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最新テクノロジーで人間科学領域も分析対象に―デジタルHRを実践するための5つのポイント

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岩本隆 2018年3月7日(水)

政府主導の「働き方改革」の推進にともない、企業は短時間でこれまで通りの成果を出すなど生産性向上が求められています。そのような状況で「HRテクノロジー」に注目が集まっています。採用データや従業員データなど人事にまつわるさまざまなデータを収集・分析し、生産性向上につなげる施策を見つける。そんなHRテクノロジーツールが数多くリリースされています。今回は、HRテックの第一人者である慶應義塾大学大学院 特任教授の岩本隆氏に、HRテックの最新動向から広告・Web業界での導入手引までお話いただきます。(マスメディアン編集部)

人事、人材マネジメント、働き方改革などにテクノロジーを活用するHR(Human Resource:人的資源)テクノロジーの普及が世界的に進んでおり、企業の人事は「デジタルHR」にならなければならないと言われている。デジタルHRとはデジタルを活用して経営に活かせる人事のことであり、この数年、「デジタルHRエキスパート」などといったデジタルHRという言葉を組み込んだ役職を持つ人材も増えてきた。
 
デジタルHRが行うべきことは大きく2つに分けられる。1つは、テクノロジーの活用による人事業務の効率化。この取り組みは人事部門に限らずあらゆる部門で始まっているが、事務作業や繰り返し作業をテクノロジーやRPA(Robotic Process Automation:ロボティックプロセスオートメーション)などを活用することで人事部門のメンバーの時間を開放し、人事部門のメンバーはヒトにしかできない付加価値の高い仕事にシフトする。欧米のグローバル企業では、HRテクノロジーの全面的な導入により、人事部門の生産性が3倍程度まで向上している事例もある。
 
RPAはソフトウェアのロボットによる業務自動化の取り組みを表す言葉であり、「デジタルレイバー」とも言われる。デジタルレイバーは、初期投資コストと電力コストだけで24時間働いてくれる。RPAを導入すると、人事部門はヒトのレイバーとデジタルレイバーとの両方をマネジメントし、デジタルレイバーの採用、配置、メンテナンスなどを戦略的に考えることになる。2016年7月に一般社団法人日本RPA協会が設立されて以降、RPAは日本国内でも急速に広がっており、日本でRPAを主導してきたRPAホールディングス株式会社というスタートアップが2018年3月に東証マザーズに上場するなど、RPAを製品展開している企業も急成長している。
 
また日本企業は、人事システムを自社向けにカスタマイズすることで高コストになっている企業も多いが、人事領域でもさまざまなクラウドサービスが提供されており、コストの最適化が重要である。またそのために、市場にどのようなHRテクノロジーサービスが出ているかを常にウォッチしていく必要がある。
 
もう1つは、人材力や組織力を高めて自社の業績を高めることにつなげるためだ。そのためには、財務部門や営業部門が常にデータで自部門の活動について語るように、人事部門も「データで語る」ことを企業内の常識にする。人事が財務や営業と違って難しいのは、ヒトはデータで語り切れない複雑なものであるということである。だからこそ逆に、データで語れる部分は可能な限りデータ化し、データで語り切れない部分にヒトの知恵を集中させる。人事においてデータ化される基本的なパラメータとしては、給与、労務管理、職場環境、福利厚生、採用、育成、離職、スキル、コンピテンシー、目標管理、業績評価、エンゲージメントなどといったものがあり、最近では、健康経営®(「健康経営」は非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です)のニーズの高まりとともに、人事データと健康データとの連携も進み始めている。
 
ヒトのデータ化はプロスポーツの世界ではかなり進んでおり、データ化するパラメータは多く、1万を超えると言われているぐらいだ。しかし普通の企業では、プロスポーツほどコストはかけられないため、現実的には、自社にとって重要なパラメータを100~200程度に絞り込んで運用している企業が多く、デジタルHRは、どのパラメータで自社の人材についてデータ化するかを戦略的に考えることが重要となる。

