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バズワードに踊らされず、何をしたいかを見つめ直そう―HRテクノロジーと働き方改革

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岩本隆 2018年2月21日(水)

政府主導の「働き方改革」の推進にともない、企業は短時間でこれまで通りの成果を出すなど生産性向上が求められています。そのような状況で「HRテクノロジー」に注目が集まっています。採用データや従業員データなど人事にまつわるさまざまなデータを収集・分析し、生産性向上につなげる施策を見つける。そんなHRテクノロジーツールが数多リリースされています。今回は、HRテックの第一人者である慶應義塾大学大学院 特任教授の岩本隆氏に、HRテックの最新動向から広告・Web業界での導入手引までお話いただきます。(マスメディアン編集部)

現在、世界中で第4次産業革命が進行しており、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、ロボットなどの新たなテクノロジーを用いた新たな産業が次々と生まれ、産業構造が変わり始めている。「×Tech(クロステック)」という言葉が広がり始めていて、これは、FinTech(Finance×Tech)、EdTech(Education×Tech)、HealthTech(Healthcare×Tech)、AgriTech(Agriculture×Tech)といったように、ある領域にテクノロジーが掛け合わさった造語であるが、「〇〇Tech」の〇〇に入る言葉が急増している。ざっとインターネットで検索しただけでも30種類以上の「〇〇Tech」が見つかるほどさまざまな領域で新たなテクノロジーを活用したビジネスが開発・展開されており、これは正に第4次産業革命が進行していることを表している。

HR(Human Resource:人的資源)の領域も例外ではなく、「HRTech®」(「HRTech」は株式会社groovesの登録商標です)、「HRテクノロジー」という言葉が広がり、新たなテクノロジーを活用したビジネスが急増している。具体的には、採用、育成、リテンション、配置、後継者指名、タレントマネジメント、パフォーマンスマネジメント、組織活性化、エンゲージメント向上、給与・報酬管理、労務管理など、HRのさまざまな機能で新たなテクノロジーを活用したサービスが開発され、市場で展開されている。HRテクノロジーのサービスは、世界では「HCM(Human Capital Management:人的資本マネジメント)アプリケーション」と呼ばれてクラウドで提供されることが多く、HCMアプリケーションの世界市場規模は2016年で約1兆8,000億円まで成長している。今後もHCMアプリケーション市場は継続的に成長すると見込まれており、スタートアップ含めさまざまなテクノロジー企業が続々とこの市場に参入してきている。

日本国内では、2015年頃からHCMアプリケーション市場が急成長軌道に入った。株式会社groovesが2015年1月に「grooves HRTech研究所」という研究所を、株式会社リクルートホールディングスが2015年4月に「Recruit Institute of Technology」という研究所を設立して、AIを活用したHRテクノロジー研究を開始したのを皮切りに、国内企業の多くがAIを活用したHCMアプリケーションの開発を始めている。

一方で、日本政府の方では、「働き方改革」の政策の優先順位が上がり、働き方改革を一気に進めるためのツールとしてのHRテクノロジーの重要性が高まっている。2017年3月29日に働き方改革実現会議で「働き方改革実行計画」が決定され、長時間労働の是正など労働制度の抜本改革が行われている。ただし、長時間労働を是正するだけでは“ゆとり労働”を生み出すだけで、企業の競争力が弱体化する懸念があるため、2017年4月からは経済産業省経済産業政策局産業人材政策室が中心となって「働き方改革 第2章」として、企業の生産性や競争力を高めるための産業人材政策の検討がなされている。

生産性の計算式は「付加価値÷コスト」となるが、例えば、ウェアラブルやアプリで労務管理を行ったり、人事データをクラウドで管理・分析することで人事管理や最適配置を行ったり、育成のあり方をデータ分析によって最適化し個々の特性に応じた能力開発を行ったり、労働市場でのマッチングをAIにて効果的に行ったりすることで、効率を高めて(コストを下げる)、効果を高め(付加価値を上げる)、生産性を高める。

他にもHRテクノロジー活用の可能性はまだまだ多く考えられるため、2017年5月~7月には、経済産業省とIoT推進ラボとが共催で「HR-Solution Contest」を開催し、働き方改革を加速するためのテクノロジーを活用したソリューションを募集し、コンテストを行った。103件の応募の中から表1に示す8件がファイナリストとして選定された。

表1「HR-Solution Contest」のファイナリスト

HRテクノロジーは、基本的に「インプット(データ化)」→「データ分析」→「アウトプット(分析結果)」で構成されるが、「インプット」では、新たなテクノロジーによって取り込めるデータの種類が増えており、たとえばメンタルヘルスケアの結果などの数値データや、メール・日報などのテキストデータに加え、従業員の音声データ、画像データ、映像データ、行動データなどさまざまな種類のデータがHRテクノロジーで活用される可能性が示されている。また「データ分析」ではAIを活用することは“当たり前化”しつつあり、多くのサービスでAIが活用されている。「アウトプット」では、ユーザーインターフェース等のテクノロジーの開発が進んでおり、ゲーミフィケーションや、VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)なども今後活用されていくと想像される。

図表2HRテクノロジー活用のポイント

テクノロジーの進化の流れと、日本政府の政策的な動きが連動し、日本国内のHRテクノロジー市場の成長が加速してきたが、HRテクノロジーを活用するにおいては、図表2に示すようなポイントを押さえる必要がある。要は、HRテクノロジーは「HOW」についてさまざまなソリューションを提供するが、「WHAT」、つまり、何を目的にして、何をデータ化し、どう分析するか、といったことを設計することが重要であり、今後は、テクノロジーを理解した上でWHATをどう定義するかといったことが、企業の人事部門の重要な役割になってくるであろう。

【執筆者プロフィール】
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本隆(いわもとたかし)氏
「HRテクノロジーコンソーシアム(LeBAC)」会長・代表理事。東京大学工学部金属工学科卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校工学・応用科学研究科材料額・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ(株)、日本ルーセント・テクノロジー(株)、ノキア・ジャパン(株)、(株)ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年から現職。その他、HR テクノロジーコンソーシアム(LeBAC)の発起人、経済産業省取材の「HR-Solution Contest―働き方改革×テクノロジー―」審査員長など。