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【第2回】働き方改革と副業・兼業(2)―社労士が見る時事ニュース

小宮弘子 2018.03.07

  • 働き方改革
政府が推進する「働き方改革」によって【副業・兼業】や【テレワーク】などの導入が加速することが予想されます。広告・Web業界は比較的適応しやすい業界。AD・HRニュースの読者である経営者・人事担当の皆さまも注視しているテーマかと思われます。今回新たに、『働き方改革の教科書』の著者である社労士の小宮弘子氏に、時事ニュースを社労士目線で解説してもらいます。(マスメディアン編集部)

雇用側が知っておくべき副業・兼業に対する従業員側の思考

広告業界は、各種デザイナー、ライター、カメラマンなど、他業界と比べてフリーランスが多い業界ではないでしょうか。もともと一定数のフリーランスがいるということは、副業・兼業がしやすい業界とも言えます。

クリエイティブな職種が多いゆえに、副業・兼業を考える従業員も多いはずです。副業・兼業による従業員の経験が、自社の仕事のクオリティが上がるなど、望ましいかたちで影響を受ける分には構わないのですが、従業員側の副業・兼業の目的によっては、思わぬ落とし穴が待ち受けていますから注意しましょう。

副業・兼業は独り立ちをするための布石

デザイナー、ライター、カメラマンなどの仕事は、クリエイティブな仕事であり、個人の才能は当然のことながら、高い専門性やスキルも必要です。このような仕事の特質があるため、自分の才能が発揮できる仕事や自分のやりたい仕事をしたいという願望が、他の職種より強いのではないでしょうか。今、会社に勤務している従業員のなかでも、将来の独り立ちに向けた準備期間として業務に従事している人がいるかもしれません。独立志望が直ちに問題というわけではありません。会社と本人の関係が良好であれば、独立後の得意先が自社になることは多いに想定されます。仕事があるときだけ頼める契約になるわけですから、費用対効果の面では期待できます。しかし、独立志望は良い面ばかりではありませんから、副業・兼業の申請を受けた際は、同職種のフリーランスであれば独立志望の有無は必ず確認し、副業・兼業開始後も定期的に確認するようにします。

■独り立ち系の留意点1~機材などの使用
職種や業務によっては、特殊な機材やスタジオの使用が必要になるものがあります。自社への業務に支障がないとして、副業・兼業を認めたとしても、副業・兼業の業務で使用するPCをはじめとする備品や機材などについて、その使用を認めるのか否か、あらかじめ決めておくようにします。会社業務でできあがった作品等の転用リスクを考えれば、副業・兼業での使用は不可とすべきでしょう。最も避けたいパターンは、会社に黙って使用されることです。例えばカメラマンであれば、会社が契約・所有しているスタジオの空き時間を利用して、勝手に個人契約の仕事をするといったことです。

副業・兼業を認める場合には、会社所有の備品などは使用不可であることを副業・兼業の許可条件として明確にしておきましょう。

■独り立ち系の留意点2~取引先への営業活動
特に会社で従事していた職務を事業とする独立には注意しましょう。普通に考えれば営業活動する先とは、自社の仕事を通じて知り合った人脈(取引先)になるからです。会社の取引先の担当者と親しくなり、独立を予定していることや、個人契約ならもっと料金を安くできるなど、会社契約から個人契約に誘導されるようなことがあっては、会社の利益を害する行為である他、会社の信用を行う行為でもあり困ります。厚生労働省の副業・兼業のガイドラインでも、裁判例を引用して会社が副業・兼業を制限することが許される列挙事項のなかに、企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合をあげています。このため自社の取引先への営業活動を禁止することについても、副業・兼業の許可条件として明確にしておくべきでしょう。

副業・兼業はパラレルキャリアを形成するため

人生100年時代と言われ、変化の激しい時代に一つのキャリアだけでは不安、食べていけないといったことも言われています。このような背景から最近では、「パラレルキャリア」という言葉をよく聞くようになりました。パラレルキャリアとは、本業の仕事をしながら、第二のキャリア構築や活動をすることです。副業・兼業との違いは、副業が金銭対価を求める活動であるところ、パラレルキャリアはスキルアップや将来への自己投資などが重要な目的である点です。趣味や夢の実現につながる活動、社会貢献活動なども含まれます。

■パラレルキャリア系の留意点1~仕事に影響しないよう健康管理に留意
活動している内容にもよりますが、金銭目的でなく自分の好きな事をしているため、時間を気にせず没頭する可能性があります。休日を使って時間に追われながら活動するものも多くあります。余暇時間を使った活動と仕事を上手く両立させるには、体調管理とタイムマネジメントが欠かせません。仕事のタイムマネジメントさえ難しいのに、仕事との両立ともなれば、活動当初は体調への影響も懸念されます。

自営で労働者といえないような活動であれば、労働時間の通算問題は発生しませんが、自社の仕事に影響があっては困ります。パラレルキャリア系の場合は、副業・兼業を認める際に、身体的な疲労が仕事に影響しないよう健康管理に十分注意することを制約させたいものです。

■パラレルキャリア系の留意点2~独立系に移行することも
当初の目的が金銭目的の副業・兼業でなかったとしても、活動を継続しているうちに事業化構想が芽生えてくることはあるものです。社外活動での経験などが業務に活かされ始めた矢先に退職ということがあるかもしれません。パラレルキャリア系だからと安心せず、定期的に活動状況について話を聞いておくようにしましょう。
【執筆者プロフィール】
特定社会保険労務士 小宮弘子(こみやひろこ)氏
トムズ・コンサルタント株式会社 代表取締役社長
大手都市銀行本部および100%子会社で、人事総務部門を経験の後、平成15年にトムズ・コンサルタント株式会社へ入社。人事・労務問題のトラブルを解決、諸規定、賃金・評価制度の改定をはじめ、社内制度全般のコンサルティングを中心に行う。著書に『この1冊でポイントがわかる「働き方改革」の教科書』(共著)など。