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【第4回】事業成長に寄与するインハウスクリエイティブ組織とは?─ゼブラ株式会社

 2021.06.09

  • インハウス
【第4回】事業成長に寄与するインハウスクリエイティブ組織とは?─ゼブラ株式会社
商品やサービスがすぐにコモディティ化する昨今、企業は競争を勝ち抜くために、ブランド力を強化し、顧客とのコミュニケーションを重視するようになりました。こうした背景から、自社の事業や業界市場を熟知したクリエイターを社員として組織化する「インハウスクリエイティブ」に注目が集まっています。

本連載では「クリエイティブ組織のインハウス化」をいち早く取り入れ成功している企業にインタビュー。「なぜインハウス化するのか?」「どのようなクリエイターを採用すべきか?」「クリエイターが力を発揮できる組織とは?」……。組織づくりや事業成長のヒントをお聞きしていきます。

第4回は、ゼブラの事例をご紹介します。研究開発本部 商品開発部 部長の中村崇洋さんにご協力をいただきました。(マスメディアン編集部)

企業データ

【企業名】ゼブラ株式会社
【設立】1897年3月
【社員数】937名(2020年3月時点)
【売上高】231億(2020年3月期時点)
【事業内容】ボールペン・シャープペン・マーカーなど各種筆記具の開発・製造・販売

【組織構成】
研究開発本部の下、研究開発部と商品開発部を設置。

研究開発部:新たなインクやメカニズムの開発を担当。
商品開発部:新たな筆記用具の商品開発において、市場調査、商品企画、デザイン、生産調整を主に担当。以下3チームに分かれる。
・デザインチーム:プロダクトデザインを担当。
・ビジネスチーム:ビジネス需要を狙った商品の企画を担当。
・アートアンドクラフトチーム:絵を描くなど趣味嗜好を満たすような商品を担当。

【商品開発部 デザインチームの組織構成】
・筆記用具の外観、内部構造のデザインを制作。
・グラフィックデザイナー(1名):商品の色、柄、ロゴマークなどのデザインを担当。
・プロダクトデザイナー(6名):ユーザビリティや美観を考慮しながら商品の形状デザインをつくり上げる。
 

インハウスクリエイティブ組織のポイント

●技術開発と商品開発が同じ本部内に並列している。新商品開発にあたっては、研究開発部、商品開発部の各チームからそれぞれメンバーが集まりプロジェクトチームを結成し、活用する技術、商品カテゴリー、ターゲット市場などを絞り込んでいく。

●商品開発部門に所属するデザイナーが、商品企画担当や研究者とのコミュニケーションによって技術や市場への理解を深めるため、コンセプトと一体感のある意匠デザイン、スピーディーな商品開発が実現できる。

●社内デザイナーは中途採用した人材が多い。デザイン技術を最も重視するが、社内コミュニケーションも多いため、相手の意図を汲み取る力、自身のアイデアを積極的に伝える発信力も重要。

筆記具を通じて、人々の「創造性の促進」「文化の育成」に貢献する

──商品開発部について
商品開発部は、新たな筆記用具の商品開発において、市場調査、商品企画、デザイン、生産調整を主に担当しています。研究開発本部の下に研究開発部と並列しており、研究開発部が開発した新たなインクやメカニズムを、商品開発部が受け継いで商品化につなげていきます。商品開発部には、デザインチームの他に商品企画を担う2つのチームがあります。一つはビジネス需要を狙った商品を手掛けるビジネスチーム、もう一方は、絵を描くなど趣味嗜好を満たすような商品を担当するアートアンドクラフトチームです。
ゼブラ株式会社 研究開発本部 商品開発部 部長 中村崇洋さん
──仕事の流れ
商品開発においては、プロジェクト制を取っています。新しい技術が開発されるとそれが起点となって、研究開発部、商品開発部の各チームからそれぞれメンバーが集まりプロジェクトチームを結成。新しい技術を使い、どの商品カテゴリーで、どの市場に新商品を出していくかアウトラインを絞り、コンセプトを設計します。その後は、デザイナーがコンセプトに基づいて意匠を考え、3Dプリンターでデザインサンプルを作成。サンプルをもとに商品企画担当と話し合いを重ねて、サンプルの完成度を上げていきます。その後、研究部と協力し、サンプル段階の商品を生産可能にするための本質的な内部構造を考えます。商品のデザインが完成すると、商品企画担当は、調達部門との材料仕入れ、工場との生産調整も行い、商品を製造していく流れになります。パッケージや販促ツールのデザインは営業企画部門に所属するデザイナーが担いますが、開発コンプトに沿っているかを商品開発部のデザイナーも確認しています。

──デザインチームが研究開発本部にある理由
徹底的にユーザーのことを考えて商品を世の中に出していくためには、研究から、企画、デザイン、販促まで一貫して自社で行う必要があると思います。その意味で、社内デザイナーの存在は欠かせません。とりわけ商品開発部は、新しく開発された技術をベースにデザイナーが商品開発のプロセスに深く関わる組織を志向して、現社長の石川が立ち上げた部署です。商品企画担当や研究者との密なコミュニケーションによって、デザイナーが技術や市場への理解を深めているからこそ、コンセプトと一体感のある意匠デザイン、スピーディーな商品開発ができているのだと思います。会社としては、筆記具を通じて、人々の「創造性の促進」「文化の育成」に貢献するというミッションがあります。社内デザイナーが同じ方向を向いて仕事をすることで、完成する商品もミッションに沿ったものにでき、お客さまにも共感してもらいやすいのではないかと思っています。

──デザイナー採用のポイント
商品開発部のデザイナーは、ほとんどが中途採用したメンバーです。採用において最も重視するのは、やはり技術力です。3DCADを用いたデザインの経験は求められます。筆記具のデザイン経験があるデザイナーは少ないため、手に収まる小さい商品、コモディティ商品、プラスチック商品など、近い領域のデザインをしている人はマッチしやすいと思っています。もう一つは、コミュニケーション力です。職域の異なるメンバーとやり取りすることが多いので、相手の意図を汲み取る力はもちろん重要なのですが、発信する力も大事です。おしゃべりな人は重宝されています。

──今後のビジョン
新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務するビジネスマンが増えたことで、オフィスで利用されるビジネス向け商品の需要が減り、逆に個人向け商品の需要は増えました。これまでは最も重要な顧客接点だった大型雑貨チェーンでの売り上げが伸び悩む一方、ネット通販や100円ショップは堅調といわれます。商品開発部では、こうしたユーザーの大きな変化をチャンスと捉え、訴求力のある新商品を開発していきたいと考えています。

※2020年10月に取材した内容を掲載しています。