【第1回】事業成長に寄与するインハウスクリエイティブ組織とは?─株式会社I-ne
マスメディアン編集部 2020.12.01
- インハウス
本連載では「クリエイティブ組織のインハウス化」をいち早く取り入れ成功している企業にインタビュー。「なぜインハウス化するのか?」「どのようなクリエイターを採用すべきか?」「クリエイターが力を発揮できる組織とは?」……。組織づくりや事業成長のヒントをお聞きしていきます。
第1回は、I-ne(アイエヌイー)の事例をご紹介します。創業メンバーでもある取締役兼ブランディング本部 本部長の今井新さん、経営管理本部 人事担当の友原由衣さんにご協力をいただきました。(マスメディアン編集部)
企業データ
【企業名】株式会社I-ne
【設立】2007年3月
【社員数】256名(2020年7月時点)
【売上高】212億600万円(2019年12月期時点)
【事業内容】
1. 化粧品、美容家電などの美容関連商品や販売店の企画開発、運営、販売
2. トイレタリーおよびヘルスケア関連商品の企画開発、販売
3. Eコマース事業
【クリエイティブ組織の名称】
ブランディング本部(61名)
【組織構成】
ブランディング本部は、生活者が自社のブランドや企業の情報に触れる際のすべてのクリエイティブやコンテンツなどを企画・制作・運用をしている。
本部長以下、ブランディング戦略部(21名)、コミュニケーション戦略部(39名)の2つの部門に分かれている。
<ブランディング戦略部>
クリエイティブディレクター、ブランドディレクター、アートディレクター、販促デザイナー、デザイナーが所属し、以下業務を担当。
・ブランドのコンセプト設計
・プロダクト・パッケージ・ブランドヴィジュアルのトータルデザイン
・広告、販促物 企画、制作、監修
<コミュニケーション戦略部>
クリエイティブディレクター、コミュニケーションディレクター、SNSディレクター、Webディレクター、Webデザイナー、コーダー、コピーライター、動画クリエイターが所属し、以下業務を担当。
・コミュニケーション戦略 企画、設計、監修
・デジタルプロモーション 企画、制作、運用
・Webサイト、LP 企画、制作、運用
・SNSアカウント・SNS広告運用
・動画、コンテンツメディア 企画、制作、運用
【設立】2007年3月
【社員数】256名(2020年7月時点)
【売上高】212億600万円(2019年12月期時点)
【事業内容】
1. 化粧品、美容家電などの美容関連商品や販売店の企画開発、運営、販売
2. トイレタリーおよびヘルスケア関連商品の企画開発、販売
3. Eコマース事業
【クリエイティブ組織の名称】
ブランディング本部(61名)
【組織構成】
ブランディング本部は、生活者が自社のブランドや企業の情報に触れる際のすべてのクリエイティブやコンテンツなどを企画・制作・運用をしている。
本部長以下、ブランディング戦略部(21名)、コミュニケーション戦略部(39名)の2つの部門に分かれている。
<ブランディング戦略部>
クリエイティブディレクター、ブランドディレクター、アートディレクター、販促デザイナー、デザイナーが所属し、以下業務を担当。
・ブランドのコンセプト設計
・プロダクト・パッケージ・ブランドヴィジュアルのトータルデザイン
・広告、販促物 企画、制作、監修
<コミュニケーション戦略部>
クリエイティブディレクター、コミュニケーションディレクター、SNSディレクター、Webディレクター、Webデザイナー、コーダー、コピーライター、動画クリエイターが所属し、以下業務を担当。
・コミュニケーション戦略 企画、設計、監修
・デジタルプロモーション 企画、制作、運用
・Webサイト、LP 企画、制作、運用
・SNSアカウント・SNS広告運用
・動画、コンテンツメディア 企画、制作、運用
インハウスクリエイティブ組織のポイント
●会社や各ブランドの理念、ボス(お客さま)を深く理解したクリエイターが社内にいるので、ブランドの情熱、熱量をダイレクトにボス(お客さま)に伝えられること(パーパスドリブン)。
●ブランドコンセプトからCRM(顧客関係管理)までトータルデザインができるので、一貫した世界観の構築ができること(クリエイティブコントロール)。
●社内のあらゆるデータをリアルタイムで見ながらスピーディーにクリエイティブのPDCAが回せること(データドリブン、スピードドリブン)。
