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【第4回】IoTとブロックチェーン―未来のメディア

志村一隆 2017.12.20

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【第4回】IoTとブロックチェーン―未来のメディア
WOWOW、NTT、ヤフーを経て、現在はメディア・コンテンツ分野の第一人者としてフィールドワークを進める志村一隆(しむらかずたか)さん。さまざまな国に赴き、現地の最新動向をレポートするコラム。世界各地のメディア・コンテンツにまつわるケーススタディなどを引き合いに、経営者の皆さまのアイデアのタネとなるコラムを発信していきます。第4回は「IoTとブロックチェーン」がテーマです。(マスメディアン編集部)
ビットコインの急騰がちまたで話題です。2017年春頃は、10万円だったのが、いまや200万円弱。これほど急騰する銘柄は株式市場でも、なかなかありません。

お金儲けは、世界共通の話題なのか、先日米国から友人が来たときも、ビットコインの話題になりました。なんでも数年前に、1000ドルだけビットコインを買っていた友人がいるとか。スペインで画廊の友人に会ったときも、ビットコインについて知りたそうでした。いまや、ビットコインは国や業界問わず話題です。

色々な人たちと話をしているうちに、知らずに国境や業界の壁を超えて話ができていることに少し驚きました。同じお金でも、ドルやユーロの話であれば、普段の会話には出ないでしょう。ビットコインは仮想通貨と呼ばれ、円やドルに交換可能ですが、言ってみれば、「マイレージ」や「ポイント」と同じもの。いや、どこの企業もビットコインの発行には関わっていませんから、なんの保証もない「ポイント」です。

それが、これだけ話題になるのですから、国境を超えるサービスの凄さを感じます。それに、ネットワークを利用したテクノロジーに通貨までもが組み込まれれば、国家の役割は縮小し、国境も段々なくなるのではないかなどと考えてしまいます。

この一連の動きのなかで、一番の注目点は、ビットコインの背後にあるブロックチェーンという技術でしょう。あらゆる「取り引き」を全員で共有すれば、公正な共同体運営ができるのではないかという発想は、昔からあります。それを、インターネットやデジタル技術、パソコンなどのハードの進展で、現実に可能にしているのがブロックチェーン※1です。これまで人間は、長年の智恵として、議員や取締役会など組織をつくり、代表に委任する形で共同体運営してきました。それに対し、ブロックチェーン技術は、非中央集権型とか分散型と呼ばれ、個々が自律しながら管理・運営していくという考えです。

そもそもインターネット空間も、その初期は非中央集権型で分散型になると言われていました。しかし、この20年間、インターネットは広告収益をドライバーとして発展してきたため、利益を稼ぐためにグーグル、アマゾンといった企業が巨大化し、事実上の寡占状態となりつつあります。

ブロックチェーンは、こうした巨大化したIT企業を打ち負かす破壊的技術(ディスラプティブ)になるかもしれません。これまでのインターネットテクノロジーは、企業と消費者を結ぶ流通・サプライチェーンを効率化するものでした。いまや手芸品だけでなく簡単な家具なども個人がつくり、売る時代です。アルビン・トフラーが唱えた「プロシューマー※2)」はこれからもどんどん増え、少額な取り引きもどんどん増えるでしょう。それを支えるには、いまのECよりも、もっと取引コストの低い仕組みが必要です。

そして、それを可能にするのが、ブロックチェーンなのです。なかでも、イーサリアム(Ethereum)は、モノや契約などに対応するブロックチェーンのプラットフォームを目指しています。ビットコインは、ブロックチェーンをビットコインのためだけに使っていますが、イーサリアムは、ブロックチェーンを使い、IoTで繋がった多様なサービスに応用され、その取り引きに使われる通貨として「イーサ(Ether)」を発行します。つまり、イーサリアムの仮想通貨「イーサ」は、イーサリアム経済圏のポイントと同じです。ビットコインは、実際に使える場所が限られていながら、ドルや円と交換できることで、その価値を維持しています。イーサリアムは、まず利用シーンを増やすことに注力しています。

ビットコインで仮想通貨が注目されましたが、その背後のブロックチェーンこそが、これから注目の技術でしょう。IoTでモノが繋がり、リアルな世界をバーチャル世界で再現できると言っている人もいます。バーチャル領域が拡大するほど、ブロックチェーンの出番は増えるのではないでしょうか。


※1ブロックチェーン:インターネットなどオープンなネットワーク上、高い信頼性が求められる金融取引や重要データのやりとりなどを可能にする分散型台帳技術。この技術を利用し、ビットコインは実現している。
※2プロシューマー:producer(生産者)とconsumer(消費者)を組み合わせた造語。製品の企画・開発に携わる消費者。
【執筆者プロフィール】
志村一隆(しむらかずたか)氏
メディア研究者。1991年早稲田大学卒業後、WOWOW入社、2001年ケータイWOWOW代表取締役を務めたのち、2007年から情報通信総合研究所主任研究員。2014年にヤフーに。2015年に独立。著書に『明日のテレビ』(朝日新書、2010年)、『ネットテレビの衝撃』(東洋経済新報社、2010年)、『明日のメディア』(ディスカヴァー携書、2011年)、『群像の時代』(ポット出版、2015年)、『デジタル・IT業界がよくわかる本』(宣伝会議、2016年)など。著書でメディアイノベーションを紹介したメディア・コンテンツ分野の第一人者。現在は、独立メディア塾にて寄稿。2000年米国エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号取得。水墨画家アーティストとして欧米で活躍。