デジタルHR実践のポイント

以下、デジタルHRになるにはどのようにすればいいかについてのポイントを記す。
 
1. データリテラシーをもつ
社内に人事に関わるさまざまなデータが散財している企業が多いが、まずはどんなデータが社内にあるか整理してみる。その上で、自社の経営にとって意味のあるデータ、意味のないデータ、追加で集めた方がいいデータなどをまとめる。
 
2. HRテクノロジーの最新動向を把握する
HRテクノロジーの新たなサービスが次々と生まれており、常時最新情報をアップデートできるようにする。HRテクノロジー市場の成長とともに、世界中で、HRテクノロジーサービスが一同に会するイベントが定期的に開催されており、HRテクノロジーの最新動向および全体像を把握するためにもそういったイベントに参加するのも一案である。
 
図表1にHRテクノロジーに関する主なイベントを示す。1~7はHRテクノロジー全般を網羅するイベント、8はRPA全般を網羅するイベント、9と10はピープルアナリティクス(職場の人間科学とも言われ、行動のデータを分析し採用や配置などに生かす技術)に特化したイベント、11はエンゲージメントに特化したイベント、12は正に本稿のテーマであるデジタルHRに関するイベントである。

図表1.HRテクノロジーに関する主なイベント

3. ピープルアナリティクスの体制をつくる
データ分析のテクノロジーが長足の進歩を遂げており、大量・多種類のデータを多様な分析手法で、低コストかつ容易に分析できるようになってきた。「AIの民主化」という言葉が語られるようになってきたが、誰でも容易にAIを使い、分析できるようになっている。つまり、素人でも容易にデータ分析できる環境は整ってきてはいる。一方で、素人がデータ分析スキルを身に着けるまで待つわけにはいかないので、データ分析スキルを既に持っているデータサイエンティストを人事部門に配置し、人事がわかる人材と連携して、データ分析を進める。
 
データサイエンティストが不足していて自社の人事部門にアサインする余裕がないという企業もあるかと思われるが、経済産業省で「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」(通称「Reスキル講座」)が始まり、第1回の認定として、2018年1月に13事業者26講座が認定されたこともあり、今後、データサイエンスのスキルを身に着けられる機会も増えていく。そういった講座を受講して基本スキルを身に着けるといったことも進めていくといい。
 
この数年、日本企業でもピープルアナリティクスの体制をつくる企業が急増している。ピープルアナリティクスの組織の名前は各社さまざまではあるが、株式会社セプテーニ・ホールディングスの「人的資産研究所」、パーソルホールディングス株式会社の「人材情報室」、パナソニック株式会社の「HR Lab」、株式会社日立製作所の「ピープルアナリティクスラボ」などの事例があり、他でも多くの企業がピープルアナリティクスの組織を立ち上げて始めている。
 
4. 小さな成果を積み重ねる
デジタルHRに限らず新しい取り組みをする時は、常に社内の抵抗がある。そのため、小さくてもいいので早期に成果を出し、それを積み重ねることで、うまくいきそうな空気を醸成しながら推進していく。デジタルHRパーソンは、プロデューサー的な意識を持って社内を巻き込むマネジメントをしていく。
 
5. 全社に広げる
最終的には、人事にデータを活用することを“当たり前化”するところまでもっていく。データ活用が当たり前になると、人材マネジメントの議論の際に、共通言語ができるため議論がスムーズに進む。人材の議論を定性的に進めていると、議論が発散して収束しないといったことがよくあるが、そういった無駄な時間も減らすことができる。

【執筆者プロフィール】
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本隆(いわもとたかし)氏
「HRテクノロジーコンソーシアム(LeBAC)」会長・代表理事。東京大学工学部金属工学科卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校工学・応用科学研究科材料額・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ(株)、日本ルーセント・テクノロジー(株)、ノキア・ジャパン(株)、(株)ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年から現職。その他、HR テクノロジーコンソーシアム(LeBAC)の発起人、経済産業省取材の「HR-Solution Contest―働き方改革×テクノロジー―」審査員長など。

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