●施策やクリエイティブに関する細かなノウハウを社内に蓄積し、他ブランドや新ブランドに反映できること(ノウハウの蓄積)。
●ブランドコンセプトからCRM(顧客関係管理)までトータルデザインができるので、一貫した世界観の構築ができること(クリエイティブコントロール)。
●社内のあらゆるデータをリアルタイムで見ながらスピーディーにクリエイティブのPDCAが回せること(データドリブン、スピードドリブン)。
●施策やクリエイティブに関する細かなノウハウを社内に蓄積し、他ブランドや新ブランドに反映できること(ノウハウの蓄積)。
さまざまなクリエイターが集い融合することで、ミュータント(突然変異)をつくり出し、 社会にポジティブな影響を与えられるヒットブランドを生み出していきたい
──組織を立ち上げたきっかけ今井さん:2007年に起業した当時は、他社の仕入れ商品を中心に、ECと店頭卸を行っていましたが、そのビジネスモデルに限界を感じるようになりました。そうした中で、より長く商品を愛してもらうには、自分たちでブランドをしっかり構築して、コアなファンをつくっていく必要があると考えるようになりました。そこで、社長・幹部と話し合い、ブランディング・マーケティング専門の部署を2013年に立ち上げました。その後、美容家電ブランド「SALONIA」やボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST」のヒットと事業拡大に伴い、ブランディング領域が拡大し、現在のブランディング本部に至っています。

今井さん:ブランディング本部は、I-neのすべてのクリエイティブを統括し、各「ブランドの軸」を担う部署です。ボス(お客さま)の頭のなかに、共感・共鳴し続けていただけるような理想のブランドイメージをつくり育てる役割で、ブランドイメージに関わるすべての領域に携わる部署、正にブランドの軸となる存在であると考えています。
そのブランドは、どのような生い立ちで、どのような考えを持ち、どのようなヴィジュアルなのか。どこでどのようなシュチュエーションで認知してもらい、使ってみたいと思ってもらうか。そして、これからも長く愛用したいと思ってもらえるか。これらすべての理想を描き、それを具現化していく集団です。
クリエイティブパートナー企業と協業して進めるケースもありますが、ブランドのコンセプトづくりから、プロダクト・パッケージのデザイン、コミュニケーション戦略・ツール(Webサイト、SNS、動画、販促什器)の企画・制作・運営までトータルディレクションを自社のクリエイターが担当しています。

今井さん:I-neでは、「SALONIA」「BOTANIST」の商品開発の経験から、独自のブランドマネジメントシステム「IPTOS(イプトス)」を編み出し、商品開発に活かしています。IPTOSは、「Idea(アイデア)→Plan(企画)→Test(検証)→Online/Offline(EC/一部小売)→Scale(スケール)」という各プロセスの頭文字から名づけています。
具体的な商品開発のプロセスは、I-neが独自開発したAIインサイトスコープ「KIYOKO」の活用による情報収集や社員全員でのアイデア出し、マーケットニーズの分析を行い、商品企画につながるアイデアを醸成し、その後ブランドチームを結成します。「マーケティング」「ブランディング」「販売」の各本部からメンバーがアサインされますが、ブランディング本部からは、ブランドディレクターとコミュニケーションディレクターがチームに参画します。クリエイティブディレクター兼アートディレクターのような役割です。ブランドのコンセプトや世界観を設計し、部内のクリエイターと共に、それぞれの担当領域のクリエイティブを制作していきます。商品のコンセプトや仕様が決まったら、小ロットで製品化して、すぐに自社ECサイトで販売を行います。そこで得られた顧客からのフィードバックをもとに商品を改良し、ほかのECモールやオフラインの店舗網に流通させていきます。
──社内にクリエイティブ組織があるメリット
今井さん:I-neのインハウス組織のキーワード「パーパスドリブン」「クリエイティブコントロール」「データドリブン・スピードドリブン」「ノウハウの蓄積」の4つから、メリットを紐解きます。
