マーケティング・営業戦略・広報・宣伝・クリエイティブ職専門の採用支援はマスメディアン【宣伝会議グループ】

  • HOME
  • ナレッジ
  • 【第3回】人口減とこれからの職業選び―未来のメディア

【第3回】人口減とこれからの職業選び―未来のメディア

志村一隆 2017.11.15

  • 未来のメディア
【第3回】人口減とこれからの職業選び―未来のメディア
WOWOW、NTT、ヤフーを経て、現在はメディア・コンテンツ分野の第一人者としてフィールドワークを進める志村一隆(しむらかずたか)さん。さまざまな国に赴き、現地の最新動向をレポートするコラム。世界各地のメディア・コンテンツにまつわるケーススタディなどを引き合いに、経営者の皆さまのアイデアのタネとなるコラムを発信していきます。第3回は「人口減とこれからの職業選び」がテーマです。(マスメディアン編集部)
いま日本人の誰もが持っている共通認識のひとつに、人口減少問題があります。日本の人口が1億人を超えたのが1967年。現在は1億2千万人。そして、2053年頃に、また1億人を割り込むと予想されています。

それでもまだ1億人いるじゃないかと思う人もいるかもしれません。少なくなったら、競争が減って住みやすくなりそう、と考える人もいるでしょう。

会社で働いていても、似たような問いかけを見かけます。毎年売り上げが増える事業計画を立てなければならないのか、去年と同じでもいいじゃないか、現場の人の多くはそう思っているでしょう。しかし、自分の経験からいうと、売り上げが横ばいの企業はあまり社内の雰囲気がよくありません。

企業の事業戦略部門は、売り上げの増加が見込めないと、経費削減で、利益を確保しようとします。そうすると、去年まで出ていた出張旅費が削減されたり、キャンペーン施策の制作物がつくれなくなったりします。売り上げは減ってないのに、日々の活動が制限されてしまうのです。そうした組織に属していると、なんだか気分もよどんできます。つまり、売り上げが伸びないと会社の雰囲気も良くなりません。

ただ、わたしたちは、こうしたビジネスパーソンとしての一面と、家に帰って一市民として暮らす両面を持っています。人口が減ってもいいじゃないかと考えるのは市民としての視点、それでは困るというのはビジネスパーソンとしての自分の思考です。最近は、ビジネス社会でも右肩あがりの成長という言葉でなく、持続可能性という言葉が使われます。国連がSDGs(Sustainable Development Goals)というコンセプトを掲げ、地球規模でものごとを考えようとする活動に、リコーなどの企業も賛同しています。

ここで問題は“サステイナブル=持続可能性”とはどういうことかということです。先月、福井県鯖江市や新潟県燕三条地域といった伝統工芸の産地で行なわれたイベントにいくつか参加してきました。そのなかで開かれていたトークセッションで、伝統工芸産業の後継者不足が課題として上がっていました。

経済産業省によると、伝統的工芸産業品の市場規模は、約1,000億円、従事者数は約70,000人。この40年で、売り上げも従事者数も1/4になっています。人口が減れば、職業の数も減るでしょう。後継者が減っていけば、その産業も消えていきます。

ただ、これはビジネス的な視点での考え方です。儲からなくても、その仕事が好きだから就業するという人もいます。そのような仕事は、人口が減っても生き残るでしょう。

人口が減っていく、売上規模が減っていくなかで、なにを残し、棄てるのか。人工知能やロボットが単純作業をするであろう近未来。職人的な手仕事は代替されないでしょう。ただし、収入はそれほど高くない。人口減、サステイナブルなどを考えると、これからは、ビジネスパーソンよりも一市民的な考えで仕事を選ぶ考え方が増えるのではないでしょうか。
【執筆者プロフィール】
志村一隆(しむらかずたか)氏
メディア研究者。1991年早稲田大学卒業後、WOWOW入社、2001年ケータイWOWOW代表取締役を務めたのち、2007年から情報通信総合研究所主任研究員。2014年にヤフーに。2015年に独立。著書に『明日のテレビ』(朝日新書、2010年)、『ネットテレビの衝撃』(東洋経済新報社、2010年)、『明日のメディア』(ディスカヴァー携書、2011年)、『群像の時代』(ポット出版、2015年)、『デジタル・IT業界がよくわかる本』(宣伝会議、2016年)など。著書でメディアイノベーションを紹介したメディア・コンテンツ分野の第一人者。現在は、独立メディア塾にて寄稿。2000年米国エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号取得。水墨画家アーティストとして欧米で活躍。