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なにをしているか? だれとできるか? 敏腕マーケターの惹かれるポイント―中川政七商店

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マスメディアン編集部 2018年4月25日(水)

東急ハンズでオムニチャネルを推進してきた緒方恵さんが退職? つぎに選んだのは中川政七商店? 2017年マーケターの中で話題になったニュースでした。この決断については宣伝会議の取材でも触れていますので、今回は実際に入社されてからどういった取り組みをされてきたか、また優秀なマーケターをリクルーティングする際の訴求ポイントについて迫りました。

―まずはじめに、中川政七商店への入社の経緯を教えていただけますか?
入社前の中川政七商店は、ここ数年でコミュニケーションのあり方が大きく変わってきていることを体感し、デジタルもしっかり対応する必要があると考えていました。しかしながら、スペシャリストの不在によりデジタル化の推進に向けてどこから着手すればいいのか、適切な投資額はいくらなのかというような判断ができないということで、止まっていたそうです。そこで、たまたま私が東急ハンズを退職したという記事をきっかけに、お声がけいただきました。私自身も、もともと小売業のなかで特異だった中川政七商店をベンチマークしていたので喜んでお会いしました。実際社長の中川に会って話してみたら、15分くらいで、ここに入りたい!と思いました。

―15分! 早いですね。どんなところが決め手だったのでしょう?
衝撃的だったのは、彼は”自社の利益”よりも「日本の工芸を元気にする!」という”会社のビジョン”を重要視していたことです。彼の話では、自社の店舗は増えているし、売り上げも伸びているけど、本当に工芸業界に寄与できてるか?というとまだまだ。工芸業界が元気にならないと自社も永続できない、つまり将来を見越してビジョンを優先していると言うのです。全国47都道府県に、たとえば眼鏡で有名な福井県・鯖江市のような、工芸品の産地は300くらいありますが、当社がお手伝いできているのは30くらい。また別のデータを見てみると、バブル期に比べ、今は流通金額ベースで5分の1、従事している職人数も3分の1まで減少し、さらにその職人の60%が70歳以上になっている状況です。だから、直近で会社の売り上げが伸びても、つくる人も場所もなくなってしまえば、意味がない、ということです。すごく将来を見据えている社長でした。

私は「なにを仕事にするか」にはあまりこだわりがないんです。仕事はなんでも、一生懸命やれば面白くなると信じているので。だから人生の中では「なにをするか」よりも「だれとするか」を一番の基準にしています。

株式会社中川政七商店 CDO 緒方恵氏

―中川社長と一緒に働きたい、と思ったんですね。
そうですね。社長はこういう課題を感じている。私はそれを前職で実現したことがある、あるいはこれからやろうと思ってる。というように、面白いくらいお互いの需要と供給が一致して(笑)。すぐに入社の意志を伝えました。入る前から、組織をこうした方がいいとか、2020年までにこういうことをやるんだっていうことを話し合っていたりして (笑) 。

―意気投合したんですね(笑)。
入って驚いたのが、入社前に私がプレゼンした組織構造が、入社したらその通りに変更されてたんです。「そうしといたから」って軽く言われて、「これがスタートアップか…」と思いましたね。

―スタートアップ? 貴社は創業300年の会社ですよね?
中川政七商店は創業300年の工芸品メーカーですが、2008年に今の社長に替わりました。そして「卸しだけでなく、自分たちで直接お客さんに商品の良さを伝えよう」という考えのもとで、直販店をつくり、売り上げがアップした会社です。だから今の業態になったのは10年程度しか経っていません。このため「創業300年だけどスタートアップ」なんです。だからこそ組織や業務の変更も速い。大きな組織だとありがちな「稟議に5段階必要」なんていうものも一切なくて、社長とランチで話している間になにかしら大きなことが決まったりもしますね。

―創業300年の慣例のようなしがらみもなく? かなりドラスティックな感じなんですね。ちなみに入社されるタイミングで面接時に話した組織体制になっていたということですが、具体的にどのように変更されていたのでしょうか?
マーケあるあるだと思うのですが、リサーチ・リスティング・販促・ソーシャル・オウンドメディアなどの担当者が、販促チームにいたり、Webチームにいたりと、分断されていたんです。だから連携がうまくいっていなかった。前職でも同様の悩みを持っていて、理想の組織図を考え続けていたので、それを入社前に社長にプレゼンしたんです。それで、マーケティングチームに集約する形になりました。もちろん大企業じゃないからこそ、集約してもコンパクトなチームにできた、ということもあるのですが。