パーパスドリブン:会社や各ブランドの理念、ボス(お客さま)のことを深く理解したクリエイターが社内にいるので、ブランドの情熱、熱量をダイレクトにボス(お客さま)に伝えられること。I-neのミッションである「Chain of Happiness(商品を通じて世界中を幸せにする)」に沿ったブランドづくりを行い、ブランド発信側の情熱を、そのままプロダクトやクリエイティブに表現し、熱量の高いブランドを構築しています。
クリエイティブコントロール:ブランドコンセプトからCRMまでトータルデザインができるので、一貫した世界観の構築ができること。創業当時、クリエイティブ制作は外部にすべて依頼していましたが、意図とは異なるクリエイティブができあがったり、依頼先の各担当者によるクオリティのバラつきがあったりしたため悩んでいました。現在は、内製で完結できるようになり、外部の制作会社、広告会社と協業する際も、社内のディレクターがディレクションし、クリエイティブコントロールを行っています。
データドリブン・スピードドリブン:社内のあらゆるデータを把握してクリエイティブのPDCAが回せること。クリエイティブ制作において、オンライン・オフラインの細かな社内データ(店頭・EC売り上げにはじまり、各広告施策のROI(投資利益率)・CTR(クリック率)・CVR(成果率)、SNS各投稿のエンゲージメント率、商品レビューなど)を、リアルタイムで確認しながら考察のベースにし、日々スピーディーにクリエイティブを改善しています。
ノウハウの蓄積:施策やクリエイティブに関する細かなノウハウを社内に蓄積できること。
それらを、自社の他ブランドや、新ブランドに反映でき、スピーディーにクオリティを担保したブランド開発が可能になりました。一例を挙げると、5~6年程前に、SNSや動画がブランドコミュニケーション上、重要な手段になると感じて、社内にSNSチーム、動画チームをつくりました。チームの成長とノウハウの蓄積により、今では、他社から運用や制作の依頼が来るようになりました。
──現在のクリエイティブ組織の課題
今井さん:社内クリエイターはどうしても自社商品の制作物に専念することになるため、アイデアや表現の幅が固定化しがちです。そのため、引き出しを増やすことを目的として、本部全員で集合知をつくる取り組みをしています。日々の発見や気づき、ニュースをシェアし合うチャットグループで、毎日投稿し合ったり、信頼している制作会社や国内外のクリエイターと協業したり、I-neが独自開発したAIインサイトスコープシステム「KIYOKO」のトレンドレポートなどでインプットするなど、表現の幅を広げようとしています。また、数値意識やデジタルマーケティングに課題があるので、教育プログラムを実施しています。
──クリエイター採用のポイント
友原さん:社内クリエイターに求められるのは柔軟性の高さだと思います。I-neでは、部の枠を超えたブランドチーム制を採用しているため、いろいろな部署と関わり、自分と他メンバーの意見を組み合わせて、新たなものをつくり出すことを大切にしているからです。自分の意志や考えはしっかり持ちつつも、周りの意見を受け入れる素直さは必要ですね。イノベーションは、多様な意見が混じりあうことで、起きる可能性が高まると考えています。
──今後のビジョン
今井さん:既存ブランドを育てつつ、新しいブランドをどんどん世の中に出していきます。そして今後は、海外展開にも一層力を入れていきます。
友原さん:より長く、より深く、より多くのボス(お客さま)に愛されるブランドをつくっていきたいです。そのためにも、クリエイターの力は重要だと考えています。
今井さん: さまざまなバックグラウンドを持ったクリエイターが当社に集まり融合することで、面白い化学反応が生まれ、突然変異(ミュータント)が起こることを期待しています。そうした突然変異でイノベーションを起こし、社会に良い影響を与えられるヒットブランドを生み出し続けたいです。また、クリエイターがビジネスの中枢に参画することが、より良い世界の実現に貢献すると信じています。なぜならクリエイターは、目の前の利益よりも、人を喜ばせることに、生きがいを感じるタイプの人だと思っているためです。クリエイティブ組織を率いる立場として、できるだけ多くのクリエイターにその機会を与えて、I-neのミッションである「Chain of Happiness(商品を通じて世界中を幸せにする)」を実現していきたいです。
※2020年10月に取材した内容を掲載しています。