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さらなる成長にはビジネスのわかるデザイナーが必要!?―BAKE

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マスメディアン編集部 2018年5月1日(火)

焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」をはじめとするスイーツ店を約80店舗展開し、近年は国内のみならず約半数の店舗を海外でも運営し、勢いに乗る製菓メーカーのBAKE Inc.。インハウスデザイナーとして同社を創業当初から支えて、現在はクリエイティブを統括している貞清誠治さんにお話を伺ってきました。面白かったのは、クリエイティブとマーケティングを駆使して拡大したアップルやユニクロをベンチマークしていたこと。こうした企業に影響を受けた次世代企業のインハウス化の取り組みについて迫ります。

―まずは貞清さんのご経歴から教えていただけますか。
僕は美大で空間デザインを学んだ後、アパレル企業で、ストアデザインの仕事をやっていました。その会社が、新しく飲食事業を立ち上げることになり、飲食の世界にのめり込んでいきました。自分が関わったデザインを通して、商売を繁盛させる部分まで執着したかったんです。これを機に空間デザイナー専属からは抜けて、飲食店のスタッフ・管理職・企画開発まで一通り経験しました。ここで勉強になったのは、商業とデザインは密接に関係している必要があるということでしたね。デザインに取り組む際にはそのビジネスを深く理解する必要があることを改めて実感しました。作品ではなく、繁盛に貢献しなければ意味がないというのを突きつけられたんです。当時、AppleやDysonなど一貫してブランドを伝えている会社にすごく影響を受けました。デザイナーもそのビジネスを理解しないといかないといけないし、ビジネスサイドもアウトプットまでをイメージをして詳細を詰めていくべきだと思うんです。

―最近耳にしますが、いわゆる「ビジネスデザイナー」という感じですね。
そうですね。小さな会社で、デザインに限らず一通り全部やっていたので、そこから学びました。ここで6年ほど働いていたのですが、社長の引退をきっかけに転職を考え、ご縁があったアッシュ・ペー・フランスというアパレル企業に入りました。飲食をやっていたときは、デザインより数字に追われることが多かったのですが、ここではクリエイションが一番大切で、それに共感してくださった方がお金を支払ってくれるというマインドがすごく勉強になりました。ここで2年ほど勤めました。そこから再び飲食に戻るわけですが、理由としては飲食系が好きだと改めて思ったからです。一度フリーランスにも挑戦し、年商5億~30億円規模の中小の外食企業さんに対して、食に特化したクリエイティブのサポートをしていました。

チーフクリエイティブディレクター
貞清誠治(さだきよ・せいじ)さま

―たしかに中小規模だとなかなかインハウスデザイナーを抱えられない企業も多いと思いますが、そういった企業にどのようなことが必要だと思われますか?
僕の主観ですが、経営者にもアウトプットのセンスが求められている時代だなと思っています。もちろんそれがうまくできないと理解した上でクリエイターと協業する場合もありますが、とにかく経営とクリエイティブがシンクロしていないと、情報過多な時代に埋もれてしまうと思います。たとえば、スティーブ・ジョブズ氏は、まさに一人で社長兼クリエイターですよね。しっかり練られたプロダクトやマーケティングの上で、エモーショナルな部分まで揺るがすほどの強い伝え方をしているから、Appleにはコアなファンも多い。多少高くてもそれ以上の価値を提供できれば売れるという事実に圧倒されました。ほかにはユニクロの柳井正氏ですね。僕が学生のころ、ユニクロがワイデン+ケネディのクリエイティブディレクターであるジョン・C・ジェイ氏にリブランディングを依頼し、フリースをヒットさせた事例がありました。そのことを取材した記事を読み、このプロジェクトの詳細を知ったとき、ビジネスとクリエイティブが完全にシンクロしていることに衝撃を受けました。後にCDを務めた佐藤可士和氏もそうですよね。ビジネスにクリエイティブシンキングという言葉自体が浸透してないときに、企業のブランディングまでされるという姿に感化されました。

―そういう意味ではBAKE創業者の長沼さんはいかがでしょうか? また、そもそも貞清さんはどのような経緯で入社されたのですか?
BAKEは、フリーランス時代のクライアントの一社でした。クロッカンシュー ザクザクという新ブランドの立ち上げにあたって、業務委託のような形で1年ほど仕事をして、その流れで長沼に誘われました。彼はすごく若い社長(編集部注:現在は会長に就任)なのですが、それまでは年上の社長の方とばかり仕事をしていたので、自分よりも10歳近く若いというのが新鮮でした。そして彼に会ったとき、「お菓子×イノベーション」で世界に進出したいという話を聞き、時代が動きはじめているなと感じました。彼はなにか新しいことをしたいというモチベーションがすごいんですよ。それで、この人といたら面白そうだから、一緒に会社を大きくしていこうと覚悟を決め、入社しました。最初のザクザクがうまくいったこともあり信頼関係が構築されて、基本的なコンセプトやストーリーは彼がある程度考えますが、アウトプットに関しては全面的に任せてもらってきました。長沼自身、デザインが大切だというのはわかっているけど、専門ではないので、僕がいくつか案を出したときも、常に「どれが世の中にないアプローチか」という選択基準を大切に、デザイン的なものは頼ってくれてきました。

