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大手広告企業の人的資本投資─従業員一人当たりの投資金額・時間は?

マスメディアン編集部 2023.08.23

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大手広告企業の人的資本投資─従業員一人当たりの投資金額・時間は?
人的資本の基本的な考え方は、人材を資源ではなく資本として捉え、その価値を引き出すために投資することにあります。そこで今回は、国内外の大手広告会社が、どのような金額・時間をかけて、どんな目的で人材に投資をしているのかを紹介します。

電通

1901年設立、従業員数6万4832名(連結・2021年12月時点)
 

投資金額と時間(2021年実績)

従業員一人当たり教育投資額:9万6748円
従業員一人当たり研修時間数:33.0時間
 

投資の目的

・究極の目標はリプレセンテーション(集団・組織の中にジェンダーや人種などの代表が存在することやその割合)の引き上げ。従業員に投資することで、多様な人材を惹きつけてつなぎ留め、組織の人員構成に影響を及ぼすことができる
・成長し成功するためのサポートとリソースを従業員が確実に得られるようにするため、インクルージョンとエクイティの基盤を築くことに注力している
・電通グループの総合的な「キャリア・フレームワーク」により、従業員は、dentsu University(電通インターナショナルが運営するオンライン学習プラットフォーム)やキャリアデザイン促進プログラム、リーダーシッププログラムを通じ、キャリアパス計画・キャリア開発計画を立て、研修の機会が得られる
 
参照:電通グループ 統合レポート2022「ESGデータサマリー」
https://www.group.dentsu.com/jp/sustainability/reports/2022/corporate_data/esg.html
電通「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)レポート2022」p.20
https://www.group.dentsu.com/jp/news/pdf/diversity-equity-and-inclusion-report-2022.pdf
 

博報堂DYホールディングス

1895年設立、従業員数2万6840名(連結・2022年6月30日時点)
 

投資金額と時間(2022年3月期実績)

人財育成のための教育投資額:23.2億円
社員一人当たりの金額:27.7万円
※対象社:博報堂、大広、読売広告社、アイレップ、博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム
 

投資の目的

・サステナビリティゴール「生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現」の実現に向けた重要課題の一つとして、「高度なクリエイティビティを発揮できる人財マネジメント(投資・育成・環境整備)」を設定。「粒ちがい人財」を育成するとともに、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進する
・サステナブル経営と中長期的な成長を支える最大の要素は「人財」であり、「未来をつくるクリエイティビティ」を発揮する人財の力で、ビジネス成果と「生活者にとって価値ある市場」の創出を目指す

参照:博報堂「統合レポート2022 マテリアリティ」
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/csr/ir/online/2022/04/materiality.html
博報堂「ESGデータ集」
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/csr/esg/summary/
 

サイバーエージェント

1998年設立、従業員数6472名(連結・2022年9月末時点)
 

投資金額と時間

記載なし
 

投資の目的

・サイバーエージェントの競争力は人的資本にある。「素晴らしい人事アイデアは、優れた事業アイデアよりも価値が高い」という藤田代表の考えにもあるように、社員がモチベーション高く挑戦し、生き生きと働くことを経営において重要視する

参照:サイバーエージェント 統合報告書「CyberAgent Way 2022」p.19
https://d2utiq8et4vl56.cloudfront.net/files/user/pdf/ir/library/annual/cyberagent_IR_2022_jpn.pdf
 

WPP

1985年設立、従業員数11万5000名(2022年時点)
 

投資金額(2022年)

従業員の学習と成長の機会への投資金額:3130万ポンド(49億4290万円 ※1)
一人当たり投資金額(編集部算出):272.2ポンド(4万2986円)
 

投資の目的

・才能ある従業員が創造性の源であると考え、非常に誇りを持っている。業界で最も優れた人材を引き付け、関与させ、育成するために大胆な取り組みを行う

参照:WPP「Sustainability Report 2022」
https://www.wpp.com/sustainability/sustainability-report-2022
WPP「Annual Report 2022」
https://www.wpp.com/en/investors/annual-report-2022
 

