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【第2回】多様な働き方の実現が、多様な人材の採用につながる─広告業界のリモートワーク

マスメディアン編集部 2022.09.21

  • 働き方改革
【第2回】多様な働き方の実現が、多様な人材の採用につながる─広告業界のリモートワーク
リモートワークがほとんど常態化した、2022年現在。リモートワークのメリット・デメリットについての認識や求められるポイントにも一部変化が起こっています。広告業界の企業はどのように対処してきたか、マスメディアンのコンサルタント・荒川が事例を交えながら解説します。
リモートワークは2020年以降、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、多くの企業で取り入れられました。ほとんど常態化した2022年現在、リモートワークのメリット・デメリットについての認識にも一部変化がありました。以下、転職・採用という観点から見ていきます。

採用面での最大のメリットは、転職希望者にとってのインセンティブになること。ただし、昨年までは「リモートワークが可能かどうか」、今年は「どの程度柔軟な働き方が可能か」という観点に変化しています。リモートワークができることは前提として、出社・在宅の頻度を自由に決められる、リモートワーク手当の支給があるなど、柔軟な選択肢や手厚いサポートの提供が魅力づけのポイントとなっています。

デメリットとしてよく挙がるのが、採用後のオンボーディングの難易度が高まったこと、離職率が上がってしまったこと、メンタルヘルスの不調が出がちであること、の3点です。今回は、これらのデメリットを改善するための工夫について、この1年ほどで広告業界各社が実践してきた事例を交えてご紹介します。
 

【1】オンボーディングへの注力

オンボーディングとは、新卒・中途を問わず、新たに採用した人材の受け入れから組織への定着までのステップを指します。入社直後の研修のみならず、各部門への配属後、ある程度自立して仕事ができるようになるまでの期間が含まれます。早期離職を予防し、長く活躍する人材に育てるため、業務や企業文化について丁寧に教えつつ、職場での人間関係を築く手助けをすることで、会社への信頼感・エンゲージメントを高めることが目的です。

こうした目的をリモートで達成するべく、研修制度を改善した企業は多く見られました。広告業界の近況として、未経験者の採用が増加している一方、研修担当者は週5日在宅勤務中というケースも増えており、リモートでの研修を充実させることはますます重要となります。リモートでの研修をよりブラッシュアップしながら、研修の内容によって新入社員・研修担当者の双方が出社するなど、柔軟な対応が必要となります。

リモートでの研修における工夫としては、業務についての研修はもちろん、業務をするうえでの自社ならではのルールについても明文化して教えている例がありました。メール、チャットをはじめとしたオンラインコミュニケーションツールは、どのような場面で使い分けているか? 会議室の予約は、いつ・どのような手段やフローで行うのか? など…。出社していればその場にいる誰かに教えてもらえたことを、体系立てて整理しておくことで、リモートでも予め教えられるようにしています。
 

【2】離職率改善のためのコミュニケーション活性化

離職率が上がってしまう原因はその多くが複合的なものです。しかし、このリモートワークの状況下では、コミュニケーションの減少による社員エンゲージメントの低下は要因のひとつであると考えられます。その対策として、2020年以降、オンラインコミュニケーションツールの導入が一層進みました。

広告業界、特にデジタル領域に強い企業や大手企業では、コロナ禍前からオンラインでのコミュニケーションが活発でした。2020年以降は中小企業でも日常的な部署内のコミュニケーションのため、SlackやChatworkなどのツールを導入するケースが増えました。それらが定着した2022年現在は、会社全体のコミュニケーションの活性化を図るため、部署を跨いだ社員同士の雑談の機会を週1回オンラインでつくるなど、企業は工夫を続けています。

なお、このリモートワークの定着を機に、小さなオフィスに移転した企業の話もしばしば耳にします。全社員は出社できないケースもあるため、対面でのコミュニケーションも重視するある企業では、社内外との対面でのコミュニケーションを取りたいときにオフィスを利用するよう促しているそうです。
 

【3】労働時間の管理と体調不良・メンタルヘルス不調の対策

クリエイターを中心に、自宅に業務環境が整ったことが裏目に出て、業務の区切りをつけられず長時間労働につながってしまうというご相談も受けます。たとえ裁量労働制が取り入れられているとしても、労働時間の管理は必要です。

労働時間を管理するために取り入れられている主な対策方法は、PCを使用できる時間を制限すること。ある時刻になったら、PCをシャットダウンしてしまうものです。専用のソフトウェアや、アプリケーション・データをサーバー側で一括管理するシンクライアントPCを導入することで実現しています。

こうした労働時間の管理に加えて、体調不良や業務状況を伝えやすい環境をつくることも重要です。気軽に相談ごとを口に出せる雰囲気や話しかけやすさをリモートワークの状況下でも醸成するため、仮想オフィスを活用するケースも耳にします。まだ事例は少ないですが、一部のIT・Web関連企業では、仮想オフィスを活用して労働時間と業務内容の見える化を試みるとともに、会話や声掛けのきっかけをつくっているそうです。
 

【4】手厚いリモート支援や制度の見直し

上記3点の対策が進むなか、より快適な勤務環境を実現し、社員エンゲージメントと生産性を向上させるために、リモートワークに関するさまざまな施策や工夫が行われています。例えば、リモートワークを前提とした就業規則の改定や支援制度の導入。居住地不問のフルリモートを可能にした企業も見受けられました。

クリエイティブ職種では、制作用のPCや会社の椅子を社員の自宅に送った企業が多くありました。そのほか、仕事用の設備購入について実費を支給する企業、業務上の通信費をすべて会社で負担している企業、リモートワーク中の飲食費や光熱費の補助を支給する企業も見られます。

また、セキュリティ対策を強化し、コワーキングスペースやカフェでの勤務を可能とする事例も見られます。さらに、居住地不問のフルリモートワークを導入し、社員が出身地や避暑地でも働けるようにした企業も。一方で、適度にオフィスに出社し、対面のコミュニケーションを取ることを望む社員には、週4出社・週1在宅を認めるなど、個人に合わせたハイブリッドワークを推奨する動きも増えてきました。
 

おわりに

リモートワーク環境に合わせた新入社員の受け入れ・育成の設計、労働環境の整備は進みつつあります。2022年現在は、さらにもう一歩踏み込み、社員一人ひとりが最適な働き方を見つけられるよう、制度や環境の改善を推進することが重要となるでしょう。就業規則や制度の見直しは負担も大きく感じられますが、多様な働き方に対応できる体制を整えることで、多様な人材の採用にもつながりやすくなります。
【執筆者プロフィール】
荒川 直哉(あらかわ なおや)

荒川 直哉(あらかわ なおや)
株式会社マスメディアン キャリアコンサルティング部 部長
国家資格キャリアコンサルタント

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。年間600名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社のマーケティング・クリエイティブ部門や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。「転職を検討している人材」と「採用企業」の両方の動向を把握しているエキスパート。転職者の親身になるがモットー。

マスメディアンでは、クリエイティブ・マーケティングをはじめプロフェッショナル人材採用に関するさまざまなご相談に応えてきました。

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