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【前編】デザイン会社が抱える人事課題:評価制度と採用基準について─アートアンドサイエンス株式会社【全3回】

岡村 忠征 2021.04.05

  • 採用ノウハウ
【前編】デザイン会社が抱える人事課題:評価制度と採用基準について─アートアンドサイエンス株式会社【全3回】
クリエイティブ職種の成果は売り上げに換算しづらく、定量的な評価が難しいと言われています。そのようななか、ブランディングソリューションを提供するアートアンドサイエンスでは、一人ひとりのスキルや志向に合わせた「人起点のジョブディスクリプション」を作成し、独自の人事評価制度を構築しています。同社の評価制度のポイントは、採用・評価・育成を一体のものとして捉え、Can(今できること)・Must(会社が任せたいこと)・Will(やりたいこと)の3要素の好循環を目指すこと。同社が抱えていた人事課題と、その解決への道について、アートアンドサイエンス 代表取締役社長 岡村忠征さんにお話を伺いました。(マスメディアン編集部)

企業データ

【企業名】アートアンドサイエンス株式会社
【代表者】代表取締役 岡村忠征
【設立日】2011年1月
【社員数】12名(2020年12月末時点)
【事業内容】
ブランディングデザイン会社
企業・地域・教育機関へのブランディングソリューションを提供
 

組織・採用・評価面の課題

──組織の課題:社員一人ひとりが会社に与えるプラスの影響の最大化
当社のような10名程度のデザイン会社では、社員一人ひとりが会社組織やアウトプットに対して与える影響が非常に大きくなります。即戦力となるメンバーの採用や社員の成長によるプラスの影響は最大化し、採用のミスマッチや退職によるマイナスの影響は最小限に留めたいものです。どうすれば当社にマッチする人材を採用できるか、在籍している社員にモチベーション高く働いてもらえるか、試行錯誤を重ねてきました。

その結果、現在は、採用・評価・育成を一体のものと考え、独自の採用基準・評価基準を設定し、運用しています。

──採用面での課題:スキル面よりもパーソナリティで採用しがちなこと
採用面での課題の一つは、採用軸のぶれでした。現在のように採用基準を明文化していなかった頃は、目的に合致しない人を採用してしまうことがありました。例えば、「クライアントとの打ち合わせから1人で任せられるデザイナー」を採用したいと思って募集をかけたのに、実際に採用したのは「スキルはアシスタントレベルだが、面接で話してみたらとても向上心があり好印象だったデザイナー」だった、などという場合ですね。どんなにパーソナリティが好印象だったとしても、任せたい仕事があって採用をしているのですから、スキルがミスマッチではお互いに不幸です。

また、マルチな人材を採用しがちで、専門性のある尖った人材を採用できないことも課題でした。Webディレクターやデザイナーは職域が非常に広く、個人の持つスキルはさまざまです。「狭い範囲の深いスキルを持つ人材」と「広い範囲の浅いスキルを持つ人材」、どちらを採用するべきか。本来は採用の目的によって決めるべきですが、「さまざまな業務を任せられそう」という理由から、マルチなスキルを持つ人材を採用してしまう傾向がありました。

──評価面での課題:クリエイティブ職種は定量評価ができないこと
クリエイティブ職種の人事評価の課題は、一人ひとりの業務範囲を明確にできず、定量評価ができないことです。制作はチーム単位で行いますし、同じデザイナーでも、チーム構成や案件の内容によって担当する業務範囲は変わります。例えば、デザイナーであってもコピーライターと一緒にコピーのアイデア出しをすることもありますよね。職種で切り分けてしまっては実態に即さなくなってしまいますし、柔軟に評価しようとしても、「評価基準が人によって違う」と社員が不公平感を抱いてしまう場合もあります。

人事課題の解決方法としてのジョブディスクリプション

──人事課題を解決する方法:人事評価制度を明確にするためにジョブディスクリプションを利用することに
社員が納得できる評価をするには、各社員の責任領域を明確化し、人事評価制度を透明化する必要があります。そのために、ジョブディスクリプションを利用し、人事制度をつくり直すことにしました。現在のような「人起点のジョブディスクリプション」をつくるまでにも紆余曲折がありました。

