マーケティング・営業戦略・広報・宣伝・クリエイティブ職専門の採用支援はマスメディアン【宣伝会議グループ】

  • HOME
  • ナレッジ
  • 【第5回】事業成長に寄与するインハウスクリエイティブ組織とは?─セルソース株式会社

【第5回】事業成長に寄与するインハウスクリエイティブ組織とは?─セルソース株式会社

マスメディアン編集部 2021.06.18

  • インハウス
【第5回】事業成長に寄与するインハウスクリエイティブ組織とは?─セルソース株式会社
商品やサービスがすぐにコモディティ化する昨今、企業は競争を勝ち抜くために、ブランド力を強化し、顧客とのコミュニケーションを重視するようになりました。こうした背景から、自社の事業や業界市場を熟知したクリエイターを社員として組織化する「インハウスクリエイティブ」に注目が集まっています。

本連載では「クリエイティブ組織のインハウス化」をいち早く取り入れ成功している企業にインタビュー。「なぜインハウス化するのか?」「どのようなクリエイターを採用すべきか?」「クリエイターが力を発揮できる組織とは?」……。組織づくりや事業成長のヒントをお聞きしていきます。

第5回は、セルソースの事例をご紹介します。デザイン戦略部長の大熊宏さんにご協力をいただきました。(マスメディアン編集部)

企業データ

【企業名】セルソース株式会社
【設立】2015年11月
【社員数】68名(2020年10月時点)
【売上高】18億5547万円(2020年10月期時点)
【事業内容】
再生医療等を実施する医療機関に対し、細胞等の加工受託サービス、関連法規の対応支援、医療機器販売、マーケティング支援をトータルで提供する再生医療関連事業を展開。また、コンシューマー向け事業として、再生医療の知見にもとづき開発された化粧品ブランド「Signalift」の販売も行っている。

【クリエイティブ組織の名称】
・デザイン戦略部(4名)

【組織構成】
・クリエイティブディレクター1名、ライター1名、Webデザイナー・コーダー1名、制作ディレクター1名が所属。
・Webサイト、LP・バナー、カタログ、パンフレット、ポスター、営業など社外向け資料、社内向け資料、商品パッケージまで幅広いクリエイティブ制作を担当。

インハウスクリエイティブ組織のポイント

●課題解決型のビジネスであり、クリエイターが持つ発想力やクリエイティブ力を事業に活かすという発想が、創業当初からあった。企業規模拡大に伴い制作物の量が増加し、制作物のブランディング統一とスピード感の両面から社内にクリエイティブ組織を持つという方針が決定し、クリエイター採用を開始した。

●医療領域での経験が無いクリエイターにとっては、事業理解に時間がかかる面がある。広告表現にも規制があるため、ガイドラインを理解する必要もある。事業やガイドラインを理解したクリエイターを採用、または育てることで、制作物の質が上がり、外部協力先のディレクションも行いやすい。

●将来的には、各事業部にクリエイターが所属する組織を目指している。事業部の内側にいるからこそ見える深い課題を発見し、本質的な課題解決に導けるクリエイティブ組織をつくりたい。

デザイン思考を事業に活かす

──クリエイティブ組織を立ち上げたきっかけ
もともとデザインに対しての理解が経営層にあったことと、会社の規模拡大とともに必要な制作物が増えたため、あらためて社内にクリエイターを採用し、クリエイティブ組織を立ち上げる運びになりました。私はもともと外部のWebデザイナーとして、「Signalift」のLPやバナー制作をさせていただいたご縁があり、2018年の組織立ち上げのタイミングで中途入社しました。入社時はコンシューマー向け事業を行う部署に所属し、私と制作ディレクターの2名体制でデザインチームをスタート。入社当初に変更されたコーポレートロゴにはルールが存在しなかったため、ロゴマニュアルの作成から始め、社内にあるステーショナリーやツール全般の刷新を行い、統一感あるブランドイメージを作りあげました。あわせて「Signalift」のLPやバナーデザインを一新したほか、先行して発売されていたシリーズのイメージを踏襲しつつ、洗顔やトライルセットのプロダクトデザイン、撮影ディレクションを行いました。
 
セルソース株式会社 デザイン戦略部長 大熊宏さん
──デザイン戦略部の役割
会社の成長とともに、営業、研究開発部門からも、クリエイティブ制作を依頼されるようになりました。そのため、デザインチームは2020年11月から「デザイン戦略部」として独立し、他の事業部と横並びの部署になりました。デザイン戦略部では、社内の各事業部からの依頼をもとにWebサイト、LP・バナー、カタログ、パンフレット、ポスター、営業など社外向け資料、社内向け資料、商品パッケージまで幅広いクリエイティブ制作を担当しています。また、私の入社前に制作されたブランドのトーン&マナーに沿わないデザインは、各事業部へ提案し、再制作するよう調整します。制作物のディレクションや各事業部との調整を行う機会が多くなり、私の役割はクリエイティブディレクション中心の仕事に変化しています。

──社内にクリエイティブ組織があることでのメリット
当社が事業を展開する再生医療領域は、ほとんどのクリエイターにとって馴染みがなく、理解に時間がかかります。また、広告表現にも法規制があるため、そのガイドラインを理解しなくては適切なクリエイティブを提供できません。私も外部クリエイターとして仕事に関わっていた際には、商品が良く見えることだけに注力したLPを制作してしまい、修正を重ねたことがありました。社内クリエイティブチームがある利点は、社員として事業に対する理解を深めると同時に、業界特有のガイドラインの知識やノウハウを蓄積・継承できることで、制作物のクオリティが上がることです。また外部協力先に依頼する際にもオリエンテーションがきちんとでき、外部クリエイターと社内事業部のハブとなって、クリエイティブ制作のコントロールを行いやすくなることもメリットだと考えています。

──クリエイター採用のポイント
クリエイターの採用では、ポートフォリオのまとめ方を重視しています。社内クリエイターは、あらゆる部署や社員とコミュニケーションを取りながら仕事を進める必要があります。そのため、実績がわかりやすく伝わりやすいポートフォリオになっているかどうかでも、仕事をする上で円滑にコミュニケーションが進められるかが見えてくると考えています。以前、ご自身が担当していない部分までも実績にされているケースがあったため、過去の制作物でどの領域をご自身が担当したのかが正確に記載され、等身大の姿が見えるポートフォリオは、いつも高く評価しています。また、ベンチャー企業であるため、仕事のスピードは非常に早いです。当社は、走りながら考える文化がベースにあるため、スピードを意識しつつ、質の高いアウトプットを生み出せることも重要になります。

──今後のビジョン
今後は、より高いレベルでデザイン思考を組織に浸透させていくために、各事業部内にクリエイターを配置するような組織改革に取り組んでいきたいと考えています。現在のデザイン戦略部は、各事業部の外側にある組織として各部門の依頼に応えていますが、表層的な課題解決になっているのではないかという懸念があります。事業部の内側にいるからこそ見える深い課題を発見し、社内外のクリエイターとチームを組んでより本質的な解決へ導くクリエイティブ組織をつくっていきたいです。

※2020年11月に取材した内容を掲載しています。