―他社では、デザイナーに任せたとは言いつつ経営者の方が口出ししてしまうケースもよく見受けられます。しかしBAKEでは任せられているんですね。ちなみに長沼さんとはどういったやりとりをするのでしょうか? 
長沼は本当においしいお菓子を知っているんです。実家(編集部注:北海道地場の洋菓子屋である「きのとや」)の工場で出来たての美味しいお菓子を幼少のころから食べてきた原体験が染み付いていて、お客さまに最高に美味しい状態のお菓子を食べていただきたいと考えていました。なのでBAKE CHEESE TARTをはじめ、いま展開しているBAKEブランドは工房一体型店舗モデルをとっていることが多いです。長沼はこのビジネスモデルで本気で世界と戦いたいというのが根底にあるんです。

工房一体型店舗モデル

そのうえで、例えばクロッカンシュー ザクザクのときは、シュークリームでそのモデルに落とし込むことは長沼の中で決まっていて、その後に僕がジョインし、クリエイティブ面で、この商品をビジネスとして成功させるためにどういう戦い方をしていくかを長沼と一緒に考えてきました。このときは、「北海道」を打ち出していく戦略がお客さまの心に刺さるのでは?と考えました。当時、どの百貨店でも北海道物産展は爆発的にヒットしていたので、北海道にルーツを持つBAKEが北海道を言わない手はない。そこで長沼と協議して、リリースの文言も北海道押しにしました (笑)。結果、クロッカンシュー ザクザクはたくさんのお客さまにお越しいただきました。そのときのことは今でもよく覚えています。オープン日に、予想以上の人が並んでくれました。これも1カ月ぐらいで収束すると思っていたら結局2年ほど行列が続いたんです。ザクザク以外のブランドも同様な取り組みで、長沼や現社長の西尾と議論を重ねながら進めています。

―そのような戦略があって、一躍お菓子業界のニューヒーローになったんですね。最初のコンセプトやストーリーは創業者の長沼さんが考えているとのことでしたが、落とし込み方やチームでの関わり方をもっと詳しく教えていただけますか?
バターサンド専門店であるPRESS BUTTER SANDのときは、ゼロからみんなで考えていきました。合宿みたいに集まって、当時はまだメンバーが少なかったので、長沼や西尾、商品開発の責任者と僕でミーティングやディスカッションをしていきましたね。この商品開発の責任者は、もともとマーケティングを統括していました。

―やはりマーケティング視点が商品開発に活かされているんでしょうか?
そうですね。最終的なアウトプットまで考えながら商品をつくっています。実は長沼も、大学が商学部だったので、マーケティングを学んでいるんです。そういう部分で、ゴールまで見据えた商品開発に生かされていると思います。ほかにも、BAKE CHEESE TARTは事業部化しているのですが、同じくマーケティングの責任者が事業部長を担っています。それがうちの良さかなとは思います。いわゆる営業ではなくマーケティングやクリエイティブ畑だった人間が、店舗も含めて事業を運営していく。この体制はBAKEならではで、ビジネスとクリエイティブがシンクロしている気がします。

―商品開発の時点でコンセプトやストーリーづくりから関わっているからこそ、ブレないプロダクト、ブレないデザインになっているんですね。
それは間違いなくあると思います。インハウスのメリットは、クリエイターと経営者が接する時間が圧倒的に長い点です。だから齟齬が生まれない。そして、議論のちゃぶ台返しを行うことができます。オリエン返しと言いますか、その設定が正しいのか問い直すことができる。これは外注の立場だととても言いづらいことだと思うので、かなりの違いだと感じます。

―では逆に、インハウスだからこその苦労はありますか?
僕は長年ほぼインハウスでやってきたので、主観になってしまいますが、クライアントワークがメインのキャリアの場合は、実際の現場感がつかみづらいという点で苦労が多いかと思います。クライアントワークだと自分のデザインしたものがお客さまにどう受け止められているかが見えにくいと思うんです。逆にインハウスだとそれがダイレクトに跳ね返ってくる。それを真摯に受け止め、改善し続けないといけない。だから、「終わりがない」というのはインハウスならではの苦労だと思います。

―なるほど、そういう意味でインハウスでは、ビジネスのわかるデザイナーが求められるんですね。このスキルはどうしたら身につけるにことができるのでしょうか。
もちろん、最初から数字まで見れるデザイナーはなかなかいないです。それでも、デザイン事務所などでクライアントワークをやるなかで、やっぱり最終的にその商品がどうなるのかという部分まで見たいという志向であれば、素養があると思います。実際ここ数年、当社へ入社し活躍しているインハウスデザイナーもそういった志向です。

また、数字が見れて、パッケージやロゴ、インテリアなどのデザインのディレクションができるマルチな人材になっていくことも大切ですが、同時に専門分野でプロフェッショナルとして高みを目指すことにも力を注いでいます。そのため今はデザイン関連の賞を獲ることをモチベーションに取り組んでいます。もちろん、ビジネスへの意識も忘れてはいけない。自分がつくったブランドに対して責任を負わないといけない。それだけ本気で取り組める環境が整ったと思います。そのうえで、デザイナー一人ひとりが賞を獲ってこれるようなブランドをつくっていくことを目指しています。

いろいろとお話を伺い、貴社の成長の所以が垣間見れました。クリエイターのインハウス化を検討している企業にとって示唆に富んだ内容となりました。取材協力いただき、ありがとうございました!

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