは、往々にして上司への過剰な気遣いから生まれます。上司と部下のコミュニケーションが十分取れていて、互いに「心理的安全性」を感じられれば、資料の要否を事前に確かめられて「必要そうな書類」はなくなるはずです。

アクション2:対話とセルフマネジメント力を強化せよ

テレワークによって会話が減ると、孤立や閉塞を感じます。そこで、会議を減らして会話、特に上司と部下の対話の時間を増やしましょう。チームの定例会議は60分ではなく45分を基本に行い、空いた時間で部下と対話してください。コミュニケーション頻度が高まれば、心理的安全性が確保されやすくなります。

また、業務の進捗を見せる化するように心がけてください。見える化ではなく、自ら率先して進捗を見せていく「見せる化」です。始業や終業の際にチームメンバー全員にタスクとその進捗を軽く発言させるだけで、メンバーの自制心を高め、周囲の「サボっているのではないか」という疑念から逃れることもできます。確かに社員の14%は在宅勤務でサボっています(当社による独自調査)。しかし、そのうち94%は出社していてもサボっていたのです。問題は働く場所ではなく、職責、適切な目標設定と評価制度です。リーダーは、細かく管理することを避け、成長の機会を提供するタスクを与え、正しく評価する義務があります。メンバーに重要なプロジェクトを任せ、主要な組織プロセスに関与させることで、メンバーの貢献を評価し、より強固な信頼関係を築くことができます。

アクション3:情報と感情を共有せよ

テレワーク中はガラス張りの透明な会議室で仕事しているのと同じです。チャットの会話や作成中の資料はチームメンバーに見せる状態にしましょう。最も効果がでているのは「フィードフォワード」です。資料作成の際に、進捗20%で提出相手に「イメージあっていますか?」と意見を求めるのです。これを定着させたことにより「差し戻し」が74%も減り、残業削減につながったというケースもあります。

そして、情報よりも共有すべきは感情です。「さびしい」「認められたい」と思っているテレワーカーは多いのです。そういった感情を吐き出すことができる雰囲気をつくり、お互いに認め合いましょう。自分の弱みをさらけ出すリーダーが結果的に成果を出し続けます。リーダー自らが弱みを見せることで、メンバーたちは感情を出しやすくなり、一体感をもつことができます。また、オンライン会議では「いいね!」という絵文字や、「88888(パチパチパチ=拍手)」を投稿して発言者を認めてあげてください。かならず盛り上がり、士気が高まります。

感情共有とチームの生産性との間には、相関関係があります。当社がチームの感情と生産性の関係について調査した結果、怒りのような負の感情のレベルが高いチームは、肯定的なチームよりも生産性が低いというということがわかりました。

このように、コミュニケーションの仕方を少し変えるだけでチーム力はアップします。一人で複雑な問題を解決することはできませんから、今回の3アクションを実行し、テレワークであってもチーム力を高めてください。テレワークでも出勤しても生産性を高めることが求められるのですから。
【執筆者プロフィール】
越川慎司(こしかわしんじ)氏

越川慎司(こしかわしんじ)氏
株式会社クロスリバー 社長
株式会社キャスター 事業責任者

国内および外資系通信会社に勤務、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者などを経て独立。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・複業・テレワークを実践し、支援した企業は700社以上。著書『トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など15冊。講演や講座、メディア出演多数。