―では次に、入社されてから手がけた仕事についてお伺いしたいです。
実は役職がCMO(Chief Marketing Officer)ではなく、CDO(Chief Digital Officer)なので、マーケティングだけを見ているわけではありません。このため、Webサイトやソーシャルのほか、PCなどの備品や基幹システム、サーバまで私の業務領域なんです。デジタルトランスフォーメーションを推進し、業務効率アップを目指す感じでしょうか。

―なるほど…情報システム部門も担っているんですね。
一般的に企業ではマーケティング部門と情報システム部門は分業されていますが、マーケから「アプリをつくりたい」「サイトをレスポンシブ対応したい」という要望が上がった時に、情シスでは基幹システムのバグの排除や、データ整備の真っ最中だったとします。そういう場合に、経営判断としては「売り上げに即、寄与する」案を採択しがちですが、ともするとシステム的な問題点が置き去りになったりすることもあり、担当者の異動などでこの問題点が闇に消え、永久に解決しないなんて事態になります。そこでどちらの機能も集約してみれるようにという意図でCDOという役職を設置しました。だから入社直後は先述のペンディングしていた新規事業のWebメディア開発、途中からは重たい社内ファイルサーバのクラウドサーバへの移行作業などをしていました。

―最初に手がけられたWebメディアについて、お聞きできればと思います。
工芸品をPRするメディア「さんち」をローンチしました。自社商品はほぼPRしてなくて、ひたすら日本全国の工芸と産地の魅力を伝える記事をアップしているメディアです。もともと生産管理、商品企画にいた社員を異動させ、編集チームを立ち上げました。私はその事業責任者も兼任しています。編集補助もしますが、Webサイト設計や、サイトの戦略方針やKPIを策定する立場です。

全国の工芸産地の魅力を毎日発信するWebメディア「さんち ~工芸と探訪~」

―取材やライティングに携わったことがない方々をアサインしたんですね。
私もメディアをつくったことはないですから、それは四苦八苦でした(笑)。最初はとりあえず新聞記者ハンドブックや、編集スキルがつきそうな本を買って読み漁り、良ければメンバーで輪読して。1年運営してきて、やっと形になってきたという段階です。去年の今頃に上がっている記事と今の記事は全然レベルが違うので、比較してみると面白いです(笑)。

―外部に任せるという選択はないんですね?
工芸を元気にする!ということに本気でコミットする気があるか、が最も重要だと思っています。また、自社の商品や、工芸品・産地をよく知ってる人材に、編集能力をスキルセットしたほうが速いし、貢献度も高いと思います。工芸に関してはおそらく当社が日本で一番詳しいですし、横のつながりもあるためネタも集めやすいんです。

―たしかに「さんち」の記事を拝見すると、工芸品・産地の造詣の深さがうかがえます。Webメディアを立ち上げた後、社内サーバのクラウドへの移行などに携わったとのことですが、業務改善に関わることは全部やる、ということでしょうか?
そうですね、前職に比べると人数も少ないので、いろいろなことをしないといけないのが実情です。新規事業もやりますし、PCの発注のような細々したこともやります。ただし、こうした業務もあなどれなくて、PCや社内サーバのスペックを上げることで社員の業務効率がかなり上がります。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを達成するためには、あらゆることを最短距離で進めないといけない。だから正しく優先順位をつけて、適切な箇所への投資をためらわないことがマストです。

―社員皆さんがビジョンにコミットしているんですね。
そうです。ビジョンが強い会社なので、社員は皆ビジョンに共鳴して働いています。私や社長に向かって仕事するのではなく、ビジョンに貢献するために仕事をするんです。それが各事業部のミッションやタスクにひもづいています。各部門のKPIではなく、会社としてのKGIに全員が向かっていくことが大事。だから今は私がデジタルやマーケティングに詳しいので専属でやっていますが、本来は社員全員が知るべき。逆に私も経営やものづくりについて知らなければいけない。このように「徹底した情報やスキルの共有」は、コンパクトな組織を強靭にしていくためには必須だと考えています。スペシャリストでありつつ、ジェネラリストになる。それによって、各メンバーのスキルがフラットになっていくと、さらに別のスキルも取得しやすくなります。たとえば今私が見ている領域を誰かに任せてもよさそうとなれば、私はAIやVR、データサイエンスにも手が出せる。こうやって、ビジョンに共鳴しながら、各メンバーの対応領域を広げることで、最強のチームができあがると思います。

―それがコンパクトだけど協力な組織のチームビルディングなんですね。お話しありがとうございました!

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