Publicis Groupe

1926年設立、従業員数9万8022名(2022年12月時点)
 

投資時間(2022年)

・トレーニング実施時間:174万2339時間
・一人当たりトレーニング実施時間:約21時間
・従業員の89%が従業員向けのトレーニングプログラムを受講
・24.6%がコーディング、プログラミング、ソフトウェア、エンジニアリング、アルゴリズムに関連するトレーニングを受講
・21.6%が専門能力開発、自己啓発、ソフトスキルに関連するトレーニングを受講
・19%がビジネスのノウハウ、ビジネス感覚に関連するトレーニングを受講
・10%がインテグレーション、社内文化、手順に関連するトレーニングを受講
・6.5%が戦略、コンサルティングに関連するトレーニングを受講
 

投資の目的

・「Viva La Difference!(多様性万歳)」をモットーとし、すべての従業員に対して社内に自分の居場所があることを知らせる。魅力的な職業上の機会を提供し、誰もが意欲を育めるようにする。機会均等の概念を非常に重視し、従業員にさまざまなプロジェクトに参加し、職業生活を通じて能力を向上させる機会を提供する

参照:Publicis Groupe「DOCUMENT D’ENREGISTREMENT UNIVERSEL 2022」p.175
https://documents.publicisgroupe.com/urd2022/PBS_PUBLICIS_2022_URD_FR_MEL_23_04_26.pdf?v2
Publicis Groupe「Talents」
https://rse2020.publicisgroupe.com/en/nos-talents
 

アクセンチュア

1989年設立、従業員数73万8000名(2022年時点)
 

投資金額と時間(2022年)

・継続的な学習と専門能力開発への投資金額:11億ドル(1434億7300万円 ※2)
・トレーニング時間:4000万時間以上(前年比27%増加)
・従業員一人当たり投資金額(編集部算出):1490ドル(19万4408円)
 

投資の目的

・自社を「才能とイノベーションにより主導される組織」とし、従業員はテクノロジーと人間の創意工夫の約束を実現するために世界中で協力する
・従業員に投資し、配慮、思いやり、学習、スキルの向上、キャリア向上のための継続的な機会をもって従業員をサポートする

参照:Accenture「360 Value Report 2022」p.44
https://www.accenture.com/content/dam/accenture/final/corporate/corporate-initiatives/sustainability/document/360-Value-Report-2022.pdf
 

Havas

1835年設立、従業員数2万2018名(2022年時点)
 

投資時間(2022年)

総研修時間:18万2130時間
トレーニング セッションを受けた従員の数:1万7226 名(全従業員の78%)
一人当たり研修時間(編集部算出):10.57時間
 

投資の目的

・自社を専門分野のリーダーにするため、「環境」「人材」「有意義なコミュニケーション」を独自のサステナビリティ戦略「Havas Impact+」の3つの中心領域とする
・目標は、多様な意見や視点が奨励され尊重され、すべての従業員がキャリア開発において平等にサポートされる文化をつくり出すこと

参照:Havas「CSR REPORT 2022」p.3、12、13
https://havaspositiveimpact.fr/wp-content/uploads/2023/06/2022-csr-report.pdf
 

おわりに

・人材への投資は、社会と企業のサステナビリティの向上、特にダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの一環として位置づけている企業が多い
・上記には記載していないが、インターパブリックグループでは「反差別に関する教育時間について」のみ開示していた
・厚生労働省の「人的資本可視化指針」では、人的資本の可視化にあたっては、経営者の「人的資本への投資についての経営者の明確な認識・ビジョン」が必要だとされている
・自社の事業の持続性を高めるために必要な人材への投資がどんなものか、事例を通して考えていくとよい


※1:2022年の平均為替レートより、1ポンド157.92円として算出(参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場情報 前年の年末・年間平均」http://www.murc-kawasesouba.jp/fx/year_average.php)
※2:2022年の平均為替レートより、1ドル130.43円として算出(参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場情報 前年の年末・年間平均」http://www.murc-kawasesouba.jp/fx/year_average.php)