最初は、一般的なジョブディスクリプションをつくりました。欧米企業で運用されているような、会社全体の業務内容を職務内容へと分解し、職種を辞書的に定義していく形式です。『デザイン組織のつくりかた デザイン思考を駆動させるインハウスチームの構築&運用ガイド』(ピーター・メルホルツ、クリスティン・スキナー著、安藤貴子訳、長谷川敦士監修、ビー・エヌ・エヌ新社、2017年)などを参考にしてつくってみたはいいものの、実際に運用してみると、うまくいきませんでした。業務が細分化されすぎて、むしろうまく動けなくなってしまったのです。大規模な企業であれば役割分担されている方が円滑に運用できるのでしょうが、当社のような小規模の企業では業務内容がフレキシブルにならざるを得ません。

また、デザイナーとディレクターが2人組で仕事をする場合を考えてみましょう。若いデザイナーは1年で大きく成長しますので、一緒に働くディレクターのするべき仕事も、会社ができることも日に日に変わっていきます。それほど社員一人が会社に与える影響が大きいので、職務起点のジョブディスクリプションではなかなかうまく対応できませんでした。

ジョブディスクリプションをつくる目的は、あくまで、社員が能力を発揮できる環境をつくることです。そうであれば、人を起点にすべきではないかと考え、一からつくり直すことにしました。そこでできたのが、独自の「人起点のジョブディスクリプション」です。現在もブラッシュアップを重ねていますが、やはり、個人のスキルや能力に合わせた評価基準のほうが、能力や仕事ぶりをより適切に評価できます。サッカーの戦術論で例えるなら、チームと戦術をつくるにあたって、「システムに合わせて選手を集める」方法と「選手に合わせてシステムを組み立てる」方法が考えられますよね。私たちは後者、「選手に合わせてシステムを組み立てる」方法を選びました。

──人起点のジョブディスクリプションは「Can(今できること)」「Must(会社が任せたいこと)」「Will(やりたいこと)」の3つの要素で考える
それでは、ジョブディスクリプションをつくる具体的な手順をご紹介します。繰り返しになりますが、私たちは、採用・評価・育成を一体のものとして捉えています。この3つが噛み合うことで、社員も会社も成長していけます。

そのため、どの場面でも一貫して足がかりとするのが、「Can」「Must」「Will」の3要素です。Canは「今できること」、Mustは「会社が任せたい仕事」、Willは「やりたいこと・できるようになりたいこと」です。Willは、会社視点では「その社員に提供する学びや成長の機会」になります。このバランスが取れているほど、仕事のやりがいは大きくなると言われています。
目指すべきは、Can・Must・Willの好循環です。採用候補者も、社員も、会社も、すべてに共通です。まず、今できること(Can)を着実に行いながら、仕事の中で機会をつかんで、担当できる領域(Must)を広げていき、知見が広がることで次にチャレンジしたいこと(Will)を見つけて挑戦し、できること(Can)を増やしていく……というスパイラルです。

このスパイラルが実現できるのは、会社と社員がWin-Winの関係を築けているときです。採用にあたっては、採用候補者の将来なりたい姿(Will)や、会社の成長のビジョンまで話し合い、このスパイラルを一緒に目指そうと約束することが、企業理解と将来の離職防止につながります。

※2020年11月に取材した内容を掲載しています。
【執筆者プロフィール】
岡村 忠征(おかむら・ただまさ)氏

岡村 忠征(おかむら ただまさ)氏
アート&サイエンス株式会社 代表取締役
ゲットアップ&デザイン株式会社 代表取締役

2011年にブランディングデザインファームのアート&サイエンス株式会社設立。コンサルティングからクリエイティブまでブランディングプロジェクトをトータルプロデュース。企業、大学、地域のブランディングを数多く手がける。特に近年は、新規事業のコンセプトメイキングや既存事業のコンセプトリデザインを支援するプロジェクトに従事。2020年に企業コミュニケーション専門のデザインプロダクションとしてゲットアップ&デザイン株式会社設立。
グロービス経営大学院大学経営研究科修了(MBA)/JAGDA正会員/日本マーケティング学会会員

art & SCIENCE Inc.
Get Up & Design Inc.