マーケティング・営業戦略・広報・宣伝・クリエイティブ職専門の採用支援はマスメディアン【宣伝会議グループ】

デジタルガバナンス・コード3.0

岩本 隆 2025.04.02

  • 業界動向
  • 評価制度
  • 人事
デジタルガバナンス・コード3.0
DXが企業経営に不可欠となる中、マーケティング領域でも戦略的なデジタル活用が求められています。マーケティングDXの成功に向けて導入すべき「デジタルガバナンス・コード3.0」は戦略策定をはじめ、組織づくりや人材育成においても指標とすることが可能です。慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授に解説いただきました。(マスメディアン編集部)
「デジタルマーケティング」や「マーケティングDX」などの言葉が広く使われるようになったように、マーケティング領域ではデジタルテクノロジーの活用が必須化してきている。そのため、マーケティング領域でDXを推進する上において「デジタルガバナンス・コード」を参考にすることが有用であり、本稿では、デジタルガバナンス・コードの最新動向を紹介する。

ガバナンス・コード(Governance code)とは、組織を統治する指針や行動原則を指し、企業統治に対しては「コーポレートガバナンス・コード」が2015年6月に金融庁と東京証券取引所によって制定され、全上場企業に適用された。そして、企業がDXを推進するためのガバナンス・コードがデジタルガバナンス・コードであり、2020年11月に、企業のDXに関する自主的取り組みを促すために経済産業省によって取りまとめられた。2022年9月には、デジタル人材の育成・確保をはじめとした時勢の変化に対応するため「デジタルガバナンス・コード2.0」に改訂され、2024年6月に「企業価値向上に向けたデジタル・ガバナンス検討会」の議論を踏まえて必要な改訂を施した「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」が取りまとめられた(※1)。

デジタルガバナンス・コード3.0は以下の5つの柱で構成されている。

●柱1:経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
●柱2:DX戦略の策定
●柱3:DX戦略の推進
…柱3-1.組織づくり
…柱3-2.デジタル人材の育成・確保
…柱3-3.ITシステム・サイバーセキュリティ
●柱4:成果指標の設定・DX戦略の見直し
●柱5:ステークホルダーとの対話

これら5つの柱を以下の3つの視点でとらえる。

●視点1:経営ビジョンとDX戦略の連動(柱1と柱2・3が連動しているか)
●視点2:As is-To beギャップの定量把握・見直し(柱1~3と柱4とがつながり、経営としてのPDCAサイクルが回っているか)
●視点3:企業文化への定着(柱1~4が企業文化として定着できていて、柱5につなげられているか、つまり、ステークホルダーにとって納得性の高い対話ができているか)

図表にデジタルガバナンス・コード3.0における5つの柱と3つの視点の関係を示す。
デジタルガバナンス・コード3.0における5つの柱と3つの視点の関係
図表.デジタルガバナンス・コード3.0における5つの柱と3つの視点の関係
(出所:デジタルガバナンス・コード3.0を元に作成)
デジタルガバナンス・コード3.0をマーケティング領域に当てはめて、経営ビジョンに連動したマーケティングビジョン、マーケティングのDX戦略の策定、DX戦略を推進するための体制・人材・システム、成果指標の設定とPDCAサイクルを回すことによる恒常的な見直し、ステークホルダーとの対話について、自社がどのような状況にあるのかを3つの視点で見つめることをお勧めする。

※1:経済産業省「デジタルガバナンス・コード」経済産業省Webサイト(2024年/https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html)
【執筆者プロフィール】
岩本 隆先生お顔写真

岩本 隆(いわもと たかし)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授、2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。ICT CONNECT 21理事、日本CHRO協会理事、日本パブリックアフェアーズ協会理事、SDGs Innovation HUB理事、デジタル田園都市国家構想応援団理事、オープンバッジ・ネットワーク理事、ISO/TC 260国内審議委員会副委員長などを兼任。